結婚を口実に騙された場合

婚約というのは、結婚しようという当事者の意思、すなわち合意があって始めて成立するものです。この合意すなわち約束は、たいてい口頭でなされるものですから、それが嘘か、真実になされたものか、ということは、約束のあった時点では当事者の判断にまかされ、後になって約束があったかどうかという争いになった場合、それを証拠によって証明するというのは、それが口頭でなされたものであるために非常に困難です。
 誰でも婚約をする前の段階では、少なくとも相手方のいっていることが真実であろうと思って、婚約を決心するわけですが、相手が心の底では結婚する意思はないのに、表面上結婚したい、婚約してくれ、といってきたため、それを信じ、すなわちだまされて、関係を結ぶに至ったり、あるいは金をみつがされるに至ったり、という例は実際に結構あります。
 こういう被害者は、まれに男性がなることもありますが、どちらかというと婚期を過ぎた女性が多いようです。

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好きだ、好きだ、結婚しようといわれ、身体を求められ、捨てられた、よくある話ですが、この場合、詐欺罪で訴えられないか、を考えてみましょう。
 確かに、その男には欺罔の意思(人をだまそうという意思)はあったと考えられます。しかし、彼がそれによって得ようとしたものは、自分の欲望を満たすことであったわけです。そんな場合、その男の行為が詐欺罪に当たらないか、です。
 では、刑法の詐欺罪の条文をみてみましょう。刑法二四六条では、「(1)人を欺罔して財物を騙取(だまし取ること)したる者は十年以下の懲役に処す。(2)前項の方法をもって財産上の利益を得、または他人をしてこれを得せしめたる者また同じ」と規定しています。
 この条文によりますと、まず詐欺罪になるためには、(イ) 犯人か相手方を欺罔する(騙す)こと、(ロ)相手方が錯誤に陥る(騙される)こと、(ハ)相手方が財産的処分行為をする(金や品物を渡したり、貸金を免除する)こと、(ニ)その結果、相手方から犯人へ財物あるいは財産上の利益が移転する(金や品物を受け取ったり借金を免れたりする)ことという要件を満たさなければなりません。
 ですから、その男が詐欺罪にあたるといえるためには、この(イ)〜(ニ)のうち、(イ)、(ロ)は要件に該当しますが、(ハ)、(ニ)の要件にあたるか、ということになります。
 この点にしぼって考えてみましょう。その男に体を奪われたということ、すなわち貞操の侵害が、財産的処分行為になるかどうかです。貞操が財物であるとすれば、この貞操は金で買ったり、売ったりできることになります。これは現在の法律の認めるところではありません。
 ですから、貞操は財物とはいえず、したがって詐欺罪にいうところの財産的処分行為に該当しない、すなわち詐欺罪にあたらないわけです。
 しかし、結婚を口実にだまされて、お金を取られたり(結婚を前提に、自分が貢いだ場合も含めて)、あるいは品物を取られたりしたという場合には、これは財産的処分行為があったことになりますので、詐欺罪になります。これか結婚詐欺といわれるものです。こんな場合でしたら警察にその男を詐欺犯人として告訴すれば、その男は処罰されます。
 実際問題として考えると、だました男を警察に告訴しても、その男かだまし取った金を使っていたり、また、品物を処分していた場合には、自分のもとへ何も返ってきません。もし使っていなかったり品物を処分していなければ、いったん警察が没収し、後日、それは返してもらえます。
 では、返してもらえない場合、相手の男から損害賠償を取ることはできないか、を考えてみましょう。
 まずむりやり体を奪われたという場合は、貞操侵害による不法行為として損害賠償を請求できます。
 これに対して、合意の上で関係を結ぶことは法に触れることも、また法によって保護されることもありません。
 問題となるのは、結婚の意思もないのに結婚しようといって、相手の女性をだまし、関係を結んだ場合です。
 この場合には、お互いか納得の上、関係を結んだというようにみえますが、実際は相手方よりだまされたことが原因になっているわけで、やはり貞操侵害による損害賠償請求(慰謝料の請求)ができます。
 では、相手の男性に、最初はだますつもりはなく結婚の意思が多少なりともあった、という場合はどうでしょうか。
 この場合には認められる場合と、婚約不履行に当たり慰謝料請求かできる場合とに分かれます。
 要するに、証拠とか証人などによって婚約が成立していることを証明できるかどうかが、どちらの結論に結びつくかの分かれ目となります。

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