服務規律

 厚生労働省は労働契約の締結により労務する義務を負いますが、これに付随して使用者のの統一的な指揮命令のもとに就業に応じる義務があります。これを服従義務といい、この義務は、経営秩序を維持し、企業の正常円滑な運営をはかるために認められたものです。この義務を定めたのが服務規律といわれるもので、これは法律や、就業規則、労働協約などの中に明文化され、あるいは従来からの労使間の慣行もその根拠となります。
 したがって、服務規律は無制約になんでも規定しうるものではありません。労働者の労働義務の範囲内で課せられるのであり、一般的にいうなら、労働時間外、あるいは会社施設外の私的な領域を規律することはできません。しかし具体的には、個別問題に応じてその限界を検討せざるを得ません。次によく問題となる事項について説明を加えてみたいと思います。

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 憲法で政治的思想、信条の自由が保障されている(十九条、二一条一項、十四条一項)からといって、企業内において労働者の政治活動が自由に認められるというものではありません。職場は業務遂行のための場であり、職場内における労働者の政治活動は労働者相互間に政治的対立抗争を生じさせるおそれがあり、使用者の企業施設管理を妨げるおそれもあるわけです。
 判例でも、使用者が企業内の政治活動を禁止するのは違法ではないとしています(最高裁判決・昭和52・12・13)。
 ある会社員が、日曜日にデパートで万引きを働いたとします。これはいったいどうなるでしょう。普通、労働者が私生活の場で刑事上の犯罪を犯した場合、多くの企業は就業規則でこれを懲戒事由としています。そこでいかなる場合に規則に該当するかですが、私生活だからといって服務規律と関係ないとはいえません。
 判例では、犯罪行為により企業の名誉ないし信用が著しくそこなわれ、企業の体面を著しく汚したとき、当該犯罪行為が労働者を企業から排除しなければならない程度に悪質なら、懲戒処分にできる、としています(福岡地裁判決・昭和40・10・13)。
 具体的には、行為の性質、情状、会社の業種、規模、経済界に占める地位、経営方針、従業員の地位、職種等から総合的に判断されることになります(最高裁判決・昭和49・3・15)。
 また私生活上の非行の場合にも、そのことにより企業秩序を乱したとか、企業に損害を加えたという場合にも懲戒処分の対象となります。
 したがって、冒頭の事例においても一流企業の管理職の犯罪として、マスコミをにぎわしたようなときは、懲戒処分の対象となるでしょう。
 労働者が他の仕事に従事し、内職やアルバイトをすることは、就業規則等で禁止されていないかぎり自由です。しかし、一般的に使用者側は、内職が労働者の労働力の質や量に悪影響を及ぼし、そのため完全な労務の提供ができなくなることを危惧して、二重就職を禁止する規定を就業規則に設けているのが普通です。また、労働者は勤務時間外とはいえ企業の名誉信用を損なったり、企業の利益を害する行為は慎むべき義務を負っているといえます。
 そこで、勤務に具体的に支障が生じたりあるいは競業関係に立つ企業や、秘密がもれると都合の悪い企業に勤めたりした場合は、就業規則等に違反したことになり、懲戒処分の対象となります。
 服務規律に違反すれば制裁懲戒処分の対象となります。そして制裁は就業規則や労働協約などで定められた手続に従って、権限のある機関がこれを行います。部下を管理する直属の上司でも制裁をなす権限はないのです。しかし直属の上司は権限がないからといって、部下の服務規則違反を放置していいということではありません。後に行われるかもしれない制裁への前提として、上司が部下を注意し、反省を求め、ときには叱ることが必要なのであり、これが管理者としての管理責任なのであります。決して違反行為を黙任してはなりません。

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