偽装離婚をした場合

わが国では、会社といっても形ばかりで、その実は個人経営と変わらぬといった会社が少なくありません。このような会社では、会社の債務は、その大半が社長個人の資産をあてにして貸し付けられている場合が多く、そこで社長個人としては、会社が倒産しそうな場合、妻と偽装の離婚をし、その財産を妻に対する財産分与として与え妻名義にし、債権者からの強制執行を免れ、落ち着いた頃に再婚する、あるいは戸籍上のみ離婚し実質は一緒に生活を続けるといった例がときどきみられます。
 また、結婚に際し妻の氏を称するに至った夫が、仕事の関係とか、自分が戸籍の筆頭者になりたいとかの理由で一旦妻と離婚し、その後に夫の氏を称する再婚をする、すなわち別れる意思はないが目的のために偽装の離婚をするといった例があります。
 もともと、このような離婚は、夫婦が本心から別れるという合意がないわけで、あくまでも離婚届を作成してこれを屈けるだけという形式的な離婚をしようというものです。
 こういう場合は、夫婦間では、その後に再婚して元に戻すという約束があるのが普通なわけですか、形の上で別れた夫あるいは妻が、その約束を破って、形式的に離婚のできていることをいいことに他の異性と再婚するといった場合、その離婚が無効だと言い得るのか、という問題か出てきます。
 このような場合、どのように考えればよいかをみてみましょう。

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正式に(合法的に)離婚か成立するためには、夫婦共に離婚の意思がなければなりませんし、さらに離婚届を提出することが、その要件とされています。
 ただ、離婚届を扱う戸籍係員には、その離婚届が提出された場合、その書類を出した本人たちに本当に離婚の意思があるのかどうか判断できませんし、またそのことを実際に書類による以外に調べる権限が与えられていません。
 ですから、偽装の目的を持った離婚届が出されても、それか書類の上で間違いかなければ受理され、法律に従った有効な離婚届として扱われることになるのです。
 問題が起きてから、たとえば偽装離婚中に夫が他の女性と再婚したというような場合など、市区町村役場の戸籍係のところへ駆けつけ、実はこうこうだから離婚届を返してくれとか、撒回したいといっても、あるいは証拠になるような手紙とか書類を見せても、そのような言い分は通らないわけです。
 その場合には、改めて裁判所に対して、離婚無効の確認をしてもらう訴えをしてもらわなければなりません。
 裁判になった場合、一番問題となるのは、離婚意思とは、どんな意思をいうのか、ということです。
 法律では、結婚の場合も、当事者の真意によって成立し、または有効となる旨を定めています。このことは離婚についても、直接の規定はありませんが、学説判例により認められています。
 しかし他方において、戸籍法の定めに従って届けをすることによって、これらの身分行為の効力が生ずることを規定しています。
 したがって、身分行為が成立し、あるいは有効であるためには、届出意思だけあればよいのか、あるいは実質的に結婚あるいは離婚しようという意思も必要なのかということが問題になるわけです。
 離婚意思を届出意思であると理解すれば、偽装離婚も届けられるととによって離婚として有効に成立します。
 これに対し、離婚の意思とは「実際に別れようという意思」のことであると考えれば、実際に届けを出すことに合意ができ、離婚届が出されても、実際上は別れるつもりはないわけですから、出された離婚届は無効となります。
 学者の間では、届出意思があればよいとする形式的意思説と「実際に別れよう」という意思をも必要とする実質的意思説とがあり、争われています。
 同様に判例をみても、このいずれの主張をも認めたものがあり一貫した考えをとっていません。
大審院、昭和一六年二月三日の判決では、差押えを免れるために偽装離婚し、財産を妻のもとへ移し、夫は妻の家へ通っていたが、夫に愛人ができその愛人との婚姻届を夫が出したという事件で、虚偽仮装の離婚届を出すのは刑法の罪となるような行為であるから、そんなに簡単に虚偽の離婚届をしたとみてはならないし、また離婚届を出していなから実際には夫婦関係を続けていく意思があるという場合には、離婚届を出した後の関係は、法律上の夫婦関係を解消して内縁関係にしておこうという意思があると考えるべきで、その場合は、法律上真に離婚の意思で届出がなされたものと認めるべきであるとして、偽装離婚も、法律上の離婚として有効だと判断しています。
また、最高裁、昭和三八年一一月二八日の判決では、妻を戸主とする入夫婚姻をした夫婦について、夫を戸主にするために離婚届をした場合にも、たとえ実際には夫婦関係が続いていても、法律上の離婚をする意思がないとはいえないとし、離婚を有効としました。
 大審院の時代には、このような離婚を無効とするものもありましたが、近年の最高裁はこのような離婚届が出された場合は、一貫して有効であるという判断を下しています。

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