手形訴訟の手続

 民事訴訟法四四四条一項によりますと、手形訴訟は次のような場合に起こすことができるとされています。
 1. 約束手形の振出人や裏書人及びそれらの保証人に対する手形金額と年六分の割合による利息または損害金の請求。
 2. 為替手形の引受人や裏書人、振出人及びそれらの保証人に対する手形金額と年六分の割合による利息または損害金の請求。
 3. 小切手の振出人、裏書人及びそれらの保証人ならびに支払保証をした支払人に対する小切手金額と年六分の割合による利息または損害金の請求。

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 手形訴訟は通常の訴訟に比べ、裁判が迅速に進行します。訴訟を起こしてから強制執行まで、約二〜三ヵ月で結論が出ますから、取立債権の保全などに有利なわけです。
 これを定める「手形訴訟及小切手訴訟ニ関スル特則」(民事訴訟法第五編ノニ)は、昭和40年1月1日から改正・実施されました。
 手形訴訟は、手形の取立手続を迅速にするため、次の四つの特徴を持っています。
 1. 訴訟の際に利用できる証拠方法を、文書のみ(書証)に制限され、証人調べはできません。これで、証人訊問に費やされる時間が短縮できます。
 2. 審理の開始、進行を早める訴訟上の措置がとられています。
 3. 判決には無条件の仮執行宣言がつけられ、しかも、原則として、そのための保証金もいりません。これにより、強制執行がやりやすくなっています。
 4. 判決に対する不服(例えば仮執行の停止の申請)があっても、手形訴訟では「異議」という特別な手続によることになり、執行停止は制限されています。
 ふつうの訴訟の場合と同じように、手形訴訟は、手形の振出人や支払人、裏書人などの営業所や住所を管轄する裁判所へ起こすのが原則ですが、手形の支払地の管轄裁判所へ起こしてもかまいません。
 請求金額が三〇万円以下のときは簡易裁判所、三〇万円を超えるときは地方裁判所へ訴訟を起こします。
 また、振出人や裏書人を同時に被告として訴訟を起こすときは、手形の支払地を管轄する裁判所のほか、それらの人の内どれか一人の営業所を管轄する裁判所に起こすことができます。
 もちろん、裏書人が多数いる場合でも、その内の資金のありそうな一人に対してだけ訴訟を起こしてもかまいません。ただ、他の裏書人に対する請求権の時効などの関係から、一応、全員に対して訴訟を起こしたほうがいい場合もあります。
 手形には時効などの際に生じる利得償還請求権というのがありますが、手形訴訟では、この請求はありません。この場合は、通常の訴訟に訴えることになります。
 手形訴訟の訴状には、必ず、手形訴訟による審理と裁判を求める旨を記載しなければなりません。そして手形の写しを添付し、訴状と添付書類は、正本一通と、被告の数だけの副本を作成して提出します。
 通常の訴訟では、証拠の方法として、書証の外、証人訊問、当事者訊問、検証などがあります。しかし、手形訴訟では、裁判を迅速・簡易にすすめるため、原則として書証だけに限られています。
 この書証とは、書面の意味内容を証拠とする方法で、実際には、手形や小切手または契約書を提出することになります。書証は原告である自分が現に所持している文書に限ります。つまり、どんな文書でも証拠に出せるわけではありません。例えば、一相手方や第三者の所持している文書などを提出したり、取寄せたりすることは認められていません。
 ただ、文書が本物であるかの証明、手形の呈示についての証明だけは、例外的に原被告本人またはその法定代理人の尋問が認められています。
 以上の書証その他の方法で、手形の署名や印鑑が相手のものだということを証明できない場合は、口頭弁論終結前であったら、いつでも通常訴訟に移行することができます。この場合は、被告の同意は必要としません。証明のむずかしい場合や手強い相手は、かえって通常訴訟にした方が有利なこともあります。
 証拠調べが終了すると、裁判所は判決を言渡します。判決が原告の勝訴である場合は、無条件で仮執行の宣言がつけられます(民事訴訟法一九六条)。仮執行の宣言を受けると、すぐさま強制執行に移り、手形金の回収を図ることができます。
 この判決に不服がある場合、通常の訴訟のように控訴することはできず、その代りに「異議の申立」という方法を選ぶことになります。判決の送達を受けた日から二週間以内に、同じ裁判所に対して書面で異議の申立を行います。
 異議の申立には正当な理由はいりません。ただ適法な申立があればよいわけです。異議の申立が認められたら、以後は通常の訴訟手続に移行されます。そこで、十分な証拠調べなどを申請して、改めて裁判をやり直すわけです。
 しかし、いくら異議の申立が認められたとしても、仮執行の宣言がついた判決はなんら影響を受けません。勝訴した原告は当然仮執行を迫ってきます。
 そこで、被告は異議の申立を行うと同時に、強制執行停止命令を申請し、異議申立の訴訟が終結するまで、強制執行を停止してもらうようにしなければなりません。
 しかし、裁判所は無条件で強制執行停止命令を出してくれません。その要件はかなり厳しいもので、手形訴訟の判決を取消したり、変更したりする見込み(疎明)のある場合に限ります。この際、裁判所は異議申立人にかなりの保証金を積ませて、仮執行を停止する命令を出すのが通例です。次に、異議申立の判決に不服の場合は、控訴、そして上告することができます。この判決は、通常の訴訟の第一審判決に当るものです。

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