蒸発した夫と離婚できないか

A子の夫は四年前、出かせぎに出たきり消息不明となり、いまではいわゆる蒸発したものと考えられている。同じ職場に行ったことのある同僚の噂話だと、二年前の夏に、夫によく似た人を見かけたということだが、どうもはっきりしません。
 ところが、一人息子のB男が昨年夫の留守の間に、ハシカをこじらせて死亡してしまったいま、A子は、帰ってくる当てもない夫と別れて再婚を考えはじめるこの頃です。
 ところが、隣に住む物知りの女性の話だと、法律では七年以上たたないと、夫が死亡したものとしては取り扱ってくれない、という話です。法律は、四年間も行方不明の夫を待っているのに、これ以上待てというのでしょうか。法律では、再婚したいというA子の考えを許してはくれないのでしょうか。

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人は七年間生死不明であると、死亡したものとして取り扱われることがあります。また、配偶者の生死が三年以上不明のときには、裁判所の判決で一方的に離婚することが認められています。また、沈没した船に乗っていた者、そのほか生命の危険を伴う災難に見舞われた者については、船が沈没し、災難が去ってから一年間、その生死がわからない場合に、失踪宣告をし離婚することができます。
 あまりにも長い間、生死不明なのに、残存配偶者を放置し、いつまでも配偶者としての地位を釘づけにしておくのは、道義的にも強制すべきものではないからです。
 しかし一方、三年たったからといって、何でもかんでも、一方的に離婚できるようにしたのでは、悪用されるおそれもあります。そこで民法では、生死が明らかでない状態が、三年間継続した場合にかぎって、離婚を認めることにしているのです。
 本件の場合には、夫が出かせぎに出発したのは四年前ですが、二年前に、同じ職場で夫の姿を見た人がいるというのであるから、噂にしろ、夫が生きていたかもしれない証拠があったというべきです。
 生死不明というのは、死亡した証拠も、生存している証拠もともにないようなときのことであって、たとえ噂にしろ、同じ職場で姿を見た人がいたのであれば、もっと確実な証拠をつかむためにも調査をすべきです。
 したがって本件の場合は、夫の生死不明になった時期は、二年前の噂話のなくなったときから計算するのが正しい。だから、来年の夏になったら、三年間は生死不明ということで、裁判離婚の申立てをすべきである。
 裁判の途中で、また新たな証拠が出てきて、夫が最近まで働いていたことがわかったとすれば、また生死不明の時期がずれることになる。残された配偶者にとってはたいへん気の毒なことではありますが、法律は万が一のときも考慮して、このように画一的な規準を設定しているものであることを理解してほしいものです。

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