実際に遺産を分割する場合

実際に遺産を分ける(遺産分割)場合、その財産は、現金であるとか株券、公社債であるとか、あるいは不動産、自動車、借地権といったように、それぞれいろいろな形で残されます。
 ですから、前に述べた相続分の三分の一が自分にあるからといって、その財産の全てを三分の一ずつ取るということは、個々の遺産の効用を全く認めないことになり、このような処理のしかたをとるわけにいきません。
 また、相続人にとっても、自分の家を持っている者、被相続人と一緒に住んでいる者、あるいは独立して生活している者、学生の身分の者と、一人一人具体的な事情があり、その人にとって有用な財産は何かは、一概に断定できません。
 そこで民法では、遺産の経済的な効用と相続人の必要性を考慮して遺産の分割をするよう決めています。
 すなわち、遺産の分割は、個々の遺産の種類、性質や、各相続人の職業その他の一切の事情を考えて、公平かつ適切に行なわなければならないとして、これを遺産分割の基準として示しています。
 しかし遺産のうちの債務部分は相続分に応じて負担することになっていますので、遺産を分割する場合の対象にはなりません。

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相続人は、いつでも遺産の分割をするように他の相続人に対して請求することができます。この請求があった場合には、他の相続人全員は分割の協議(話合い)に応じなければなりません。
 ただし、遺産の分割について、被相続人が遺言により分割の方法を指定したときは、それに従って分割は行なわれますし、また遺言により分割方法の指定を第三者に委託した場合には、その第三者の指定する方法によって分割は行なうことになります。
 このような遺言がなければ、相続人全員が、どのようにして遺産を分けるか協議して決めなければなりません。
 この協議に一部の相続人を参加させなかったり、意見を無視したりすると、この分割は無効になります。かといって実際上、協議に全員が集まってする必要はなく、たとえば相続人の一人が協議案を作って個々に持ち回って同意を得ればそれでよいのです。このように全員の合意があれば、たとえ法定相続分と違う分け方を決めでも差しつかえありません。すなわち、形見として父の刀を一ふり貰えば何もいらないという相続人がいれば、それも認められるわけです。
 なぜなら、民法で定めた相続分というのは、各相続人がそこまで自分の権利を主張できる上限を定めたものですから、相続人間で協議する場合は、これに拘束されず自由に各自の取り分を決めてよいのです。
 この場合、協議がまとまらないか、あるいは相続人のうち誰かが行方不明であるとか、協議を拒否するとかの理由で協議ができない場合には、家庭裁判所に調停また審判を申し立てて分割をしてもらうことになります。
 相続財産について、分割の協議が成立した場合には、分割手続きは終了します。通常、協議が成立しますと、その内容を記載した分割協議書に、共同相続人の一人一人が署名または記名し、捺印します。
 必ずしも書類を作る必要はありませんが、書類がないと後になって内容について争いが起こる場合もあり、その証拠資料として残しておくほうがいいわけです。また、土地家屋とか、著作権とかのように、登記や登録手続きか必要なものについては、その手続きをするときに遺産分割協議書が添付書類として必要です。
 この協議書に押印する印は、実印で、協議書には印鑑証明書を添付して確実性を期するのか通例です。
 よくある例ですが、長兄が相続登記のためにどうしても必要だからというので、他の兄弟か遺産分割協議書に印を押したところ、後日、遺産の分割をめぐっての争いが起こり、解決できないまま家庭裁判所に持ち込んだところ、この審判申立ては却下されました。このように一旦作成された協議書は、契約書と同じように合意の成立したことを記す書面ですので、印を押す前に十分話し合い、納得しないうちは押さないという態度をとるべきです。
 遺産を分割する際に、相続分との関係で問題になるものに、寄与分ということがあります。
 たとえば、子のうちの一人が父の営む商売を手伝い、店を大きく発展させたという場合に、父が死亡したとします。その際に、すでに独立していて家を出ているほかの息子や嫁にいっていた娘たちに、相続人だからという理由で、父と一緒に家業を手伝っていた子どもと同じ相続分を認め、遺産を分割させるのか、公平かどうかということです。
 民法では確かに同順位にある相続人は平等に遺産を分けることを定めていますが、このような事情を無視して、形式的に相続分に従って遺産を分割することは、逆に不公平につながります。
 夫婦共稼ぎで家を建て、それが夫の名義になっていた場合とか、相続人の一人だけが親を世話してきていた場合とかが、これに当たります。
 そこで、相続財産のうちに、これを手伝ったり助けたりした者の独自の持分がある。すなわちこの共稼ぎの例でいえば、夫婦の共有財産に相当する面があり、妻の持分が認められるとするものです。そしてその持分を寄与分といい、寄与分に相当する財産は、あらかじめ相続財産から控除して、寄与した者に与えようというものです。

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