遺言する場合の注意事項

相続財産は、すべて被相続人(財産を相続させる者)個人の財産ですから、被相続人は生前に自由に処分してもよいわけです。また遺言によって他人に贈与することも自由です。これを遺言の自由といっています。
 では、一度、遺言をしたら、それを撤回することはできないのでしょうか。
 遺言するのが自由であるのと同様に、これを撤回するのも被相続人の自由です。特に何の理由がなくても、以前に約束した遺言を変更したり、取り消したりできます。一度した遺言書を誰かか知っていたり、続んでいたりしても関係ありません。
 撤回の方法としては、別に新しい遺言書を作って前の遺言書を取り消す、遺言書を破いたり、焼いたり文字を読めない程度にぬりつぶす、後の遺言書で、前の遺言内容に反する遺言をする、遺言で処分した目的物を他へ売却するなどがあります。
 一般には、前の遺言書はそのままにしておき、後で新しく遺言書を作り、「平成○○年○月○日に作成した遺言書のうち、全部(または一部)を取り消す」としておく方法がとられています。ただし、後の遺言書も、前に述べた方式に従った有効なものであることが必要です。
 どちらが前の遺言か、後の遺言かは遺言書の日付によって決めることになっています。
 なお、遺言書に赤インクなどで棒を引いたというだけでは、遺言を撒回したことにはなりません。また、いったん取り消した遺言を、新しい遺言でさらに取り消すことは、原則として許されません。

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遺言をめぐっての争いのうち、一番多いのが、遺贈すなわち財産を本人の死後に無償で贈与する問題です。というのは、遺贈がなされることによって、法定相続人が法律の定める相続分に従って受け取れるはずであった財産が少なくなったり、あるいはゼロになったりすることが起こるからです。
 ですから、遺贈をする場合は、相続財産のうちの三割といったように、一定割合で遺贈する場合と、たとえば○○の株式二〇〇〇株というように特定の財産を遺贈する場合があります。前者を包括遺贈、後者を特定遺贈といっていますが、効力は全く異なるものです。
 包括遺贈があると、受道者は、相続人と同じ権利義務を持つことになりますから、他に相続人がいれば、その相続人と共同で相続財産を受けつぎ、遺産分割によって実際に財産を受 け取ることになります。
 もし、遺贈を受けたくなければ、相続を放棄する手続きをとることになります。
 土地や株券など、特定遺贈の場合に注意することは、つぎの点です。
 不動産の遺贈の場合には、受追考は、登記をしなければ第三者に対抗できません。
 その場合の登記は、受遺者と相続人とでします。登記申請書に書く事項のうち、登記原因は「贈与」、日付は遺言者の死亡の日、登記目的は「所有権移転の登記」です。原因証書として登記申請書を二通作成し、一通を副本として提出します。その場合の添付書類として、その不動産の権利証のほか、相続人の印鑑証明書、受道者の戸籍謄本、遺言者の住民票謄本、受道者の住民票抄本が必要です。この手続きを司法書士に頼む場合は委任状が必要になります。
 また遺言により書かれていたダイヤとか家屋とかが、遺言者の死亡時に相続財産の中にない場合は、この遺贈は効力を持ちません。しかし、洋酒一〇本とか現金五万円といった、不特定物や金銭が遺贈の目的である場合には、それか相続財産中になくても、相続人はこれをほかから調達して受遺者に引き渡さなければなりません。
 遺贈には、たとえば土地家屋を与えるかわりに、自分の息子Aか大学を出るまで毎月三万円ずつ学費を出してくれ、というように受遺者に一定の義務を負わせる贈与、すなわち負担付贈与とよばれるものがあります。受遺者がこれを承認した場合には、遺贈により受けた財産の価額の範囲内で義務を負うことになります。
 遺言の自由は民法で認められており、相続財産をどのように処分してもよいわけですが、たとえば妻子には何も残さず受人に全財産を遺贈するとか、あるいは生前に全財産を特定の宗教団体に寄付してしまうというようなことがあると、相続人の相続できるという期待が裏切られ、あるいは相続人が生活に困るといったことが起こるかもしれません。
 そこで民法では、被相続人の相続財産のうち、必ず相続人に残さなければならない財産の割合(遺留分)を決め、相続人を保護しています。この制度を遺留分制度といっています。
 もし被相続人が遺留分を無視して全財産を 贈与や遺言によって処分した場合、遺留分を持つ相続人は、その贈られた人に対して、遺留分を侵された分について、これを如ったときから一年以内に相続財産を取り戻すことができます。この減殺請求権は一年で時効になりますので注意してください。すなわち、一年たてば請求してもムダになります。
 相続人のうち、この遺留分の権利を持つ者を遺留分権者といいます。法定相続人のうち遺留分権者になれないものは兄弟姉妹です。
 遺留分として残しておかなければならない場合は、
 子あるいは子と配偶者か相続人であるときは、相続財産の二分の一(実際には、これを法定相続分に従って分けます)。
 配偶者だけが相続人の場合、配偶者と親が相続人の場合は全体として三分の一。
 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、兄弟姉妹に遺留分権はありませんので配偶者だけで三分の一。ということになります。すなわち、どう遺言しようとも、これだけは法定相続人に遺産が残ることになります。なお、遺留分の計算の対象となる財産は、被相続人が残した財産、いわゆる相続財産に死亡前一年以内の贈与の価額を加え、その合計から被相続人の借金があればこれを差し引いたものが相続財産とみなされます。したがって、愛人に贈与しても、一年以内のものは、全部遺贈分から差し引かれるのです。

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