亡夫の母親を一生養わねばならないか

A子さんは二七歳の未亡人です。二年前に御主人に死なれたが、幸いに知人の紹介で、ある商事会社に採用されました。
 A子さんの両親は早く亡くなり、帰るあてもないといりような関係で、そのままなくなった夫の家で六五歳になる妻の母と一緒に暮らしてきました。
 夫の母は小金を貯めていて、こっそり人に貸したりしているらしいが、生活費は全然負担せず、もっぱらA子さんの得ているささやかな給料で二人の生活がまかなわれています。
 この頃になってA子さんもそろそろ将来の生活の設計をしなければならないと考えはじめました。ところがA子さんの気持を敏感に察した亡夫の母は「一生貴女に養って貰う」といいだしたました。
 A子さんには扶養しなければならない法律上の義務があるのでしょうか。

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A子さんは夫の母に対し、法律上扶養の義務はありません。法律上相互間に当然扶養義務があるのは夫婦、直系血族、兄弟姉妹だけです。
 ただ例外として家庭裁判所は特別の事情があると認めた場合、三親等内の親族間に扶養義務を設定することができます。A子さんと亡夫の母親は姻族一親等の関係にあるから、裁判所の裁量でA子さんに母親に対する扶養義務を負わせることもできます。
 特別の事情とは例えば夫から住居を相続してしまい、母親にはいくべき家もなく、貯金その他の資産も使い果たしてしまい、おまけに病気で仕事もできないというような事情が考えられます。
 ところがこのように家庭裁判所が特別事情があると考え、A子さんに扶養義務を負わせようとしても、A子さんが一方的に姻族関係終了届という書類を役所の戸籍係に提出すると、A子さんと夫の母親との間の姻族関係は、これで消滅してしまいます。
 こうなると家庭裁判所はもはやA子さんに対し扶養義務を負わせることは絶対不可能で、すでに扶養義務を設定してあった場合にも、この届出と同時にA子さんは扶養義務から解放されます。
 つまりA子さんは夫の肉親に対し当然に扶養義務を有しないし、家庭裁判所が扶養義務を負わせようとする場合は、一片の届出でこの義務からまぬがれることができるわけです。

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