損害賠償とは何か

 損害賠償とは、例えば、他人をナイフで傷つけ負傷させた場合、負傷した人は治療費の支出を余儀なくされ、さらに精神的な苦痛も受けます。また、その傷が原因で、被害者が死亡すれば、将来得られたであろう収入を失うなど多大の財産的な損害を受けることにもなります。
 あるいは、不動産業者から土地・建物を購入したところ、建物に構造上の欠陥があり、漏水などのため畳その他の家具が使えなくなるなどの損害を受けることがあります。
 以上の例のように、相手方の違法な行為や契約違反のため損害を受けた人は、相手方に対して損害を賠償することを請求できます。これを損害賠償といいます

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 損害賠償には、大きく分けて、違法な行為、すなわち不法行為によるものと契約違反、すなわち債務不履行によるものとがあります。
 しかし、どのような場合に(これを要件といいます)、誰に対して、どれだけの範囲の賠償が請求できるか(これを効果といいます)は、これに関連する民法の条文のほか、民法以外のいくつかの法律をみないと正しい結論は出せません。
 また、ある違法な行為がなされた場合、加害者には二つの責任が追及されます。民事上の責任(損害賠償)と刑事責任です。
 損害賠償は加害者と被害者という私人間の関係において、損害の公平な処理をはかることによって被害者を救済することを目的としています。
 刑事責任は国家対国民の関係において、国家的見地から社会の秩序をはかるためのもので、反倫理的行為に対し、制裁を加えることによって犯罪者への応報として、将来の犯罪の発生を予防し、犯罪者を矯正することを目的としています。
 損害賠償と似たものに損失補償があります。その違いは、損害賠償が他人の違法な行為によって生じた損害の填補であるのに対して、損失補償は土地収用法による土地の収用など、法律上認められた適法な行為によって生じた特別な犠牲、不利益の填補をいいます。
 一口に損害賠償といっても、商法とか刑法というように、損害賠償法という名前の一つの法律があるわけではありません。
 損害賠償を認めるか否かの判断基準となるものは、民法の原則的な諸規定やいくつかの特別法であり、さらにこれら諸法規に基づく一連の判例法であります。そしてこれらの諸法規や判例法の根底に流れる思想原理は、「生じた損害の負担をその原因と行為者の責任に応じて、公平かつ合理的に分担させる」ということに尽きます。
 損害賠償の制度は、不法行為であれ債務不履行であれ、近代社会における民事上の紛争解決の一大原則であります。この損害賠償制度がどの程度確率されているか、またどの程度合理的に運用されているかが、その社会の近代化のバロメーターなっているといっても過言ではありません。
 契約の不履行(債務不履行)と不法行為は、損害賠償責任を発生させる点では共通していますが、債務不履行責任は、賃貸人と賃借人(賃貸借契約)、売主と買主(売買契約)、委任者と受任者(委任契約)などの契約という一定の信頼関係にある者同士の間で生じる責任をいいます。一方、不法行為責任は、そのような特別の契約関係を前提としない者の間で発生します。この点からみると、相手方の期待を裏切り、利益を侵害する程度は、不法行為より債務不履行のほうが高いといえます。
 このような理由から、不法行為では被害者側で加害者側の故意・過失を立証することを要件とします(七〇九条)が、債務不履行においては、遂に債務者側(加害者側)において、故意・過失など自ら「責に帰すべき事由に因らないこと」を立証しなければ、民事上の賠償責任を回避できないことになっています(四一五条)。
 例えば、ある品物を預かっている人が、不注意でその品物を失くしたという場合、預けた人は預かっていた人に対して、契約関係にあるから、契約責任(債務不履行責任)を追及できることはもちろんだが、過失による不法行為責任の追及を特に否定される理由はなく、どちらの責任の追及するかは被害者側の自由であると解する。これを請求権競合説といいます。
 これに対して、法条競合説とは、契約関係のある場合は、契約責任のみを問題とすればよく、不法行為責任の発生を考える余地はないというものです。二つの責任は、法律の条文上では形式上競合しているように見えるだけで、実質上は請求権の競合はないという解釈です。
 民法の基本の一つに「自分の生活関係は自分の自由な意思で決定することができる」という私的自治の原則があります。この原則に対応して「自分の意思活動に基づかないことに対しては責任を負わなくてもよい」という過失責任主義の原則があります。
 つまり、契約責任においては「債務者の責に帰すべき事由」がなくては債務者に対し債務不履行に基づく賠償責任を追及できない(民法四一五条)、また、不法行為責任においても、行為者に故意あるいは過失がなくては不法行為に基づく賠償責任を追及できない(民法七〇九条)等々、これが過失責任主義の原則といわれるものです。
 過失責任主義のもとでは、人にいかなる損害・害悪を加えても、過失がない限り責任を負わされることはありません。しかし、社会が発展し、工業が進歩した現代においては、他人に損害を与えながら一方では多大な利益をあげる企業が多数あらわれるようになり、過失がないからといってこのような企業が責任を負わないことは不合理ではないか、とする批判が生じました。その結果、民法の過失責任主義の原則を修正し、無過失責任主義に立つ鉱業法一〇九条、原子力損害の賠償に関する法律三条、独占禁止法二五条などの立法が成立し、無過失責任主義が導入されるようになりました。
 民法で規定されている責任無能力者の監督者の責任(七一四条)、使用者責任(七一五条)、動物占有者の責任(七一八条)は、過失の要件を多少緩和したものとされ、さらに土地の工作物の所有者の責任(七一七条)は、無過失責任を認めたものとされています。無過失責任論の影響で判例上これらの規定はさらに弾力的に解釈され、過失に関する挙証責任の転換により、過失責任主義の原則の欠陥を事実上是正していくような勢いにあります。

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