子が親を扶養する場合

老人がアパートトの一室で死亡し、一週間後に偶然そこを訪れた息子によって発見されたというような新聞記事はよく見かけられます。新聞の論調は、どちらかというとその責任は都会の無関心さにあるといったものが多いような感じを受けますが、この項では、そこまで子どもか親を放っておいてよいのか、戦後の民法ではそれを放っておくのか、という視点で考えてみたいと思います。
 以前まで、若い女性の希望する結婚の条件として「カーつき、家つき、ババ抜き」という言葉か流行しましたが、そのことは親と一緒に生活したり、親の面倒をみるのが嫌だという世相の反映だとみることかできます。また住宅事情もあって家族構成か、夫婦子どもを単位とする核家族化し、マイホーム主義が定着していることを考えると、現実に、共稼ぎ夫婦か子どもをおばあさんに面倒をみてもらうという以外には、親の入る余地は少なくなったともいえます。
 そのような世間の現象に日頃接しているためか、現在の民法になってからは子どもは親を養う義務はなくなったと思っている人が結 構あります。
 確かに戦前の民法では、親と妻と子とを扶養しなければならない場合、まず親を優先的に扶養する義務がありました。すなわち、妻子を犠牲にしても、親を養わなければならない、となっていたのです。
 たとえば、極端な例をいうと、赤ん坊のミルク代よりも母親の衣類代か優先ということになり、これは明らかに不平等であり、近代社会の実情にあわないとして、戦後この民法は改正されました。現在の民法では、夫婦間の扶養、未成熟の子どもの扶養を、それ以外の親族の扶養と区別し、前者を優先させることにしたのです。
 このように、現在の民法でも親に対する子の扶養義務がなくなったわけではなく、扶養を受ける順位かかわっただけなのです。そのことが間違って理解され「親を養う義務はない」のだと誤解されているものと思います。

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前に、妻や子に対する扶養のほうが親に対するよりも優先すると述べましたが、このことは妻や子どもがいれば親は扶養しなくてもよいということではありません。
 つぎに、ではどの程度優先するのか、どんな場合に親を養う義務があるのかをみていきましょう。
 民法は夫婦間では、協力扶助義務を、未成熟の子どもについては監護、養育義務を定め、この義務は、最後に残された一個のパンまで相互に分け与える義務だといわれ、法律上、生活保持義務とよんでいます。すなわち生活保持義務は、妻や未成熟の子どもの生活を、夫か自分の生活の一部として維持していく義務なのです。
 これに対して親を養う義務は、法律上、生活扶助義務といわれ、あくまでも妻子を養いその生活を維持しその上で余裕があるという場合に発生するものです。ここでいう生活の余裕とは夫婦子どもがぜいたくな生活をしてなお余る余裕という意味でなく、夫の社会的地位、身分からみて、社会的にこの程度がその家庭にふさわしいという線を考え、それ以上を生活の余裕とみていますので、実際に親を扶養する場合には、夫婦が生活を節約し、ある程度経済的苦痛を感じることになる場合も多いわけです。
 ここに見たように、親を養う側には自分の生活保持義務を果たした上で、生活の余裕がある場合に生活扶助義務が発生するわけですが、逆に扶養を受ける親の側に、自分に財産もなく、また自分の労働によって生活できないという状態にあることが扶養を受けるためには必要です。
 この両者の要件にあてはまったときに、具体的な扶養の権利、義務ということが発生するわけです。親が経済的に困らないときには子どもには扶養の義務は発生しません。
 民法では、扶養義務を負う者を、夫婦、親子間に限っておらず、扶養の義務を負う者を具体的に定めています。それぞれについて問題になる点をみていきましょう。
 (1) 直系血族
 直系というのは、自分の先祖と子孫をいいます。ですから、父母、祖父母、子供、孫は直系です。血族とは血のつながっている者をいいます(養子は法律によって血のつながっているものとみられています)。親子の間、祖父母と孫の間でも、互いに扶養の義務があります。
 もちろん養子縁組を結んだ場合には、養子と養親間は扶養義務がありますが、同時に実の親と養子の間でも扶養義務がなくなるものではありません。民法では養子縁組みを結んでも、実の親との親族関係を消滅させていないからです。
 (2) 兄弟姉妹
 外国の法律では「兄弟は他人の始まり」といわれ、兄弟姉妹間の扶養義務を認めている例はほとんどありません。民法八七七条一項で、わが国では兄弟姉妹の間でも扶養義務のあることを規定しています。
 (3) その他の三親等内の親族
 親等については、おじ、おばとおい、めいの間がこれに当たります。自分の配偶者の両親、祖父母、連れ子、兄弟との間も、これに当たります。ただし、この三親等間の扶養義務は無条件に負わされるわけではなく、「特別な事情」がある場合にだけ、家庭裁判所の審判により扶養義務を負わされることになっています。
 「特別な事情」とは何かについては、具体的には家庭裁判所で決められるわけですが、たとえば小さい頃おばに育てられ、現在、おばが扶養の必要な状態にあるとか、あるいは生活を一緒にしていた嫁、むことしゅうと、しゅうとめ間では「特別の事情」ありというように認められています。そして、この特別事情が特に深いと認められた場合には、先順位の扶養義務者と同順位で扶養義務を負わされる場合もあります。

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