手形の不渡と遡求

 私たちは、たに気なく不渡手形ということばをよく使っています。しかし、このことばは法律の条文にはありません。
 しかし、現実には存在しており不渡手形ということばは、社会一般で広く使用され、また法律関係者も、そのまま使っています。
 ところで、「不渡」について、法律では、「満期二於テ支払ナキ」ことといっています(手形法四三条)。つまり、手形・小切手が支払期日に支払いにまわされたにもかかわらず、その支払いが拒絶されたことをいっています。

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 今日、ほとんどの手形・小切手が手形交換所において、支払いの取立てがなされています。
 手形の所持人から手形の取立依頼を受けた銀行は、手形交換所を通して支払銀行化支払いを請求(支払呈示)します。この場合、何もなく支払いが完了すればよいのですが、支払銀行に預金が不足していた場合、支払銀行はただちにその旨を支払人(取引先)に連絡し、入金を促すことになります。支払人が入金できなければ、その手形は不渡となり、支払銀行から手形交換所に「不渡届」が提出されます。また、その不渡手形は、必ず不渡理由を書いた付端がつけられ、支払人に返却されます。これを「不渡返却」といっています。
 規則では、第一回の不渡が出てから、その後六ヵ月以内に二回目の不渡届が出るまでは、銀行取引停止処分にはなりません。
 しかし、これでホッとするわけにはいきません。現実は非常に厳しいものです。つまり、第一回目の不渡は、手形交換所から銀行にだけ通知され、外部には公表されないのが建前ですが、どういうわけか興信所などの情報専門機関がこれをかぎつけ、外部に流してしまいます。
 こういう情報は、すさまじい勢いで関係業界へと知れ渡るのが常です。当然、取引先や銀行は警戒することとなり、その結果、しだいに資金繰りが思わしくなくなり、結局、六ヵ月以内に二度目の不渡を出し、銀行取引停止処分に付される、というケースが多いのです。
 手形が不渡になったとき、手形所持人はいったいどういう対応をしなければならないでしょうか。不渡になったからといって、手形金をあきらめるわけにはいきません。不渡が発生したらまず、手形債権の保全、手形金の取立てを考えなければなりません。
 支払期日(満期日)に、手形金が支払えず不渡とされたとき、手形に裏書人がある場合は、その裏書人に対して手形金の支払いを請求することができます。これを手形法では「遡求」と呼び、この権利を「遡求権」といっています。(四三条)
 例えばDは振出人Aに対して手形の支払いを請求します。しかし、この手形は不渡となり、Aは行方不明です。こうなりますと、DはAに請求するより、Cに対して「手形金を支払え」との遡求権を行使する方が簡単にすみます。
 この制度は、手形の所持人の安全を図るもので、民法における「瑕疵担保責任」と同じ考えのものです。
 遡求権を行使し、手形金などの償還を受けるには、相手方に不渡通知書などを出して行うのが一般的です。この通知書は義務づけられたものではなく、口頭でかまいませんが、相手方(裏書人や保証人)に支払いの準備をさせるという意味でも重要な手続といえますので、なるべく書面にして通知するのが無難です。
 裏書人や保証人など被遡求権者にとっては、手形の遡求を受けるということは、予期せぬ重大な事件といえます。そこで、被遡求権者に対して、遡求の原因(例えば不渡など)が発生したことを知らせ、償還義務を履行する準備をさせ、また、すみやかに償還して償還金額の増大を防がせることを目的としたのが通知制度です。
 手形金の支払拒絶があった場合や、支払人が支払停止になった場合などに通知が必要です。しかし、支払人が破産した場合は、破産の公告があり、通知は必要ありません。
 また、この通知を行う者は、手形の最終所持人、および通知を受けた裏書人などです。通知を受けた者は、裏書人、保証人で振出人となります。この場合、手形所持人は自分の直接の前者(裏書人)にのみ通知すればよく、振出人に通知する必要はありません。
 通知書を出す期間は、手形所持人の場合、拒絶証書が作成された日か、またはこれに次ぐ四取引日以内となっています。また、通知を受けた各裏書人の場合は、通知を受けた日か、またはこれに次ぐ二取引日以内となっています。
 したがって、通知書は、期間内に相手側に到達することが必要です。
 通知書は、顧問弁護士を通じて、配達証回付内容証明郵便で出すのが一般的ですし、無難でしょう。

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