借金逃れのため離婚届に印鑑を押して離婚を偽装すると

 A子さんは、多額の借金をかかえた夫から「このままでは自宅まで借金のために取られてしまうから、形だけ離婚したことにして自宅の名義をお前に移そう」といわれ、離婚届に印鑑を押しました。この届けを出すと、どういう問題を生じるでしょうか。

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 会社の倒産などにからんで、夫婦間で本問のような会話が交わされることも、しばしばあるようです。まず、このような意図によって離婚届がなされた場合に、協議離婚は有効に成立するのかを考えてみましょう。
 学説や判例の中には、どういう意図であれ、当事者が合意のうえ離婚届を出したのだから、完全に離婚の効力を生ずるとする見解もあります。しかし一般には、このような場合には真の離婚意思がなく、離婚届を出して戸籍に離婚が成立したような記載がされても離婚は無効だと考えられています。離婚意思というのは、真実に夫婦としての生活実体を解消させようという意思でなければならず、そのような意思がないかぎり離婚が成立することはないのです。
 ともあれ戸籍上は離婚の記載がなされ、自宅の土地建物について、財産分与などの名目で所有名義がA子さんのものになったとしましょう。はたして、これで債権者からの追及を免れることができるでしょうか。しばらくは夫がよそに身を隠して、債権者の目をごまかすことも可能でしょう。しかし、そのうち共同生活に戻るでしょうから、債権者にも偽装離婚であるとわかってしまうはずです。
 そうでなくとも、債権者には偽装離婚だろうと初めから疑われ、ますます厳しい追及と監視を受けることでしょう。債権者から離婚は無効で、財産はいぜん夫のものであるとして、仮差押えや強制執行の手続きがとられることも考えられます。また事情によっては、不正に財産隠しを図ったとして強制執行妨害罪で、戸籍にデタラメな記載をさせたとして、公正証書原本不実記載罪で告訴、告発されることも覚悟しておかねばなりません。こうしてみると、離婚を偽装してみても、とても割に合わないことは明らかです。
 また将来、戸籍の記載を元に戻そうとするときのことを考えておかなければなりません。極端な例としては、夫の言葉が実は離婚したいがための口実であって、夫がそのまま、借金ともA子さんとも縁を切って、いなくなってしまうことすら考えられないではありません。離婚したことになっている間に夫が無責任な気持になり、なかなか戸籍を元に戻そうとしてくれないこともあり得るでしょう。
 そういったことがないとしても、A子さんは裁判所に離婚は無効だという確認を求めて、その旨の審判または判決を得てから戸籍の訂正を申し出る以外には、元通りの戸籍を回復する方法はありません。しかも裁判所によっては、そのような偽装離婚も必ずしも無効ではないとされることさえあります。そうなると離婚は有効だとの前提のもとに、一度別れた夫と再婚するという形で婚姻届を出すほかはないでしょう。その他にも子供の成長などに伴っても、いろいろな不都合が多く、安易に本問のような偽装行為をすべきではありません。

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