遺言をする場合の手続き

遺言は、遺言者が死亡した後に効力を生ずるものですから、後になって遺言の内容をめぐって疑問や争いか起きても、本人にその真意を確かめるわけにいきません。また、その内容を勝手に解釈して実行したのでは、遺言者の遺志を誠実に実行したといえない場合も当然出てきます。
 そこで民法では、満一五歳になれば誰でも遺言をできると規定して遺言者の遺志を尊重すると同時に、他方、遺言者の遺志が明瞭になるように、一定の方式を踏むことを必要とし、この方式によらない遺言を無効なものとすると規定しています。
 民法で定める遺言は、大きくわけると、普通方式と特別方式とに分かれます。普通方式というのは、遺言をする場合に、通常、とるべき方式で、特別方式というのは、普通方式によって遺言書を作成できない場合にとる方式です。
 遺言書の作成がいずれの方式によるにせよ、遺言は書面にしなければならず、その書面は民法で一定の形式を備えることを要求されています。
 では遺言書を作成する場合、どのような手続きを必要とするのかを、以下みていきましょう。

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一人で作れる一番簡単な遺言書が、自筆証言遺言です。
 自筆証書遺言書の作り方は、遺言者か、自分で遺言の内容を文章にし、日付および氏名を書き、署名の下に印を押せばよいという簡単なものです。
 ただ、この方式による場合、遺言の内容を他人に知られないですむという長所がある反面、遺言書が紛失したり、あるいは死後発見されなかったり、破られたり、変造されたりする危険が大きいという欠点があります。また、自分で好きなように書くため、法律的に不完全で、後でその解釈をめぐって争いの元になるという心配もあります。
 この場合の注意点はつぎの通りです。
 自分で書くことか必要です。タイプや録音テープではダメです。
 年月日は特定できればかまいません。たとえば、第六十三回の誕生日などのように書かれた場合。
 氏名は必要ですが実名でない雅号、通称でもよいとされています。また、氏名の下に押す印は必要で、これは実印でない、認印や拇印でもよいとされています。
 遺言書の文字を加除したり、訂正する場合には、欄外に、どこの何という字を削った、あるいは加えたというように書き込み、その場所にそこで使ったのと同じ印を押しておかなければなりません。
 以上の方式を踏んでいないと原則として遺言書は無効になります。なお、封筒に入れ、厳格に封をすることは条件ではありませんが実際上は必要でしょう。そして表に「遺言書在中」というように、裏面に「この遺言書は家庭裁判所にこのまま提出すること」という注意書きをしておくのかよいでしょう。なお、収入印紙を貼る必要はありません。
 公正証書遺言の作り方は、つぎの通りです。順を追って説明を加えていきます。
 立会証人を二人選びます。未成年者、禁治産者、準禁治産者、推定相続人(遺言者が死亡すれば相続人となる者)、受適者(その遺言により遺贈を受ける者)および配偶者や直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および雇人は、立会証人にはなれません。立会証人は遺言者が人違いでないこと、精神状態が確かであること、その遺言が真意に出たものであることを証明する役割を持ちます。
 遺言しようとする事がらを公証人(どこの公証人役場でもよい)に口頭で述べると公証人はその内容を筆記し、筆記したものを遺言者および証人に読み聞かせます。
 遺言者と証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自が筆記した書面に署名押印をします。遺言者の使用する印鑑は実印が必要で、それを証明するため印鑑証明が必要です(免許証、パスポートなど、公的機関の発行した写真入りの身分証明があれば実印でなくともよいし、印鑑証明も必要ありません)。証人の場合、遺言者が人違いでない旨を証明してくれれば実印、印鑑証明も不要です。
 最後に、公証人は、以上によりできた証書に、公証人か法律の規定によって作ったことを書いて、署名押印して、正本を遺言者に渡してくれます。
 公正証書遺言は、証人の選任、公証人役場へ出向くなどと面倒ではありますが、文字を書けない者でも遺言できること、公証人が関係するので作成する方式の欠点が出るおそれがなく、内容か不完全で解釈がわかれるということがないこと、原本は公証人役場へ保存されるので偽造、変造や滅失、破損の心配のないこと、遺言の執行に際し他の遺言と追って遺言書を家庭裁判所へ持ち込む必要がないことなどの長所があります。
 なお、遺言者が入院または病床にある場合は、公証人の出頭を求めて病院または遺言者の居室で作成することもできます。
 秘密証書遺言というのは、遺言の内容を遺言者が死亡するまで秘密にしておくために作る遺言書です。したがって、遺言者が聞違いなく自分の意思で作成した事実を公証人と証人の面前で公証してもらうという手続きを踏んで作成されるものです。秘密証書というのは、遺言内容を秘密に保管する作り方という意味です。
 この場合の作成手続きは以下の通りです。
 遺言者は、遺言書を自分で作り、これに署名押印し、遺言書を封筒に入れて封をした上、遺言書に使用した印で封印します。この場合の遺言書は、タイプによっても、あるいは代書させたものでもかまいませんが、署名は自分で書き、印を押すことが必要です。遺言書を加除、訂正したときは、自筆証書遺言と同じ手続きを踏みます。
 遺言者は、証人二人と一緒に、公証人の前に、遺言書を入れた封筒を差し出し、自分の遺言書であること、自筆でないときはこれを書いた者の住所、氏名を申し述べます。この場合、証人になれない者は、公正証書遺言で述べたものと全く同じです。
 公証人は、遺言書を提出した日付と遺言者の申し述べたことを封書の表面に書き込み、遺言者および証人と一緒に署名押印します。
 以上の手続きを踏んで作成されるわけですが、秘密証書遺言は、公正証書遺言と違って、公証人役場に保管されるわけではありませんので、封書ごと紛失するおそれがありますので、保管には十分な注意か必要です。
 民法では、遺言は原則として遺言者自身が自分で書いて作ることとしており、口頭による遺言は例外としてしか認めていません。ロ頭による遺言が認められる場合は、つぎの通りです。
 公証人に口授してする公正証書遺言。
 病気その他の事由で死亡の危急に迫った者がする一般危急時遺言。
 船舶遭難の際に、船舶中で死亡の危急に迫った者かする難船危急時遺言。
 一般危急時遺言をするには、証人三人以上の立会いのもとに、遺言者が証人の一人に遺言の趣旨を口頭で伝え、伝えられた者が筆記し、それを遺言者その他の者に読み聞かせ、各証人がその筆記の正確なことを承認したあとで署名押印することによって、なされるものです。
 この方式を踏まない口頭による遺言は、全て無効なものとして扱われます。
 船舶危気時遺言は、船舶遭難の場合において船舶中にある者が死亡の危急に迫った場合、証人二人以上の立会いの下に口頭で遺言をし、証人の一人がその趣旨を筆記し、証人がこれに署名押印をすることによってなされます。
 一般危急持、船舶危急時のいずれの場合の遺言も、証人の一人または利害関係人から家庭裁判所に請求して確認を得なければ、遺言の効力は発生しません。
 その他、口頭によるものではありませんが、特別な遺言として、伝染病隔離者の遺言と在船者の遺言があります。前者は、警察官一人および証人一人の立会いの下に、後者 は、船長または事務員一人、証人二人の立会いの下に遺言書を自分で書き、遺言者、立会人、証人が署名押印することによって遺言書を作成されます。

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