離婚届に印鑑を押したがその気がない

 A子さんは夫婦喧嘩のあげく、夫の要求するまま、腹立ちまぎれに離婚届に印鑑を押して夫に渡してしまいました。あとで冷静になってみると離婚も困るのですが、夫はこのまま届けを出すといっています。A子さんはどうすればよいでしょうか。

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 協議離婚することは手続的には実に簡単で、離婚届に夫婦それぞれ印鑑を押して役所の戸籍係に提出して、市区町村長あての届出をすればよいのです。戸籍係は、届出書に必要事項が記載されているかどうかという形式面だけチェックしたうえで、これを受理し、この受理によって協議離婚が成立します。
 このあたりをもう少し法律的に整理したうえで、協議離婚が有効に成立するための要件を説明しますと、(1)当事者双方に離婚しようという意思があること、(2)双方の意思にもとづいて離婚の届出がなされることの二つが要求されることになります。
 (1)の離婚意思は、(2)の届出をする時点で存在していなければなりません。
 そこでA子さんの場合をみますと、すでにA子さんに離婚意思も、届け出ようとの意思もないことは明らかですから、いずれにしても離婚が有効に成立する余地はありません。しかし、だからといってA子さんは安心してよいというわけではありません。すでに離婚届出書ができあがっている以上、夫がそのまま提出してしまうことは十分考えられますし、そうなると戸籍係は届出書の形式面しか審査しませんから、そのまま受理されて戸籍上も離婚の記載がなされてしまうことになります。
 そのような記載がなされても、その記載はいわば一種の誤記であって記載どおりの効力はなく、A子さんはいぜんとして夫と夫婦であることには違いありません。しかしそうはいっても、現実に戸籍上離婚したことになっているのでは、不都合きわまりないことでしょう。しかも、いったんそのような記載がなされてしまうと、裁判所の審判あるいは判決によってその離婚は無効だという確認を受け、それにもとづいて、戸籍の記載の訂正を求めるほかないことになってしまいます。A子さんとしては、そのような面倒な事態はなんとか避けたいところです。
 そのためのひとつの方法として、A子さんの名で「離婚届不受理願い」というものを、本籍地の市区町村長にあてて、戸籍係窓口に提出しておくのがよいでしょう。「夫と協議離婚することに同意して届出書に印鑑を押したが、すでに翻意したので、夫から離婚届が提出されても受理しないでもらいたい」旨を書いて印鑑を押し、提出しておけば、その後六か月間は離婚届は受理されません。この場合、なるべく離婚届に押したのと同じ印鑑を使うようにしてください。六か月たてば不受理願いを再提出します。
 ただ、この不受理願いを出していても、夫が本籍地以外の場所で離婚届を出すと、その地でそのまま受理されてしまう可能性が強く、そうなると、結局、戸籍に離婚の記載がなされてしまうことも防ぎようがありません。しかしその場合でも、不受理願いを出していたことは離婚意思がなかったことの決定的な証拠となりますから、将来、離婚が無効だと主張するためにも、ぜひ不受理願いを出しておくべきでしょう。
 そこまでしなくても、仲直りして離婚届書を破棄できればなによりなのですが。

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