結婚が成立しない場合

かつて、本人か全く知らないうちに結婚届が出されていて、戸籍の上で妻になっていたという事件か新聞紙上をにぎわしたことかあります。いったい、こんなことか現実にどうして起こるのでしょうか。
 判例にあらわれたものでは、大正九年九月一八日、戦前の最高裁判所である大審院より出された例で、父の意見で無理にAの嫁となったBが結婚式をあげ、二、三日して実家に戻り、Aと同居するのを断わったので、Aは結婚届を出せばBの意思も変わり戻ってくるだろうと思い、Bの父母に頼みBの承諾を得ないまま、AとBの結婚届を出したというのがあります。
 結婚は男女共に結婚しよう、将来夫婦になろうという意思に基づいてのみ成立するものですか、結婚届を受け付ける市区役所や町村役場の窓ロでは、結婚届書の記入不備といった書類面の形式上の確認はしますが、結婚の当事者が真に結婚の意思をもって、本当に自分で署名したかどうかといった実質上の調査をする権限はもっていないので、形式面で整っていれば、必ずといっていいほど受け付けられ、新戸籍が作成 されるのです。
 民法七四二条では、このような結婚の意思のない場合の結婚を無効とし、最初からその結婚は無かったものとして扱うことにしています。
 また、無断で結婚届を出すような行為は、刑法上の私文書偽造、公正証書等原本不実記載などに該当し、一番罪の重い刑罰で処せられることになっています。

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結婚が有効に成立するためには、法律の禁止する条項に該当しないことが必要です。
 本来、このような場合には、結婚届は受け付けられないことになっています。ところが、誤ってこれが受け付けられた場合には、その結婚は無効なものとして扱われるのか、です。
 たとえば、結婚適齢前の結婚、重婚、近親者間の結婚、再婚禁止期間内の結婚は、法律の禁止する結婚ですが、その場合でも当事者の間には結婚する意思はあるわけです。そこで民法では、結婚の意思のない場合を無効とし、結婚の意思のある場合は結婚として成立させる、しかしここにあげた結婚は社会秩序の上から好ましくないので、これを取り消さなければならないとしました。
 例外として、父母がありながら父母の同意を得ていない未成年者の結婚があります。この場合は、結婚届が間違って受け付けられると取り消せないようになっています。
 結婚を取り消す場合、家庭裁判所に調停を申し出て、合意に相当する審判を得て、取り消すわけですが、取消しを請求できるのは結婚の当事者、その親族、検察官です。検察官に取消請求を認めた理由は、これらの結婚が反社会的な要素を持っているからです。ですから、夫婦の一方か死亡した場合には、反社会的な意味を持つ結婚は存在しないわけですから、検察官の取消請求権はなくなります。
 結婚の取消しの場合には、一般の契約の取消しと異なり、その効力は過去にさかのぼらず、取り消されるまでは有効で、将来に向かって夫婦でなくなるだけです。取消後の、子どもはどうするかとか氏(姓)の問題はどうするかについては、離婚の場合と同じなので、離婚の条文に従って決めることになっています。
 婚姻適齢に達していないまま結婚し、結婚中に適齢に達した場合には、その結婚は要件を満たすことになり取り消すことができなくなりますが、当事者は適齢に達した後三か月にかぎって取り消すことができると定めています。
 同様に、再婚禁止期間内に結婚した場合についても、六か月の禁止期間を過ぎた後、またその期間内でも、女性が妊娠してしまった後は取消しを請求できないことにしています。
 フランスの諺に「縁談ならだまし放題」というのがあり、日本にも「仲人口」という言葉があるように結婚には詐欺的な要素が常につきまとうものです。
 しかし、多少のうそや事実誇大程度では、ここでいう詐欺にならず、判例で詐欺に当たるとされた例は、精神に異常を来し入院した事実を隠していた場合があります。またこれを否定したものに、職業いつわり収入を実際より多くいった仲人の言葉を信用して結婚した場合があります。
 そこで民法は詐欺や強迫による結婚の場合には、本来、自分の自由な意思で結婚したわけではありませんので、その結婚を取り消すことができるとしました。ただし、詐欺を発見したのち、あるいは強迫からのがれた後三か月以内に取り消さない場合、あるいはその期間内でも、その結婚を承認した場合には取り消せないことにしています。
 この規定は、あくまで結婚した本人の自由な意思を尊重するために設けられたものですから、この結婚の取消しを請求できるのは、詐欺や強迫によって結婚させられた本人に限られます。
 何が詐欺や強迫になるかは、一概にいえませんが、前者については将来結婚生活をしてゆくのに重大な支障となるものをいつわった場合で、強迫については、婚姻当事者に結婚しないと危害を加えることを告げ、恐怖の念を引き起こさせ、そのために結婚する意思を決定した場合で、この強迫が結婚の相手方による場合、あるいは第三者による場合でもよく、この強迫がなければ結婚しなかっただろうと思われる場合であることが必要です。

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