健康保険の仕組み

 健康保険は、医療保険の中でもっとも典型的なものです。労働者やその家族が病気、けがをしたとき、あるいは出産・死亡などをしたときに医療の給付及び各種の手当金の給付を行い、被保険者(彼扶養者)の生活の安定をはかる目的でつくられた制度です。

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 さて、保険事業を運営する者(経営主体)を法律上「保険者」と呼んでいますが、健康保険の事業を運営する保険者は政府(社会保険庁)です。ただし、単一の企業でその従業員が七〇〇人を超える場合、また同じ種類の事業を営む企業が寄り集ってその従業員が三〇〇〇人を超える場合には、それらの企業及び企業の合同体はそれぞれ組合を組織し、その組合が政府から独立して保険者となることが認められています。
 このような組合を「健康保険組合」といい、これ以外の政府直属のものを「政府管掌健康保険」と呼んで区別しています。
 なお、社会保険庁の出先機関には各都道府県の保険(部)課と社会保険事務所があり、加入、保険料の支払、保険給付などの事務は、社会保険事務所が窓口になっています。
 常時五人以上の従業員を雇用している法定の事業所(農林水産、旅館、飲食店、クリーニング、理容業などサービス業以外の事業所)または法人の事業所(五人未満の法人の事業所は、昭和64年3月31日までに適用される)の従業員は、これに加入しなければなりません。これを「強制加入」といいます。
 強制加入でない事業所では、従業員の二分の一以上が加入に同意し、厚生労働大臣が認可をした場合には、これらの事業所の従業員は被保険者(任意包括被保険者)となることができます。
 被保険者が退職などによって被保険者の資格を喪失した場合、喪失日前継続して二ヵ月以上の被保険者期間(任意継続被保険者及び共済組合員たる被保険者を除く)があったものは、喪失日より二〇日以内に申請することにより、二年間に限り引き続き被保険者となることができます(任意継続被保険者)。
 ただし、五五歳以上で退職して任意継続被保険者となった場合には、二年を過ぎても六〇歳になるまで(国民健康保険の退職被保険者に該当する場合はそのときまで)加入することができます。
 この結果、国民の約五割が被保険者またはその家族(被扶養者)としてこの保険による医療給付、傷病の治療、あるいはこれによって生じた損失の補償(手当金)を受けることとなっています。
 健康保険は被保険者本人だけでなく、その被扶養者(扶養家族)にも保険給付がなされます。保険給付の対象となる被扶養者はつぎの範囲を満たす者です。
 直系尊属(父母・祖父母など)、配偶者(内縁関係を含む)、子および弟妹で主として被保険者によって生計を維持されている者。
 三親等内の親族で被保険者と同一世帯に属して主として生計を維持されている者。
 被保険者の配偶者で内縁関係にある者の父母および子で、被保険者と同一世帯に属して主として生計を維持されている者、配偶者の死亡後、その父母および子で引き続き被保険者と同一世帯に属して主として生計を維持されている者。
 健康保険は、社会保険の一種として、その給付に必要な財源は原則として被保険者の積立金(拠出金)によってまかなわれてます。
 これを保険料といい、被保険者の収入に一定の率を掛けて、被保険者と事業主とが一定の割合で負担します。
 この場合、保険料を被保険者の毎月の実収入でいちいち計算するのでは事務上大変わずらわしいことになるので、毎月の平均月収とみなされる額を算定(標準報酬)し、この標準報酬に保険料率をかけて各被保険者の保険料を算出します。
 保険料の計算方法ですが、具体的にいいますと、毎年五月から七月までの収入の平均額を計算し、もしその額が一〇万一〇〇〇円から一〇万七〇〇〇円の範囲であれば、その被保険者の標準報酬は等級では八等級で、実際の収入が一〇万二〇〇〇円であっても、毎月一〇万四〇〇〇円の収入があったものとみなし、これに法律で定められた保険料率を掛けて保険料を算出します。
 なお、保険料率は政府管掌健康保険の場合は一〇〇〇分の八三、そして健康保険組合の場合は一〇〇〇分の三〇から九五までの範囲で、その組合の実情に応じて決めることができます。
 保険料の負担割合については、被保険者と事業主とが折半するのが原則です。
 ただこの結果、被保険者の負担する保険料が一〇〇〇分の四五以上となる場合(保険料率一〇〇〇分の九〇以上となる場合)には、その超えた部分は事業主が負担しなければならないこととなっています。
 健康保険事業は、原則として保険料によってその運営費をまかなうべきであると前に述べましたが、公的な制度としてその安定した運営を確保するため、一定の範囲で国や地方自治体などの財源が投入されています。健康保険の場合でいえば、事業運営に要する経費のうち、事務費は仝鎖国が負担することになっています。また、傷病の治療などに要する費用の一〇〇〇分の一六四から二〇〇までの範囲で、国が負担することになっています。
 健康保険による医療は、医師の資格を有している者なら誰にでもできるというものではありません。都道府県知事に申請し、そこで登録された者だけが、そのような医療行為を行うことができることになっており、そのようにして登録された医師を「保険医」といいます。
 同じように、病院や診療所でも知事の指定を受けたものでなければ健康保険法による医療行為を行うことはできません。このように指定を受けたものを「保健医療機関」といいます。したがって、保険医でない医師や保健医療機関でない医療機関で診察を受けた場合は、医療費は全額受診者が負担しなければなりません。
 医療保険という制度上では、被保険者にしても被扶養者にしても、実際にかかった医療費の一部しか保険医療機関の窓口では払いません。このため、保険医療機関ではその残りの部分は保険者に請求することになります。
 そのためには、実際にかかった医療費がどれ位の額になるのかという計算の基準が必要です。したがって、健康保険では診療を行うに当たっての個々の診療(各種の検査が含まれる)、処置、投与した薬や注射、入院したときの看護などの種類や程度に応じて、国(厚生労働省)が一回なり一種類なりの単価を決めてそれに基づいて一人一人の患者に毎月どれだけの医療費がかかったかを計算する必要があるわけです。
 その結果、算出された医療費から、医療機関の窓口で患者が一部負担として支払った額を差引いた額が、各保険者に請求され、清算されることになります。

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