境界の土留工事の費用

 隣りと私の家の境界は、約一メートルの段差になっています。段差の部分は土がむき出しになっており、土留工事はしていません。大雨が降ると崩れそうで心配でなりませんが、その費用は誰が負担しなければなりませんでしょうか。

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 日本では傾斜地を利用する家も少なくありません。それだけに、傾斜地の土留工事に関するトラブルもけっこう多いようです。
 ところで、傾斜地の土留工事については、前述の境界標や塀などの設置と違い、民法には特別の定めがありません。そこで、土留工事は、原則として傾斜地の所有者が費用を負担することになります。
 この場合、次の二つのケースについて対策を考えておく必要があります。
(1)崖上の土地及び傾斜地が同一の所有者
 この場合は、崖の土地の所有者が、その土地内に土留の工事を行うことになります。崖下の人に工事の了解を得る必要はなく、また、工事のためにその土地内に立入り、使用することを要求することができます(民法二〇九条)。
 崖崩れなどの危険を防止してやったのだから、崖下の人に工事費用の分担を求めてもよさそうなものですが、そうはいきません。というのは、崖下の人は、崖上の人に対して、崖崩れなどがおこりそうなときは、土留めの工事を請求することができますし、また、崖が崩れてきたときは、崩れてきた土砂を取除くことを崖上の人に請求することができ、また被害があれば、損害賠償を請求することもできるからです。こうした場合は、費用は崖上の人が負担しなければならないとされています。
 しかし、傾斜地がほとんど垂直である場合とか、土留工事が崖下の人に大きな利益をもたらす場合などには、前述の境界標や塀などと同じように考えて、その費用を分担してもらってもよいという判例もあります。(東京高裁判決・昭和51・4・28)
(2)崖下の土地及び傾斜地が同一の所有者
 崖下の人が土留工事をするのは、自分の所有地内ですので自由にできることはいうまでもありません。この際の費用は屋下の人の負担となります。
 また、崖が崩れそうで危険だという場合には、屋上の人は崖下の人に対して、土留の工事を請求することができ、その費用は崖下の人の負担となります。また、崖崩れで、損害があった場合は、崖下の人に対して損害賠償を請求することができます。
 次に、崖上の人が傾斜地を利用して家を増築したいという場合などは、人の土地を自分のために利用するわけですから、崖下の傾斜地所有者の承諾を得なければなりません。費用も原則として全額負担で、場合によっては、相当の賃借料を支払うことになるでしょう。
 以上のように、傾斜地の土留工事は、原則としてその所有者が負担することになるわけですが、最近では、その工事が崖下、崖上両方にとって利益となるようなときは、その費用は共同の負担とすべきだという考え方も出てきており、注意を要します。

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