約束手形の振出し

 約束手形を実際に振出すには、さまざまなルールにのっとらなければなりません。取引銀行との契約、振出す際の実務上の注意など、知っておかなければならないことが多くあります。以下、順を追って説明します。

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 まず、手形用紙について説明します。本来、手形は自由に振出せるもので、手形用紙も一定のものを使用しなければならないというわけではありません。
 しかし、現在、実施されている制度ですが、銀行を支払場所として手形を振出す場合には、銀行が取引先に交付する統一手形用紙を使用しなければなりません。この統一手形用紙制度は、全国銀行協会連合会が制定したもので、用紙を交付してもらうには、取引銀行に当座預金口座を開設しなければなりません。
 統一手形用紙制度が設けられるようになって、市販の手形用紙が振出されることはほとんどなくなりました。
 また、この統一手形用紙を使用して振出した手形でないと、銀行は当座預金から手形金の支払いをしてくれません。
 こうした制度が設けられたのは、不渡の防止、手形偽造などの事故防止、などのためです。
 もっとも、手形は銀行を支払人とするものだけではありません。自宅払いの手形を振出しても立派に通用します。ですから、こうした場合は、どんな用紙を利用しても有効なわけです。
 手形は多くの人々の間を流通していく経済的機能を持つ有価圧券ですので、当然に、その公共性が強く要求されます。その手形がどのような内容を持っているのか、振出人は誰か、金額はいくらかなどが、手形面の記載だけで明らかになることが必要です。手形以外の、口約束とか別な契約書などの方法で、その手形の内容を補充することが許されると、手形関係者に多大の損害を与えるおそれが生じます。
 そこで手形法は、手形に記載すべき事項を細かく定め、この記載事項に一つでも不十分なところがあれば、その手形は原則として無効であると定めました。このような事項を「絶対的記載事項」、あるいは「手形要件」といっています。
 また、手形法は、この手形要件以外に、手形に記載しなくても手形の効力に関係はないが、記載すれば効力がある事項も規定しています。このような事項を「任意的記載事項」、あるいは「有益的記載事項」といっています。
 手形法七五条は、約束手形として有効であるために必ず記載しなければならない事項(手形要件)を定めています。
(1)約束手形文句
 これは約束手形であることを示す文字であり、手形用紙の中に必ず記載しなければなりません。現在、使用されている統一手形用紙には、必ず約束手形という文字が印刷されていますので、あまり問題はありません。
(2)手形金額
 一定の金額であって、手形用紙の金額欄に記載されるものです。手形は金銭の支払いを目的としますから、その金額を明示しなければならないのは当然のことですが、これは円でも、ドル、ポンドその他外国の通貨でもかまいません。一定の金額というのですから、例えば、「五万円ないし七万円」などという金額は無効になります。
(3)支払約束文句
 これは手形用紙に「上記金額をあなたまたはあなたの指図人へこの約束手形と引替えにお支払いいたします」と印刷されているものです。法律では「一定ノ金額ヲ支払フベキ旨ノ単純ナル約束」と定め、特に単純ナル約束とあるのは、支払いにいろいろと条件をつけてはいけないということです。例えば、もし売却されたら支払うとか、業績が向上したなら支払うとか、などの条件をつけてはならないわけです。
(4)満期の表示
 満期というのは、手形の記載のうえで定められた、支払いがあるべき時期のことで、支払日あるいは支払期日ともいわれます。満期の定め方には、次の四種類があります。
 ・ 確定日払い
 ・ 日付後定期払い
 ・ 一覧払い
 ・ 一覧後定期払い
 これと異なる満期の方法や、分割払い(一枚の手形の金額を何回かに分けて違った期日に支払うこと)などの記載があると、手形そのものが無効となります。ただ、満期の記載をしてない手形は、法律上、一覧払いの手形とみなされますが、現実には一覧払いの手形はほとんど利用されておりません。
 現在もっとも多く利用されているのは確定日払手形がほとんどで、統一手形用紙でも「支払期日平成○○年○○月○○日」と印刷してあり、年月日を記入すれば確定日払いになるようにしてあります。
(5)支払地の表示
 手形が満期になったとき支払いがなされるべき地が支払地です。独立の最小行政区画(市区町村、例えば東京都中央区)を記載します。つまり、支払地は住所ではなく地域を示すものです。統一手形用紙では、支払地の記載はすでに印刷されていますので、振出人が記入する必要はありません。振出地と支払地が追っている場合もあり得ますが、この場合には支払地に手形を呈示して請求することになります。支払地が書いてない場合は振出地が書いてあれば、それが支払地とみなされます。
(6)受取人の名称
 これは、手形の最初の権利者が誰なのかを特定するたのものです。支払いを受ける者、または支払いを受ける者を指図する者を受取人と称し、手形用紙では「○○殿」と記載された個所に記入します。受取人の氏名については、本名、ペンネーム、屋号、芸名、法人名なんでもかまいません。要するに明らかに当人であることがはっきりすればいいのです。受取人の記載のない手形は原則として無効ですが、受取人にその記載を委任したような場合には、白地手形とみなされ有効です。
(7)振出日付
 これは、いつの日付で手形上の意思表示をするかを示すものです。実際に振出した日であっても、なくてもかまいません。実際に振出した日より将来の日を記載した先日付手形でも、過去の日を記載した後日付手形でも有効です。
 振出日を記載しない手形は無効ですが、現実には、手形受取人などに任意の日付を補充してもらう仕組みで、振出目白地のまま振出されることがしばしばあります。この場合、受取人は振出口を補充して手形の呈示をすることになります。
 ところで、一覧払い手形と日付後定期払い手形の場合、振出日はその呈示期間の起点を示す重要な役割りを果たすことになりますので、確定した日付を記入し、後日の紛争を避けるべきです。
(8)振出地の表示
 手形を振出した地域のことで、支払地と同様、独立の最小行政区画(市区町村、例えば東京都新宿区)を記載します。何も番地まで書く必要はありません。実際に振出した地と違っていても、効力に何ら影響はありません。
 統一手形用紙では、振出地の下に振出人の住所を記入する箇所があります。振出人の住所は、法律で定める手形要件には入っていませんので、書いても書かなくても手形の効力には関係がありません。しかし、振出地が、記載されていない場合は、振出人の住所によって振出地の記載が補充されることになりますので、その意味でもできるだけ記載しておくべきでしょう。
(9)振出人の署名
 手形には振出人の署名がないと無効となります。署名は自署でも記名押印でもよいことになっています。日本では記名押印をするのが一般的です。
 自署は本人が自己の氏名を自ら手書きで手形に記載することです。つまり、自筆のサインということになります。ゴム印などいわゆるサイン印などを押しても、これは記名で押印が必要になり、自署にはなりません。名前は、受取人のところでも説明しましたが、ペンネーム、通称、芸名でもかまいません。万年筆でもボールペンでも墨でもかまいません。鉛筆は書き直されるおそれがあるので不適当です。
 自署は法律上は押印をしなくても有効となりますが、日本の慣習では押印も同時に行うのが普通です。現実には銀行では押印のしてない手形は支払いを拒否しています。しかし、法律上は押印を必要としませんので、もし押印のない自署の手形は、訴訟を起こして、本人の自署であることを証明しなければなりません。
 会社など法人の場合は、通常、会社名などの下に代表取締役、支店長などの肩書を入れ、記名押印するのが普通です。
 法人でない組合、例えば同窓会とか親睦会などは、その組合の代表者を選び、その氏名を組合名の下に書き、署名押印するのが一般的です。
 なお、印鑑は銀行に届出済のものを使用します。

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