改築における通行権

 私の家はいわゆる袋地で、現在、隣家の一・七メートル幅の通路を通行させてもらっています。今回、子供の勉強部屋などを増築しようと思い、建築確認の申請を行ったところ、建築基準法により通路幅が不適合とされました。こうした場合、隣家に通路幅を拡げてもらうことはできないでしょうか。

スポンサーリンク

 都市計画区域内において建築を行う場合、建物の敷地は、消防・避難などを考えて、原則として幅員四メートル以上を有する道路に二メートル以上接していなければならないとされています(建築基準法四三条一項)。さらに、都道府県や市町村の建築安全条例でも、これについて必要な制限を加えることができます。
 もし建築基準法や条例に定める基準に当該の建築工事が適合しないときは、建築の確認は得られないことになります。
 こうしたことから、事例のように袋地の所有者は、家などを建築、増改築するためには、どうしても敷地に接する道路の幅が四メートル以上あることが必要になるわけです。そこで、袋地の所有者は、囲繞地(通路)の所有者に対して、囲繞地通行権に基づく幅員の拡張を主張できるかどうかが問題となります。
 この問題に関しては、裁判所の考えは一定していません。増築するについて、建築基準法上必要というにすぎないから、囲繞地通行権そのものの問題ではないとした最高裁判決(昭和37・3・15)がありますが、これは、ダンス教室とアパートを増築する場合での訴訟例であり、一般的にはあまり参考になりません。
 しかし、日常生活においてどうしても必要な増改築が、建築基準法などに適合しないからといって認められないのでは、袋地所有者の人権問題として見逃すことはできないでしょう。こうしたことから、できる限り建築に必要な幅員の通路を設置する通行権を認めようという学説が近年になって、強くなり、この学説にしたがった下級審の判決もでるようになりました。
 「建築基準法も他の民法規定の事項に加えて幅員決定の要素の一つとすることができる(甲府地裁判決・昭和38・7・18、東京地裁判決・昭和39・2・1)。一般的には、朽ちかけた家を改装する場合などには、建築申請が通るだけの通路の幅員を主張することは認めてもよいでしょう。
 しかし、いくら幅員の拡張が認められるべきだとしても、それによって、囲繞地の所有者の権利を侵害するわけですから、所有者が受忍すべき範囲は慎重に決められなくてはなりません。
 囲繞地通行権(袋地通行権)があるからといって、囲繞地のどこを通行しても、またどんな方法で通行してもかまわないというわけではありません。
 この通行権は、囲繞地所有者に不利益を強いるものでありますから、通行権者にとって必要な限度で、かつ、囲繞地のために損害がもっとも少ない場所や方法を選ばなければなりません(民法二一一条一項)。
 これは、囲繞地通行権が袋地の有効な利用を図るために認められている一方、囲繞地所有者による通行の受忍の上に成り立っているからです。ですから、その通行には一定の限度がおのずと生じてくるわけです。
 通行権があっても、通路がなければ不便です。囲繞地所有者の庭を通ればよいというわけにもいきません。そごで、通行権者は通路を開設することができます(民法二一一条二項)。その費用は通行権者が負担します。必要に応じて、砂利を敷いたり、障害物を除いたりすることができます。もし、その場所や範囲などについて囲繞地所有者と争いが生じたら、裁判所に「通行権確認の訴」を起こし、通路を確認します。
 通路幅員についても問題が多いようです。原則としては、袋地利用のための必要最小限の幅員ということになります。もっとも、通行地役権や賃貸借の契約に基づく場合には、幅員は契約によることになります。
 判例などで決定された囲繞地通行権の幅員は、一〜ニメートル前後が多く、それよりも広い幅員は、既存の通路の場合がほとんどです。
 通行権者は、通行する囲繞地の損害に対して償金を支払わなければなりません。なぜなら、囲繞地を通行することは、その所有者にいろいろな損害を与えるからです。
 ただ一部譲渡や共有地分割によって生じる袋地の場合は無償で通行できます。
 償金には二種類あり、通路開設のために生じた損害に対するものと、その他(通行料など)のものです。前者は一括して支払う必要がありますが、後者は一年ごとに支払うことも可能です。
 なお、通行権者がこの償金を支払わなかった場合、その通行を拒否できるかという問題が生じます。やはり、拒否できないと考えるのが一般的でしょう。通行権者が変ったときは、当然、その人が償金を支払うことになります。

冠婚葬祭
借地借家と法律/ 賃貸借契約の実際/ 借地・借家の期間・更新/ 貸主借主の交替/ 賃料の決定と値上げ/ 借地・借家権の消滅原因/ 売場・店舗の賃貸/ 社宅契約と立退/ 借地・借家権の相続/ 借地・借家紛争の解決/ 不動産取引の基礎知識/ 売買契約を結ぶ前に/ 売買物件の調査及びその価格評価/ 契約書の作成/ 売買契約の締結/ 特殊な不動産の売買/ 分譲マンション/ 分譲マンション購入の事前調査/ マンションの売買契約の締結/ マンションの所有関係/ 欠陥マンションの問題/ マンション管理の法律/ 管理組合と規約/ 共用部分の管理/ 公営・公団住宅/ 公営住宅の申込み/ 公団住宅の申込から入居/ 公営住宅の相談/ 公団住宅の相談/ 新築・増改築の手続き/ 新築プラン/ 建築請負契約の締結/ 工事紛争の解決法/ 宅地に対する規制/ 家に対する規制/ 住宅ローン/ 住宅ローンの利用手続き/ 住宅ローン相談/ 区画整理とその対策/ 土地収用とその対策/ 不動産取引業者の知識/ 登記の効力/ 登記の手続き/ いろいろな登記の実際/ 身近な紛争の解決/ 境界の問題/ 越境したままの建物/ 建築中の越境建物/ 公図と境界が違っている/ 公図は正確か/ 隣りの庭木の枝や根が越境している場合/ 塀の設置について/ 塀の保存と修繕の費用/ 境界の土留工事の費用/ 道路の問題/ 改築における通行権/ 通行地役権の時効取得/ 民法と建築基準法の規定/

        copyrght(c).冠婚葬祭専科.all rights reserved

スポンサーリンク