扶養の紛争が起きた場合

老母が生活に困っている。子どもは何人もいるのだか、誰一人として引き取って面倒をみないという場合に、そのうちの一人が見るにみかねて扶養した、あるいは第三者がたまりかねて面倒をみたという場合、その人はかなりの金銭的な負担と精神的な援助を余儀なくせざるを得なくなります。
 これに似た事例は多くあると思います。このような場合、長期間にわたって面倒をみ続けてきた人は、法律上扶養義務のある他の者に対して、自分の負担してきた扶養料を返してもらえるかどうか、です。
 これについては、以前は、先順位の義務者のために後順位の義務者が扶養した場合には扶養料の返還請求は認められるか、自分の義務を履行するためとか、または自分の愛情から自発的に扶養した者は返還を請求できないとされていました。
 この論理を押し進めていくと、冷淡な者が常に義務を免がれ、情の深い者が損をするという、何とも人情にそぐわない不合理な結果になります。
 これについて戦後、最高裁は、兄の意に反して母を引き取り扶養した妹から、兄に対して過去の扶養料を請求した事件について、「もし扶養義務者の一人が権利者に相当の扶養をしないなどの事情により他の義務者がみかねて引き取って世話をしたような場合にも、前者(兄)は義務を免れ後者(妹)のみ全費用を負担するという場合には、兄をして全面的に義務を免れしめるだけの相当の理由がなければならない」として、この事件では兄にそれだけの理由がないから過去の扶養料を妹に払えという判決を下しました。
 現在では第三者の立替扶養料やこの過去の扶養料については、家庭裁判所に申し立てることによって、請求できるようになりました。

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夫に死なれた妻は、夫の父母に対して扶養義務を負うのか、という問題です。
 実際問題として夫に死なれたというときには、子どもをかかえているという場合が多く、その上舅とや姑(義父母)の扶養となると、生活が苦しくなる、あるいは生活自体をやっていけるかどうかさえ問題になります。
 もちろん、舅とや姑に死亡した夫以外に子どもがいれば、その子の方か妻よりは扶養義務は先順位にあるわけですから、その子に扶養能力があれば扶養をまかせることができます。また、舅や姑に兄弟姉妹がいれば、これも同様です。
 法律では妻が夫の親に対して扶養義務を負うのは、このような扶養義務者がなく、その他特別の事情、たとえばこれまで一緒に生活をしていたとかがあれば、扶養義務を負うと規定されています。
 ですから、舅、姑と一緒に生活していた事情があれば扶養義務を負うことになります。
 ただし、この扶養義務は、自分たちの(すなわち自分と子供)生活に余裕があるる場合の義務です。自分の子どもを育てる義務は生活保持義務で、扶養義務よりも優先するものです。子どもを育てて生活をし、余裕がある場合に、舅や姑の面倒をみる義務があるわけです。
 また、夫が死亡した後、夫の親族とは姻族関係を持ちたくない、すなわちこれを終わらせたいと希望する場合には、市区役所、町村役場ヘ「姻族関係終了届」を提出することにより、親族関係は終了しますので、夫の親や兄弟に対する扶養ということは全くなくなります。なお、その場合でも子どもと夫の親との間の親族関係は残りますので、その間の扶養義務関係は変わりません。
 昨今の物価の上昇は目まぐるしいものがあります。そのために預貯金の目減りをはじめ、あらゆるところでいろいろな問題が起こっています。扶養料についても、それが三年前、あるいは五年前に話合いや調停で決められた場合には、現在ではその価値はその当時の何分の一かに減っていることは事実です。
 民法八八〇条は「扶養をすべき者もしくは扶養を受けるべき者の順序または扶養の程度もしくは方法について協議または審判があった後、事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議または審判の変更または取消しをすることができる」と定めています。
 当然、物価の上昇という問題は個人レベルで解決できる問題ではなく、ここにいう「事情の変更」に当たります。ですから、扶養権利者(親)と扶養義務者(子ども)との間で、これについてとりあえず話合いを行ない、いくらに変更するかを決めなければなりません。
 もし話合いで具体的な金額が決まらなければ、家庭裁判所に申し立てて調停をし、それでも決まらなければ最終的には審判により決めてもらうことになります。
 もし前に決まっていたのが審判によって決まっていたという場合には、その変更も審判によらなければなりません。
 事情の変更は、扶養料の額についてばかりではなく、扶養義務者に扶養能力のなくなった場合とか、あるいは今度は自分が引き取るといった扶養の方法の変更の場合とか、扶養のあらゆる場合についても、同様です。

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