婚約の一方的破棄の場合でも結納は返すのか

A子は、カトリックの信者ですが、仏教徒である彼と婚約し、彼から結納金三〇万円を受領しました。A子から、挙式は教会で行なうものとし、生まれる子の洗礼およびカトリック的教育を了承するようにいわれ、彼は一度了解しながら意を翻して、美智子に改宗をしなければ結婚しないといい、婚約を一方的に破棄しました。
 A子は彼に結納金を返還しなければならないでしょうか。

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婚約がととのったときに、その事実を確認すると同時に、その誠実な履行による婚姻の成立を希念して、結納と称して金員布帛等を授受する慣行がわが国においては古来からあります。
 結納の慣行の内容は、きわめて区々であり、その時代、その地方によりそれぞれ異なっているのが実情ですが、結納の授受がなされた後に婚約が破棄された場合に結納を返還すべきかどうか法律上の問題となります。
 民法典には、結納についての規定がないので、まず、結納の法的性質が問題となります。
 結納は、婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与であるといわれています。したがって、婚姻の不成立の場合には、出損の原因を欠くことになって不当利得となるから返還義務を生ずる。との点につき判例の明らかにした一般的標準はつぎのとおりです。
 事実上の婚姻(内縁)が成立すれば、届出がなされず、しかも、内縁が解消されても、結納返還義務はありません。ただし、内縁の期間が短く、事実上の夫婦協同体が成立したと認められないような場合には、返還義務があります。
 合意解消の場合には、双方の当事者が返還の義務を負います。
 一方的の解消の場合には、解消について責任のある者は、自分の受領したものの返還義務を免れえないが、自分の授与したものの返還を請求できないとするのが学者の考えです。
 しかし、下級審の判例は分かれており、まだかたまっていません。
 婚約破棄の原因がもっぱら結納を交付した者の側にある場合には、
 破約に対する制裁として、結納の返還を請求する権利を有しないとするのが、信義誠実の原則等に照らして結納を授受した当時の当事者の意思に合致するとしたもの、
 結納は将来成立すべき婚姻生活を目的とする一種の贈与であるから、その婚姻が不成立に終わった場合は目的不到達による不当利得として、その不成立について当事者のいずれの側にその責任があるかに関係なく、贈与者から受贈者に対してその返還を求めることができるとしたものがあります。
 A子の場合、彼の婚約破棄は正当事由がありませんが、結納の返還義務については下級審の分かれるところであり、まず調停で話し合うのがよいでしょう。

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