内縁の妻が勝手に婚姻届に印鑑を押して提出した

 Aさんは三年前からB子と内縁関係にありましたが、ある日、B子がかってにAさんの印鑑を押して婚姻届を出してしまいました。AさんとB子とは、法律上正式な夫婦になったのでしょうか。

スポンサーリンク

 婚姻が法律上有効に成立するための要件は、二つあります。一つは当事者ともに夫婦になろうという意思(これを婚姻意思といいます)をもっていることです。
 憲法二四条も、婚姻は両性の合意のみを基礎として成立するものだとうたっていますが、これは裏を返せば、合意がなければ絶対に婚姻は成立しないということであり、その合意は誰からも強制されず、また何者にも拘束されない、自由な婚姻意思にもとづかなければならないということなのです。
 もう一つは、戸籍法の定めに従って、戸籍上の届出をすることです。どんなに強い婚姻意思があっても、婚姻届を戸籍係の窓口に提出して、受理してもらわないかがり、法律上は正式な夫婦とはいえません。
 さて本問のAさんの場合、この二つの要件を満たしているといえるでしょうか。
 まず、婚姻意思の有無について考えてみます。AさんとB子とは、すでに三年間も内縁関係を続けているということです。一般に内縁というのは、婚姻届出はしていないが、実質的には夫婦として共同生活をしていることをいいます。そのような場合、婚姻意思はあるといってよいでしょう。
 「婚姻意思」というものの解釈にもいろいろな考えかたがありますが、「一般人から見て夫婦と認められるような生活関係に入る意思」と考えてよく、したがって妾関係では婚姻意思は認められませんが、内縁関係であれば、たとえ法律上の正式な夫婦になるつもりはまったくない場合でも、婚姻意思はあるということになるのです。
 そうすると、問題はもう一つの要件である届出の点に絞られてきます。B子がかってに作って提出した婚姻届が、法律上、有効な届出と認められるかどうかという問題です。
 確かに外形上、届出と認められる事実はあります。また届出書も、必ずしも本人の自署が必要なわけではなく、代書されたものでも、受理されれば無効とはいえません。しかし、そのような届出書の形式面はともかく、実質面での要件として、届出の当時、当事者双方が婚姻の届出をしようという意思、届出をして法律上も正式な夫婦になろうという意思(届出意思)をもっていなければ、法律上、有効な届出とは認められません。
 本問の場合も、Aさんに届出意思があったかどうかがポイントになり、これがなければ、いくらB子の届出にもとづいて戸籍簿に夫婦としての記載がなされても、実は無効な婚姻だということになります。
 さて一般的には、自分の知らないところで他人がかってに届出をした場合、本人には届出意思はなかったと見られるでしょう。しかし、これは原則論であって、Aさんの場合は、つぎの二点に留意しなければなりません。
 第一に、実はAさん自身、そのうち届出をしようと思いつつ日を過ごしていたという事情があるならば、逆にAさんにも、届出についての暗黙の了解があったと認められる可能性が強いことです。
 しかもAさんのように、三年間も夫婦同然の生活を続けていたということになれば、このような意味での届出意思があったと認められやすいと思います。
 第二に、Aさんには本当に届出意思がなかったのだとしても、AさんがB子によって届出がなされたことを知ったうえで、いぜんとしてそのまま内縁関係を続けていると、届出を追認したことになり、届出が有効になってしまうということです。
 本問の場合については、これ以上の判定はできませんが、Aさんも三年間も夫婦として生活していたのですから、いまさらジタバタしてもという感じもします。

冠婚葬祭
離婚届に印鑑を押す前に取り決めておく事柄/ 離婚届に印鑑を押したがその気がない/ マンションを贈るという約束を便箋に書き印鑑も押した/ 借金逃れのため離婚届に印鑑を押して離婚を偽装すると/ 内縁の妻が勝手に婚姻届に印鑑を押して提出した/ 結婚式を挙げたが印鑑を押した婚姻届をまだ出していない/ 養子縁組届に印鑑を押すときの注意/ 長男以外の相続人が遺産分けを請求しない念書に印鑑を押した/ 相続の紛争を避けるにはどのような遺言書に印鑑を押せばよいか/ 遺留分割協議書に印鑑を押すときの注意/

        copyrght(c).冠婚葬祭専科.all rights reserved

スポンサーリンク