特殊の不法行為責任

 未成年者や精神病患者が他人に違法に損害を加えた場合、その者に責任能力がなければ前述したように賠償責任を負いません。そこで、これらの者を監督すべき決定の義務がある人、あるいは法定の監督義務者に代ってこれらの者を監督する代理監督者の責任が問題になってくるわけです。
 責任無能力者を監督する立場にいる者は、監督義務を怠らなかったことを立証できなかった場合、責任無能力者が第三者に加えた損害について賠償しなくてはなりません(民法七一四条)。
 ちなみに、監督者に責任が生じるためには、責任無能力者の加害行為が一般的な不法行為の要件を備えている必要があります。

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 監督者の責任は、監督義務を怠ったために発生するものです。一般の不法行為責任は自己の故意・過失に基づく加害行為から生じるものですが、監督者の責任は加害行為自体に故意・過失がなくても生じます。
 過失責任主義は加害行為自体に過失がなければ責任を負わないということですから、この意味では監督者の責任は、一種の無過失責任といえます。しかし、監督義務を怠ることを必要とする点ではこの責任も絶対的な無過失とはいえません。そこで、監督者の責任を「中間責任」と呼んでいます。
 監督者の責任を負担する法廷の監督義務者とは、未成年者については親権者、親権代行者、後見人、そして禁治産者については後見人、精神障害者については、精神衛生法で保護義前者と定められている人たちです。
 なお、法定の監督義務者に代って監督する者とは、託児所・保育所・幼稚園の保母、小学校の先生、精神病院の医者、少年院の職員などで、これらの人たちは契約または法律によって法定の監督義務者に代って責任無能力者を託されています。
 ある仕事を行うために他人を使用し、その人を実質的に指揮監督している使用者は、その人の行為について責任を負わされています。例えば、その雇用されている人が仕事を行うに際し、第三者に対して違法に損害を与えた場合、使用者は選任・監督について注意を怠らなかったことを立証できなければ、その人が第三者に加えた損害を賠償しなくてはなりません(民法七一五条)。
 使用者責任が生じるためには、被用者の責任能力も含めて、一般的な不法行為の要件を備えている必要があります。そして、責任無能力者の場合と異なり、その行為者である被用者も民法七〇九条で損害賠償の責任を負い、使用者は重畳的に民法七一五条で損害賠償の責任を負うことになります。
 使用者責任は、前で述べた監督者の責任と同様、加害行為自体に故意・過失がなくても生じるものです。ただ選任・監督についての注意を怠ったことを必要とする点で、絶対的な無過失責任とはいえず、一種の「中間責任」といえます。もっとも、使用者の免責がほとんど認められていないことを考えると、実際上は無過失責任に近くなっているといえます。
 使用者責任の根拠は、他人を使用することにより自己の活動領域を拡げ、利益を収める可能性が増大している以上、それにともなって生ずる損害もまた負担すべきであるとする「報償責任」の原理です。
 使用者責任は、当然のことながら使用者が負うことになります。ただ、このほかに「使用者に代りて事業を監督する者」つまり工場長、現場監督、支店長など、使用者に代って被用者を選任・監督する代理監督者も責任の負担者となります。
 それでは、社長のように会社において代表権限を有している者の取扱いはどうなるのでしょうか。社長の行為はすなわち法人の行為となり、必ずしも社長が使用者に代る代理監督者とはいいがたい面があります。しかし、現実に選任・監督を担当した場合に限って、社長も代理監督者として責任を負うとされています。
 他人に損害を与える危険性をもった瑕疵ある工作を管理・所有している人は、その危険から生じた損害については、賠償責任を負わなければなりません。
 なお工作物の瑕疵とは、橋を例にとれば、その設計・建設及びその後の維持・管理などに不完全な点があるということです。つまり、橋が通常備えていなければならない安全性に欠ける点があった場合、その設置や管理に瑕疵があったといいます。
 現代のように高度に産業・技術が発展した社会においては、工場の機械設備、電気・ガス・原子力関係の巨大設備などの施設が多数の人々に損害を与える危険性をはらんでいます。工作物責任は、このような近代的企業の施設が有している危険による損害について適用される余地もあります。
 工作物責任の成立要件としては、土地の工作物によること 土地の工作物の設置・保存に瑕疵があること、占有者については免責事由のかいこと(民法七一七条一項)の三つがあげられます。
 土地の工作物とは、建物、崖の土止め用の壁、石垣、道路、橋、濯漑排水設備、高圧電柱など、土池に接着して人工的につくり出されたあらゆる設備のことをいいます。
 また土地の工作物の設置・保存の瑕疵とは、高圧電柱が腐っていたり、保安設備が不完全であるように、その種の工作物として通常そなえるべき安全な性状ないし設備を欠いているということです。なお、占有者は損害防止のための必要な注意をしていた場合に限り免責されます。
 工作物責任の責任者については、損害の発生を防ぐためにも直接の関係をもつ者に責任を負担させることがもっとも合理的だと考えられます。このため、工作物の占有者が第一に責任を負うとの判断がなされているわけです。工作物を直接に占有する者だけではなく、この場合、賃貸人のような間接占有者も含まれます。
 占有者が免責事由を証明した場合には、第二次的に所有者が責任を負わなければなりません。実際には、土地の工作物の占有者の多くは所有者ですから、責任は所有者に集中し、この場合、免責事由の適用はありません。不完全な工事をした請負人のように瑕疵を生じたことについて責任のある人については、賠償を支払った占有者または所有者はこの者に対して求償することができます(民法七一七条三項)。

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