勝手に離婚届を出した夫と結婚した女性の責任は

飲食店を経営しているAは、いつの間にか店員のB子と深い関係を結ぶようになりました。これを知った妻は、夫のAやB子に不倫な関係の清算を執拗に迫ったが、熱病にかかったAにはこれを聞く耳がありませんでした。Aはあまり妻がうるさいので、勝手に離婚届を出してしまいました。
 Aは、B子には妻と離婚をするといって、関係を結んだ手前、これでほっとした気になり、B子との結婚届を出してしまいました。B子はAが妻との離婚届を勝手に出したことはもちろん知っていました。
 Aの身勝手な行為に妻が黙っているわけがありません。妻はAに対し離婚の訴を提起し、名実ともに離婚をしたうえに、店員のB子に対しては慰謝料一〇〇万円と弁護士費用の二〇万円を支払えとの訴を提起したところ、裁判所は、妻の言い分を全面的に認めた。

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このケースの場合、Aと店員のB子の関係ですが、両名ともに婚姻意思をもって、結婚届を出したのだからいちおう有効となります。一方、Aと妻の離婚届は偽造による離婚届であり無効となります。そうするとAとB子の結婚は重婚となり、取り消し得べき婚姻となりますが、取り消されまではいちおう有効な結婚として取り扱われることになります。
 しかし、重婚となると、刑法上重婚罪となり、二年以下の懲役刑に処せられることになります。
 ところでAとB子の結婚もいちおう有効であるとすれば、二人は夫婦として守操、同居の義務を負っていることになり、したがってAとの生活は正当だということになります。
 もし、結婚しないで両者が同居しているとすれば、B子はAの不貞行為の相手方として不法行為による損害賠償義務を負うことになりますが、このように重婚の場合、妻のB子に対する損害賠償の根拠は何かが問題となります。この点に関して裁判所は、
 「重婚関係にある男女の間にも夫婦として互いに守操義務および同居協力義務を負担しているものといえないでもない。しかし、重婚関係になることを知って婚姻届をして故意に刑罰に処せられるべき重婚罪を犯した者については、その結果生じた身分関係に基づく権利により、その者を保護すべきでないものというべきであるから、このような場合においては、民法七四八条三項を準用ないしこの規定の趣旨からして、故意に重婚関係にはいった者は、その相手方に対し、一般に婚姻関係から生ずる権利(貞操を守ることを求める権利、同居協力を求める権利等)を主張し得ないものと解する」
 と判示しています。この見解によると、Aは妻との関係においては妻の間にのみ守操義務、同居義務を負い、B子との間にはないことになります。
 B子は、Aの偽造による離婚届を知っているからといって単純に、Aの妻に対して不法行為が成立するといえるのか、悪者はAではないかという言い分もあるので、その根拠づけがむずかしいところです。

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