通行地役権の時効取得

 私の家族はもう長い間にわたって(二〇年以上)、隣家の端の土地(幅一メートルくらい)を通行してきました。公道に出る通路は別にあるのですが、ひどく不便で、いつも勝手口からのその道を使用させてもらっています。ところが、最近になって、隣家が家の増築のため、その道を閉鎖するといってきました。聞くところによると、通行地役権の時効取得という制度があるそうですが、私どもの場合はどうなるでしょうか。

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 通行地役権の時効取得の要件は、次の二点です。
 (1)二〇年以上平穏・公然に通行してきたこと、あるいは一〇年以上平穏・公然に通行し、かつ自分に通行地役権があると信じ、その信じることについて過失がないこと(民法一六三条)。
 (2)時効によって取得される地役権は継続かつ表現(外部から認識できる)のものに限る(民法二八三条)。「継続かつ表現」の要件に限ったのは、好意的な黙認による通行までを時効取得の基礎とするのは担当ではたいと考えられるからです。
 ここでもっとも問題となるのは、それが継続のものであるかどうかという点です。
 ここにいう「継続」とは、連続して権利の内容が実現されている状態を意味します。
 これまでの裁判所の考え方は、通行地役権が継続のものであるためには、通路が開設されていること、その通路が要役地の所有者によって開設されたものであることを必要とする。というものです(最高裁判決・昭和30・12・26)。
 これに対して、多くの学説は、通路が開設されていれば、要役地所有者が開設した場合でなくても、要役所有者が自分の費用と労力でその通路を維持管理をしており、通路に対する通行支配が確立していると認められれば、「継続」の要件が満されるという考えを主張しています。
 ところで、通路を開設するということは、一般に、通路に砂利を敷いたり、舗装にしたりすることをさしますが、近年、その要件もしだいに緩和される傾向にあるようです。
 もっとも学説の主張するような事情があっても、契約あるいは近隣の付き合いという意味での受忍で通行が許されているときには、時効取得はできません。
 ところで事例の質問のように、すでに二〇年以上も通行しているというなら、時効取得に必要な期間および、通行の事実(表現)の点からは要件は満されていますが、もう一つの要件である「継続」について問題が生じます。つまり、隣家(要役地所有者)のはしの土地を通行して公道に出ていたということは、通路開設があったと判断するのはとうてい無理で、かりに通路があったとしても、隣家自身で開設したわけではなく、隣家が好意的に許していたと考えるのが妥当です。この場合は、通行地役権の時効取得は否定されることにたります。
 また、土地の賃借人は通行地役権を時効取得することはできません。(大審院判決・昭和2・4・22)。
 通行地役権は契約によっても取得することができます。この設定契約を結ぶときは、なるべく書面にして後日のために残しておくようにします。
 契約の当事者は、原則として承役地および要役地の所有者です。土地の賃借人については、判例はこれを否定しています。
 「賃借人は契約によって通行地役権を取得することはできない」(東京地裁。判決・昭和28・2・4)。
 学説では、これを肯定する意見もあります。
 契約に際しては、できたら図面を作成し、承役地および要役地の範囲を明確に特定するようにします。
 地役権の対価ですが、判例は「地役権は無償で、対価の支払約束は地役権の内容とならない」(大審院判決・昭和12・3・10)としていますが、現実には、そういうわけにもいかず、有償である場合が多いようです。当事者で諸般の事情を考慮に入れて決めることになります。

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