夫に死亡された場合

現代社会では、交通事故など、何の関係もない第三者でも、つねに危険と隣り合わせて生活を送らなければならない時代です。夫に死なれて、イザその時になって、あわてて取り乱すことなく、正しい応対ができるように妻たるもの心得ておいてほしいと思います。
 まず、死亡という事実に出会った時は、死者と縁の近い者に連絡をとり、お通夜、葬儀についての打合せをすることが必要です。
 死後にまずとるべき法的手続きは、病死の場合には死亡診断書を、事故死の場合には死体検案書を、医師に書いてもらい、市区町村長宛に届け出なければなりません。
 死亡届を受理されると、死体火葬許可書がもらえます。この書類がないと火葬はできません。
 ここまでは、当然の処理ですが、以下は夫の死亡後に起こる経済的な問題です。
 病気で死亡という場合に、生命保険に加入していれば生命保険金が入ってきます。生命保険金の受取人か決まっていれば、保険金はその人が受け取ることになりますが、受取人として本人あるいは相続人と指定してあれば相続人全員か、法定の相続分に従って保険金を分けることになります。
 夫が公務員とか会社員であった場合には、死亡退職金あるいは弔慰金を受け取ることができます。ただし会社員であっても、その勤め先の会社の就業規則や労働協約によって退職金あるいは弔慰金の規定がない場合には、権利としては請求できません。
 これを誰が受け取るかについては、その規程に指定された者ということになります。
 死亡退職金の受取人が指定(たとえば妻)されていた場合、妻がこれを他の相続人に分けると、受け取った人に贈与税かかかりますので注意してください。
 なお、弔慰金、花輪代、葬祭料などについては、相続税はかかりませんが、名目は弔慰金でも、実質は死亡退職金に当てはまる場合は課税の対象となります。
 この場合、退職金に当てはまるかどうかは金額によって決められ、業務上死亡の場合は月々の給料の三六か月分、業務上の死亡でない場合は六か月分を超えるかどうかか判定の基準とされています。

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たとえば自動車事故のように、加害者のはっきりしている事故により死亡した場合には、その加害者および加害者の使用主に対して、損害賠償の請求をすることができます。
 ただし、その事故が被害者の故意、あるいは過失が原因で事故が起ったものである場合には、損害賠償ができなかったり、あるいは賠償額が減額されることかあります。
損害賠償として請求できるものは、入院費、治療費から葬儀、追善供養費までの実際にかかった費用、事故が起こらず本人が生きていたら、それだけ本人か得たであろうと思われる収入、本人ならびに遺族の精神的な苦痛に対する損害賠償、すなわち慰謝料です。
 事故の場合の損害賠償については、その額が高いこと、法律的にいろいろむずかしい問題が派生してくること、交渉の相手方が専門家が多いことなとを考えますと、自分一人で交渉するより、事前に最寄りの市区役所などの法律相談所で相談するとか、弁護士に頼むとかの方法をとるほうかより有利な解決が得られると思います。
 なお、金銭面では、社会保険から夫の死亡の場合に支給されるものかあります。
 夫が死亡した場合に起こってくる問題の一つに相続の問題があります。民法では妻には原則として、どんな場合にも相続権を認めています。
 ただ残された親族は誰か、言いかえれば相続権を取得できる者が誰かによって、妻の相続分(相続する割合)は違ってきます。
 まず、子どもがいる場合には妻が相続財産のニ分の一、残りのニ分の一を子どもの間で平等に分けることになります。この場合、夫の親兄弟には相続権はありません。
 つぎに、子どもかなく、夫の親かいる場合です。この場合は、妻が三分のニ残り三分の一を親の間(夫か養子の場合は、養親、実親ともに相続権があります)で平等に分けることになります。夫に兄弟かいても親がいる場合は、兄弟には相続権はありません。
 三番目に、夫に子どもも親もいないで、兄弟がいた場合には、妻が四分の三、残りの四分の一を兄弟間で平等に分けることになります。
 最後に、夫に子どもも親兄弟もいないという場合に始めて、妻か夫の相続財産の全部を相続できることになります。夫に叔父とか叔母あるいはおい、めいがいても、これらの人には相続権はありません。
 以上が夫の財産を妻が相続する場合の民法の原則です。したがって、たとえば夫と妻が二〇年間共稼ぎをして、家を建て夫名義で登記していたというような場合、夫に子どもも親もいないか兄弟がいる場合は、前述の原則で、その相続財産の四分の一はいくら遠く離れて、全然交際がなくてもその兄弟に相続権があることになります。
 妻にしてみれば、自分たちの二〇年間の汗の結晶をロクに顔を合わせたことのない兄弟に持っていかれるということは、耐えがたいことですし、不合理な話でもあります。そこで最近は、夫の相続財産について、妻がその財産を作る上において貢献した分は寄与分として、相続財産を分割する前に、その分を相続財産から控除し、その残りを相続財産として先に述べた方法で相続するほうが現実にマッチするという考え方が、裁判所でも認められるようになっています。
 妻と夫の親との関係は、一親等の姻族関係です。そこで、夫が死亡したことで、妻と夫の親との一親等の姻族関係はどうなるかです。と同時に、夫の氏(姓)を名のっている妻は、夫の死亡によりその姓が変わるのかです。
 これについて民法では、妻が現在の姓をそのまま名のりたければ名のってよいし、元の姓に戻りたければ、戸籍上の手続きをとって元の姓を名のることができます。しかし、このことは、妻が夫の親との姻族関係を切るということにはなりません。
 また、妻が姓を改めたからといって、その子どもの姓が変わるわけではありません。
 妻が夫の親との姻族関係を終了させるかどうかについては、民法では残された妻の自由な判断にまかせています。
 妻が姻族関係を終わらせたい場合には、本籍地または妻の所在地の市区役所、町村役場へ、死亡した配偶者(夫)の氏名、本籍および死亡の年月日を届書に記載した「姻族関係終了届」を出せば、姻族関係は終わることになります。
 したがって、姓を元に戻すことと、姻族関係を終了させることは全く別なことで、姓は夫の姓を名のり姻族関係を終了させることも、姓を元に戻し姻族関係を続けるこどもできます。そして、これを決めるのは残された妻の自由で、民法の規定の上からは死んだ者の親戚からはどちらにしろといえないことになっています。
 この場合、妻は姻族関係を終了させないかぎり、夫の親などの親族に対する扶養義務は残るわけです。したがって夫の親が理不尽な振舞いをするとか、あるいは仲が険悪であるときは、妻は姻族関係終了届を出すことによって、自由に扶養の義務を断ち切ることができるわけです。
 姓を元に戻したり、姻族関係を終了させる場合に、決めなければならないことがあります。たとえば、夫が長男で、夫の先祖の系図、仏壇や墓などの祭祀財産を受け継いでおり、夫の亡き後もそのままになっているという場合には、今度は誰がこれを受けつぐかを、受けつぐ権利のある者の間で話合いで決めなければなりません。
 話合いで決まらないとき、話合いができないときは、家庭裁判所が決めてくれます。
 姻族関係を終了させる場合、その妻の子どもは、親権者である妻が扶養することになります。

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