株式の知識

 株式には三つの意味があります。つまり1.資本の構成単位としての株式、2.株主たる地位としての株式、3.株券に表彰された取引の対象としての株式、がそれです。
 1.については、現在では資本の額と発行済株式総数とは必ずしも一致していません。無額面株式を発行している場合は当然ですが、会社が額面株式だけを発行している場合でも、準備金の資本組入(商法二九三条ノ三一項)、株式の利益償却(商法二一ニ条一項)、償還株式の償還(商法二二二条)などがあった時は、資本の額が発行済株式総数より多くなっています。したがって、現在1.の意味で株式という言葉を使うことは、正確ではありません。
 2.の意味での株式は、株式会社の社員たる地位を指します。株式会社においては、細分化された割合的単位でもって株式の所有がなされています。そして、この株式の所有者を一般に株主と呼んでいます。法律はこの割合的単位が均一であることを要求し(商法二〇二条一項)、明確かつ単純化しています。そこで株主平等の原則がでてくるのです。

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 株式会社においては、株主は退社の制度が認められておらず、自己の出資金を回収するためには株式を譲渡しなければなりません。この譲渡を容易にするため、法律は株券という制度を作りました。株主たる地位は株券に表彰されています。そして商法二二五条により、株券の記載事項を一律化し取引の安全を確保しています。
 株式の移転、株主の権利行使には、直接・間接に株券が必要とされています。このように、権利の行使移転に証券を必要とするものは有価証券と認められますから、株券も当然有価証券ということができます。しかし、典型的な有価証券といわれる手形や小切手とは異り、株券発行前でも会社の設立や新株発行により株式は成立しており、遂に実際の株式と株券の記載が昇っていた場合には、株券の記載どおりの効果が発生するものでもありません。
 株主名簿とは、株主および株券に関する事項を記載した帳簿です(商法二二三条)。記名株式の場合には、多数の、また流通により変動する株主に対し、会社に対する権利行使を認め、またこれを促すためには株主の名簿が必要となります。会社は一定の期間、あるいは一定の日をもって株主名簿を閉鎖し、当該基準日現在の株主に対し、利益配当など株主の権利を行使させなければなりません。
 また、会社が株主に通知し、あるいは催告するのは、株主名簿記載の株主の住所または株主から通知された住所に発送すればよく、仮にそれが到達しなくとも到達したものとみなされます(商法二二四条)。
 額面株式とは、定款に一株の金額の定めがあり、かつ株券に券面額が表示されている株式のことをいいます(商法一六六条一項四号二二五号四号)。額面額は株主が出資する金額の基準額となり、その金額は資本に組み入れられます。そのため、額面以下の表示がなされている株券の発行は許されていません。(商法二〇一条三項)。
 しかし、額面額以上で発行することについては何らさしつかえありません。これはプレミア付発行といわれ、額面顧を資本に組入れ、超過顧を資本準備金に組入れることがあります。なお、会社設立に際し発行する価額は、五万円を下ることはできません。
 額面顧は資本に組入れられた顧を示すものであり、決して株式の価値を示すものではありません。そして、額面株の価値は会社自体の経済的価値によって定まります。
 これに対して無額面株式は、株券に券面額の記載がなく、単にその表彰する株式数のみが記載されている株式です。前述のように、額面株式における額面は、かつて少なくともその金額が会社資本金として出資されたという事実を示すだけで、株式の時価とはまぅたく関係ありません。ただ、株式の時価が額面を割ったときには新株の発行が困難となるため、昭和二五年の商法改正に際し、無額面株式の制度が採用されました。しかし、改正からすでに数十年以上経過した現在、無額面株式の制度は日本ではなかなかなじまず、ほとんど普及していないといってよいてしょう。
 なお、額面株式も無額面株式もその内容たる権利はまったく同じで、一株は一株として同じ権利で等価値です。
 無額面株式の発行価値は、会社設立の際は定款で定める最低発行価額以上であることを要しますが(商法一六六条一項七号)、設立後発行する際は自由です。そのときの会社の経営状況に応じた金額で発行できます。発行価額は原則として全額資本に組入れることを要しますが、個別的に発行する場合は資本に組入れない額を法定の制度内で定め、その払込剰余金を資本に組入れることができます(商法二八四条ノニ、二八八条ノニー二号)。
 定款に別段の定めがないかぎり、株主は所有する株式を無額面から額面へ、額面から無額面へ、いずれも転換することを請求できます(商法二一三条)。しかし、無額面株式から額面株式への転換は、券面額に発行数株式総数を掛けたもの以上の資本の額がなければなりません。これは資本充実の原則からの要請です。
 また、会社の側から株主に対して額面株式無額面株式相互間の転換を請求しうるかについては、学説上争われていますが、昭和57年改正商法は、これを認める明文規定を設けました(商法二一三条)。
 株主は株主たる資格に基づく法律関係の保護、つまり、その有する株大数に応じて平等に取扱われる権利を有しています。これを「株主平等の原則」といいます。一般に会社においては、団体における正義衡平の理論に基づいて社員平等の原則が認められていますが、株式会社における株主平等の原則は、とくに重要な意味と特色をもちます。
 まず、株主平等の原則は「株式」の平等を意味します。株式会社の社員(株主)は多数で、かつ出資金という形で結合しているため、その間に人的な信頼関係が薄く、その平等は一人一人ではなく、各株主の有する株成敗に求められるのです。
 したがって、多量の出資者には多数の権利が認められるということになります。
 他方、この原則は多勢の株主の意思決定が多数決で行われることから、多数の横暴を防ぎ、少数あるいは一般株主を保護するための原理としても働きます。このため、株主総会において株主の不平等待遇を定めても無効となります。
 前述したように、各株式の権利は同一とされますが、商法はとくに例外を定めています。すなわち、財蛮的内容に差異がある優先株、後配株、償還株式(商法二二二条)、転換株式(商法二二二条ノニ)などの発行や、共益権について差異のある議決権なき株式(商法二四二条)の発行が認められているのです。会社は定款でこれらの株式を発行できる旨定めて、発行することができます。
 これは、利益配当や投資資金の回収、経営への関与意欲などが投資者によって異なることから、これら投資者の要求に応え、株式投資を容易にするためのものです。
 株式会社においては、株主の個性や相互のつながりは問題となりません。同じ出資金を出してくれるなら、誰が株主でもいいのです。また会社資本の維持充実のため、人的会社のように退社の制度(商法八四条八九条)がなく、株主も存続中の会社から出資の返還を受けることもできません。そこで、商法二〇四粂一項は株式譲渡の自由を規定しています。株主は株式を譲渡することにより、自己の投下資本を回収できます。株式は株券により表彰され、株式の譲渡は株券の交付で行われます(商法二〇五条一項)。そして、株式譲渡が公正に、かつ安全になされるため証券取引所が設けられ、株式が大量に取引されているのです。

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