相続する場合の手続き

相続というのは、ある人が死亡した場合に、その人の持っていた財産(権利、義務)を、相続人が受け継ぐことをいいます。
 では、どうして相続人だけが他の者を除外して死者の財産を相続するのか、どうして相続の制度があるのか、ということになると、すぐ、答えられない方も多いと思います。
 これから相続の具体的な規定を述べていくわけですが、その前提として相続についての基本的な考え方を理解しておくことも大切なことです。少し考えてみましょう。
 これについては、自分が愛情を抱いていた者に対する財産の分配だという愛情説とか、血のつなかりを絶やさないためにその代価として財産を与えるのが相続だという血縁代価脱など、いろいろな考え方が出されていましたが、現在では、死者の残した財産といっても、多かれ少なかれ、その蓄積には配偶者や親や子などの協力によるものであり、それらの者はその財産に対して、潜在的な持分を持っており、死亡によって共同生活が終わる場合に、その持分が顕在化するのが相続である。死者と生活を共にしてきた者は、死者名義の財産によって生活が保障されていたわけで、その財産が他へ行ってしまうと、社会福祉の完備していない現在、生活の危険にさらされてしまうので、生前に死者が扶養してきた者の生活保障の意味から相続があるのだ、という二つの理由が相続の根拠とされています。
 なお、蒸発などして、七年間生死不明の場合に失踪宣告がなされることもありますが、この場合には、その人がどこかで元気で生活していたとしても、その人は死亡したものとして取り扱われ、相続がはじまることになります。

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相続人としての権利や義務は、相続が始まって、初めて発生するものですから、ある人が死亡すれば当然に相続できる地位にある人も、その人が死亡しないかぎり、その人の財産に対して、何らの権利を持つことはありません。
 法律上この相続できる地位にある人を推定相続人といっております。
 では、推定相続人は、全く何の権利も持だないのか、というと期特権を持つといわれていますが、その権利の内容は必ずしも明らかにされてはおりません。
 たとえば、養子にいって長年養親と農業を営んでいたがそのうち極めて仲が悪くなり、そこで養親は農地や家屋などの財産を第三者に売ってしまった。そこで推定相続人である養子が、この売買は仮装売買(自分に財産を残さないためにした偽りの売買)だといって争った事件で、最高裁は、推定相続人は将来、養親が死亡すれば相続できるという期待権を特つだけで、現在はまだ養親の財産に対し、具体的な権利を持つものでないから、養親のした売買の無効を請求できないと判示しています。
 結婚届を出した夫婦が新婚旅行中に飛行機事故で死亡したとしますと、おそらく子どもはいないでしょうから、それぞれの親が相続人となります。ところが、夫が一秒でも早く死亡したとすれば、妻と夫の親が相続人になりますので、法定相続分に従って妻が夫の財産の半分を相続し、その後に妻の親が妻の財産(夫の財産の半分を含めて)を相続します。逆に妻の方が夫より早く死亡したとしますと、妻の財産の半分を夫が相続し、夫の親が夫の財産と妻の財産の半分を相続することになります。
 ところが、実際には、どちらが先に死亡したかを証拠により証明することは不可能に近く、たとえば夫の親が先に夫婦の財産を取ってしまうと、妻の親としては、夫の方が先に死亡したと主張して取り戻そうとしても、それが証明できず負けることになります。
 このように早い者勝ちになるのは不合理ですから、どちらが先に死亡したかわからないような場合は、同時に死亡したものと推定することにしました。その結果、同時に死亡した者の間では相続はされ ませんから、夫の財産は夫の親へ、妻の財産は妻の親へ行くことになります。
 (1) 相続放棄
 相続するか相続しないかは、相続人の自由にまかされています。何らかの理由で、たとえば、かなりの借金があり、相続すれば借金の方か多いという場合など、相続したくないと思うときには、相続を放棄することができます。相続の放棄は、自分が相続人になったとわかった時から、三か月以内に家庭裁判所に放棄することを申述して行ないます。家庭裁判所は、放棄の申述をした人を呼んで、本心から放棄したいのかどうかを確めるのが普通です。なぜ放棄しようと思ったか、といった動機や原因は問いません。
 相続の放棄がされると、その相続人は初めから相続人でなかったことになります。そのことを利用して、たとえば農家とか商店、工場の経営者などが、長男一人に相続させる方便として、他の子どもに相続放棄をさせるというようなときに、この制度が用いられているようです。
 これに関達して、相続人のうちの一人に不動産や相続財産を相続させる方法として、 形式的な遺産分割協議書を作成して相続人全員に署名押印させるもの、相続分をこえる相続財産の前渡しを受けたことを証明する「相続分皆無証明書」を作成する、などの方法がとられ、登記などの場合に利用されている例があります。
 (2) 限定承認
 限定承認というのは、一般の相続のように相続財産と自分の持っていた固有財産とか一緒になって、一つの財度になってしまうのではなく、それぞれ別の財産として管理され、相続財産の中にある債務に対しては、相続した財産を限度として責任を負い、相続人の固有財産を持ち出してまでは、被相続人の債務の責任を負わないとするものです。その債務を支払って、なおかつ相続財産が残れば、その分は相続します。限定承認も、相続放棄と同じように、自分が相続人であるとわかった時から三か月以内に家庭裁判所に限定承認の申述を行ないます。この場合には、相続財産の目録を提出しなければなりません。
 限定承認をする場合、相続人が二人以上いるときは限定承認の申述は、相続人全員が共同でしなければ限定承認は許されません。
 これは一人だけの限定承認を許すと、清算が複雑になり、できなくなるからです。
 (3) 単純承認
 相続の放棄も、限定承認もしない場合、すなわち、相続財産を単に相続する場合を単純承認といいます。ほとんどの相続がこれに当たるものです。単純承認の場合には、相続財産の中に債務がある場合、自分の財産を出してまでも、その責任を負うことになります。
 また、単純承認には、なんらの手続きも方式も必要ありませんし、家庭裁判所への申述ということもありません。

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