裁判で離婚ができる場合

夫婦関係を継続してゆくことが困難な場合は、離婚になるわけです。その場合、夫婦共に別れるという意思かあれば話合いによる協議離婚や調停離婚が成立する余地がおりますが、実際上は夫婦関係は破たんしているのに、夫婦の一方が、別れるのはイヤだというケースでは、結局、裁判により法律の力で強制的に離婚するしかありません。
 裁判による離婚が認められるかどうかについての基本的な考え方は、夫婦の一方に夫婦間の信頼を破ったとか、愛情を裏切ったというような、道徳上非難に値する行為をした場合にだけ離婚を認めるのではなく、夫婦共に別に道徳上非難に値するようなことはなくても、性格が合わないとか、愛情が冷めてしまって、これ以上夫婦関係を続けていけない、すわなちお互いに夫婦関係を破たんさせた責任はなくても、夫婦関係が破たんし、回復の見込みがないという場合にも離婚を認めることにしています。
 もし、裁判によっても離婚が認められない場合には、実際上別居するなどの夫婦関係をやめるなどのことはできても、法律上の離婚はできないわけです。
 では、実際にどういう場合に裁判所は離婚を認め、どういう場合に認めないのか、具体的な例をみてみましょう。

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異性関係を理由とする離婚の申立ては、離婚件数の中では多いほうに属します。
 異性関係があっために夫婦関係が破たんしたという場合に、一貫して裁判所で認められている考え方は、「破たんの原因につき主として責任を負う者の離婚請求は認めない」というのが最高裁の判例です。
 すなわち、夫の異性関係が原因の場合には夫からの離婚請求は認められません。同様に妻に責任がある場合は妻からの請求は認められないわけです。
 たとえば夫が一回だけ浮気をした場合にもそのことだけで離婚が認められるかどうかは疑問です。民法七七〇条二項では、離婚原因に該当する事実があっても一切の事情を考慮して結婚の継続が相当だと認めた場合には、離婚の請求をしりぞけることができると定めているからです。
 東京地裁、昭和三四年六月二六日判決では、夫が暴力をふるうなど冷酷粗暴なために、妻が耐えきれなくなり不貞行為に走ったというケースで、逆に妻からの離婚請求を認めています。
 この事件では、結婚生活を破たんさせた主な責任が、妻の不貞行為にはなく、夫の暴力をふるうなどの行為にあったと認定したからです。
 つぎに妻が暴漢とか、強盗に襲われたいう場合はどうでしょうか。不貞行為といえるためには、まず性的に自白でなければなりません。妻に何ら責任を問えないような場合は、そのことだけで離婚原因にはなりません。
 夫婦間には、お互いに同居し、かつ協力し扶助する義務のあることは前に述べた通りです。夫婦関係の中には、精神的、肉体的、経済的協力関係がありますが、たまたま、私たちの周辺にみられる悪質な夫の義務違反は経済協力義務の違反です。
 判例では、健康な夫が妻をかえりみないばかりか、収入があると飲み屋に入りびたり、賭博にふけって金銭を浪費し、日々の生活費にも事欠く始末なのに他に収入の道を求めず、徒食浪費を続けている場合、民法七七〇条二号の悪意の遺棄とまではいえなくても、婚姻関係を継続しがたい重大な事由にあたるとして、妻からの離婚請求を認めています。
 また東京地裁、昭和二四年二月九日判決では、夫は妻をおいて家出をし、たまに帰ってきても徒食遊興のために金をもらいにくるだけで、浮浪生活を続けており、妻は一〇年もの間、夫から何の援助も受けず、夫の帰宅を待ちながら三名の子供を養育してきたという事件で、婚姻関係を継続しがたい重大な事由にあたるとして、妻からの離婚請求を認めました。
 また、夫に働く能力がありながら働く意思がない場合、あるいは反対に生活費は欠かさず送り続けていても、妾のもとから帰ってこない場合にも離婚は認められています。
 嫉妬心の強い夫の乱暴にたまりかね何度か実家に逃げ帰っていた妻が、いく度話をつけて戻っても相も変わらぬ夫の嫉妬、乱暴、いやがらせに、ついに離婚を決意し、長男をおいて実家へ帰り離婚の調停を申し立てた。夫は調停にも応ぜず、審判にも異議を申し立てて妻の帰宅を強要したので、妻はいよいよ愛情を失い、寮の炊事婦、旅館の女中、などをして働いていた。妻の離婚請求に対し、夫は妻が上述の如き職業に従事したことは夫の名誉を毀損し重大な侮辱を加えたものとして反訴として離婚および慰謝料の請求に及んだが、最高裁は妻が働いたのは夫の処遇に耐えかねて逃げだしてから二年余も経った後であり、当時は事実上すでに久しく結婚生活の実質は失われていたのだから、夫に対する重大な侮辱とはいえないとして、夫の請求をしりぞけ、妻の離婚請求を認めました。
