不法行為の効果

 損害賠償の方法は、ほとんどが金銭賠償によるとききました。しかし、名誉が侵害された場合を考えますと、金銭によって賠償がなされても、ほとんど被害者を救済することにはならないものと思われます。このようたケースの救済方法について、法律はどのような立場をとっているのでしょうか。

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 他人から不法行為をこうむった場合、損害賠償の方法としては、金銭賠償の方法と原状回復の方法があります。ただ、わが国の民法は原則として金銭賠償の方法によるとしています(民法七二二条による同一七条の準用)。
 損害を完全に填補するということからすれば、被害者にとって原状回復がもっとも望ましい方法と考えられます。しかし、原状回復が不可能な場合、あるいは原状回復に多額な費用を要し加害者に酷になる場合も考えられることから、侵害された利益の特有の性質を考慮するより、その金銭的価値を重視することのほうが合理的と考えられたため、金銭賠償が原則とされているわけです。
 名誉の棄損と原状回復は金銭賠償が原則ですが、法律でもって原状の回復を認められている事例があります。名誉棄損についての民法七二三条「名誉を回復するに適当なる処分」がそれです。
 他人から名誉あるいは信用を棄損された場合、損害を金銭に評価することはむずかしく、また金銭賠償がなされても傷つけられた名誉や信用は回復することができません。そこで損害賠償にかえ、または損害賠償とともに名誉・信用を回復するために適当な処分を命じることができます(民法七二三条、不正競争防止法一条ノニ、二項、特許法一〇六条)。
 救済処分の方法としては、新聞への事実の訂正・取消広告の掲載、謝罪広告の掲載、あるいは謝罪文の交付などが考えられます。
 不法行為の制度は、違法な行為から生じた損害の填補を目的とするものです。しかし、被害の内容によっては金銭賠償だけですまない場合も生じます。名誉毀損の発生が予想される図書の販売、あるいは日照・眺望を阻害する建築物の建築などがそれです。したがって、現に行われている不法行為の排除・停止または将来なされるであろう違法行為を予防するため、事前にこれらの行為を排除請求できる場合があります。これを「差止請求」といいます。
 ただ、相手方の故意・過失を必要とする不法行為の原則でもって日照阻害ないしは眺望阻害などの生活妨害を判断することは非常にむずかしいといえるでしょう。なぜなら、通常の社会活動であれば加害者に故意・過失を認めることはほとんどないといえるからです。このため、差止請求できるか否かについては、受忍限度の判断がもっとも重要性の持つことになります。
 不法行為が成立した場合、加害者は加害行為によって生じた損害を賠償しなければなりません。しかし、生じた全部の損害を賠償する必要はなく、加害行為との間に因果関係が認められる損害だけを賠償すればよいとされています。このような因果関係の有無によって、損害賠償の範囲が決定されるわけです。
 それでは、損害の範囲が決まった後、その損害を金銭的に評価する場合、その物の価格はどの時期を基準にするのでしょうか。原則としてはその物を損害せしめた不法行為時、あるいは滅失時の交換価格であるとされています。
 しかし、目的物が滅失・毀損した後に価格が騰貴した、あるいは高い値段で転売することになっていたという特別の事情があり、さらに加害者においてこの特別の事情について予見可能性がある場合は、その価格によって損害賠質の請求ができます。
 歩行者が赤信号を無視し道路を横断しようとして自動車にはねられたような場合、自動車側に過失があるのと同時に、歩行者にも過失が認められます。このようなとき、損害賠償額を決定するについては被害者の過失を考慮しなくては具体的な公平がはかれないのは当然です。そこで被害者の過失を考え、加害者の賠償額を減額するわけですが、これを「過失相殺」といいます(民法七二二条二項)。
 ちなみに、過失相殺を判断する場合の過失とは、民法七〇九条でいう過失とは異なり、被害者の責任能力は不必要で、単なる不注意があれば過失相殺が認められると解されています。
 一方で損害を受けながら、他方で支出すべき費用の支出をまぬがれ利益を受けているような場合、この利益を損害額から控除して賠償額を決めることを「損益相殺」といいます。
 例えば、加害者の不法行為により被害者が死亡した場合、その相読者は被害者が生存したのであれば得られたであろう利益を賠償請求することができます。しかし、このような逸失利益を算定する場合、得べかりし利益から生存中要する生活費を控除することで公平をはかっているわけです。ただし、生命保険金、恩給、香典、見舞金は損害から控除されません。
 損害賠償を請求できるのは誰か、被害者本人は当然のことです。ただし、それが未成年者や禁治産者の場合は、法定代理人が代わって請求します。また準禁治産者が訴訟を通七て損害賠償を請求する場合は、保佐人の同意を必要とします。
 被害者本人が死亡した場合は、本人の賠償請求権は相続人に承継されます。なお、生命・身体侵害などについては、遺族の固有の利益の侵害として賠償請求できる場合があります。
 胎児も損害賠償請求権に関していえば、「既二生レタルモノト看倣」される(民法七二一条)ので、胎児である間に父親を殺害されたり、母体への影響により侵害を受けた場合(薬害・公害など)には、賠償請求権を取得できます。ただし、胎児のための法定代理人はありませんので、出生までは母親も胎児のための賠償請求権は行使できません(大審院判決・昭和7・10・6)。
 法人も自然人と同様に、損害賠償を請求できますが、精神的損害の賠償請求については、法人にそのような損害が生じるとはいえないという見方もあります。しかし判例(最高裁判決・昭和39・1・28)は、法人の「無形の損害」について賠償を認めています。なお、権利能力のない社団・財団も、法人と同様の実体をもつ場合は、賠償請求権者として認められます。

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