身近な紛争の解決

 最近、人々の権利意識が強くなっているところに、生活環境の変化、特に住宅環境の悪化がともなって、隣り近所のトラブルが急増し、また、その内容も複雑になってきています。
 例えば、隣りとの境界、道路の問題から、団地・マンションなどにおけるさまざまな紛争、そして公害や日照権などの問題まで、現代の私たちのまわりには、さまざまなトラブルが頻発しています。

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 ひと昔前までは、隣りのピアノが少々うるさくても、隣人はがまんしたものです。しかし、最近では、それががまんすべき限度を超えていたら、びしびしと抗議するのが普通のこととなっています。日照権や電波の問題にしても同様でしょう。それほど市民の権利意識は変化しているわけです。
 ところで、昭和49年8月28日、神奈川県平塚市の団地で衝撃的な事件が超こりました。ピアノ殺人事件です。階下のピアノの音がうるさいというのが、この殺人事件の動機でした。犯人は偏執病患者でしたが、それにしても、ピアノの騒音という、私たちの日常にいつもあるトラブルが殺人事件を超こす引き金になったということは、同じ団地やマンションに住む人々にとって大きなショックでした。
 この事件はある一面で、騒音(ピアノを持っている人・加害者)トラブル(騒音に困る人・被害者)事件(被害者が加害者になる)といった図式になっており、いつのまにか加害者が被害者になり、被害者が加害者になっているという、現代のトラブルの複雑難解さを物語っているようです。
 とにかく、隣り近所とうまく付き合うには、お互いが納得し合うのが一番です。そのためには、トラブルを法という物差しで解決することが大事です。法律は合理的ですから、被害者が泣きをみることもありません。その法律の中心となるのが民法の相隣関係です。ここでは、隣り近所の法律関係を中心にして、身近なトラブルの解決法を説明していきたいと思います。
 隣り近所のさまざまなトラブルを解決する法律は、おおよそ次の三つの場合に分けることができます。
(1)相隣関係 - 民法二〇九〜二三八条、建物の区分所有等に関する法律
 民法に規定された相隣関係は、「所有権ノ限界」という項目にでてきます。これは、隣接する土地・建物の所有権ないし使用権について、相互の利用の調整を図る目的で規定されています。近隣のトラブル解決の中心となるものです。
 この中で、主なものをあげてみますと、隣地使用に関するもの、隣地通行に関するもの、水に関する相隣関係、境界、塀に関するもの、竹木に関するもの、工作物建造に関するもの、などです。
 また、「建物の区分所有等に関する法律」は、団地やマンションなど集合住宅の区分所有者間の利用調整を図るもので、民法二〇八条を削除して、昭和37年に制定された法律です。
 騒音、振動、臭気や、日照、通風などの侵害による日常生活の妨害については、建築基準法、騒音規制法など、公法で規定されているものもあれば、規定されていないものもあります。ただ、そうした生活妨害については、差止請求、損害賠償請求などが問題となってきます。
 近所の人に悪い噂を立てられたとか、プライバシーを犯されたとか、火事にあったとか、子供同士でけんかしたとかいう場合が、このケースにあたります。不法行為とは、’故意または過失によって、違法に他人の権利・利益を侵害し、損害を与える行為です。
 この場合は、民法、刑法などの規程を適用することになります。民事責任としては、不法行為による損害賠償などがあり、刑事責任としては、刑法、軽犯罪法違反などに問われることになります。
 紛争が生じてしまった場合、まずお互いに話し合うことを心がけることが大事です。話し合いでは、まず、トラブルの原因をはっきりさせ、自分の意見だけを主張せず、相手の主張にも耳を傾けてみることです。
 しかし、当事者の話し合いでは、複雑な感情問題もあって、うまくいかないのが世の常です。その場合は、利害関係のない社会的に信用のおける人に間に入ってもらい、話し合うのも一つの方法です。また、市区町村の生活相談や法律相談に話を持ち込み、第三者の目でトラブルをみてもらうことが大切です。
 弁護士というと、しり込みする人が多いようですが、病気をしたら病院へいくように、何かトラブルがあって、話し合いで解決がつかないようでしたら、弁護士事務所の門をたたいてみるのも一つの方法です。
 弁護士にお互いの話を聞いてもらうより、争点が明確になり、意外に早く解決策がみつかる場合も少なくありません。相談料は一時間五〇〇〇〜一万円ぐらいですので、後々、訴訟沙汰になるよりはずっとましです。
 お互いの話し合いでどうしても解決がつかない場合は、訴訟に持ち込む前に、裁判所に調停を申立てる方法があります。調停は、話し合いにより、お互いに譲り合い、自主的に合意し、円満な解決を図るもので、これが成立しますと、判決と同じ効力を持ちます。
 話し合いでも、調停でもうまく解決できない場合は、裁判所へ訴え出て決着をつけることになります。近隣関係のトラブルは、感情的なもつれなどもあり、意外と裁判にまで発展する場合が多いものです。
 また、訴訟に付随して、仮処分の申請が必要になる場合もあります。例えば、日照権の阻害や通行の妨害がある場合は、判決が出るまでの間、その侵害物(建築工事、通行妨害)の禁止や除去の措置が必要です。これが仮処分の申立てです。

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