 このように夫が妻に対して乱暴を働く場合に、それか夫婦間の協力扶助の義務をいちじるしく怠るものとみられる程度に述すれば、離婚原因になると考えられます。
 この場合も積極的に暴力をふるうことはもちろんですが、病気療養中の妻の看護をしないで放っておくなど、消極的な態度が虐待と認められ、妻からの離婚請求が認められた例があります。
 浪費の場合、どのくらい金使いか荒い場合に、離婚が認められる浪費になるかは、一概には断定できません。日雇いの労務者の家庭と会社経営者の家庭とでは、生活費として使う額自体か違うことからもおわかりと思います。浪費かどうかはその家庭における程度の問題で、その結果、夫婦間の協力扶助義務違反と認定されるかどうかです。
 夫の浪費については前述しましたので、ここでは妻の浪費を理由に離婚を認めた事例を紹介します。
 夫は公務員でその収入は高給とは認めがたいのに、妻は結婚後間もなくから家計を預かりながら、その性格が派手なため支出が多く、しばしば家計費に不足をきたし、夫に隠れて入質し、また夫に無断で手形を振り出すなどして借財を重ね、ついには代金支払いの目算もないのに月賦販売を利用し、頭金のみを払い購入した品物を売却するなどしたため、離婚の話合いとなったが、妻が二度としないというので再出発をした。ところが、依然としてこれまでの生活態度が改まらない、という事件で、裁判所は、夫にとって婚姻を継続しがたい重大な事由であると認め、夫からの離婚指示を認めました。
 また、妻か夫に隠れて賭博に夢中になって、その資金にあてるため夫に無断で夫名義を使い何度も借財をし、そのほとんどが支払不能となり、夫に借財の返還請求を受けさせるに至らせたことは、夫に対する重大な侮辱となり、離婚原因となるとして夫からの離婚請求を認めています。
 離婚事件のなかで、嫁、姑、舅との不和を原因とするものかかなりの件数を占めています。
 裁判所は、嫁、舅と間の折合いが悪いというだけで離婚原因とは認めていませんが、嫁、姑、舅との間不和がもとで夫婦間にヒビが入りそうな場合、夫はこの障害を取り除いて円満な夫婦間にする努力をすべきですが、その協力義務に違反し、無関心をよそおったり、あるいは常に舅に味方し妻に暴力をふるったり、悪ロをいったりした場合には、婚姻関係を継続しがたい重大な事由にあたるとし、妻からの離婚請求を認めるのが一般です。
 名古屋地裁、昭和四三年一月二九日判決は、嫁、舅間でいさかいがたえなかったので、妻は耐えきれず何度か実家に帰っていた。そのうち、夫からもう帰ってくる必要はないなどといわれ、別居するに至った。夫は妻を虐待したり冷遇するようなことはなかったが同時に積極的に両親との間をとり待つこともなかったと判断され、裁判所は夫が円満な家庭を取戻すようなんら誠意ある努力をしなかったことは、婚姻関係を継続しがたい重大事由にあたるとして、離婚を認めました。
 つぎの事件は夫が妻の両親から冷遇を受けたというものです。
 妻の氏を名のり、資産家の妻の両親と同居し、一〇年余り生活していたが、その間の妻の両親の蔑視、冷遇とこれに隷従する妻の態度に疎外感、寂漠感を強くし、ついには結婚を続けていく意思もなくし別居した。その後四年して夫は他の女性と関係を結び、内縁関係を続けるに至ったが、その女性との結婚を考えたためか、妻との離婚を請求した事件で、裁判所は、妻の親と夫との間のゴタゴタに対し、妻の認識の程度と夫に対する態度は常軌に欠け、夫姉間のなすべき義務を果たしていないとし、婚姻関係を継続しがたい重大な事由にあたると判断しました。なお、有責配偶者からの離婚請求は認めるべきではないという妻の主張については、別居して四年後である点を考え、妻との婚姻生活はすでに破たんしていたのだから、内縁関係を結ぶに至ったことは実質上影響ないという判断をしています。
 なお、嫁、舅間の対立を放任してその調整に努めず、その上舅の側に立って妻を罵倒し暴行を加えた夫、夫の母および兄夫婦と妻との間の不和確執を回避するために十分の配慮と努力をしなかった夫が婚姻生活が破たんしたとして離婚を申し立てた事件で、本来その対立を調整すべき立場にある配偶者(夫)が、それを怠って離婚請求することは許されないとし、離婚請求は認められませんでした。

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