いろいろな登記の実際

 不動産登記の種類としては、不登法一条に掲げる権利の「設定」「保存」「移転」「変更」「処分ノ制限」「消滅」があり、きらに同法二条の仮登記もありますから、これらの権利の種類とその変動の態様の組合せによりぼう大なものになります。しかし、一般的なものとしては、以下の典型的八種類の事例が大半を占めているのが実情です。

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 建物を新築した場合には、一ヵ月以内に建物の表示の登記の申請をしなければなりません(不登法九三条一項)。この登記をしないまま分譲業者から買受けた場合には、買受人もその申請義務を負います(同条二項)。この登記は、所有者が所有権の保存登記をする(第三者に対して対抗力を得る)ためにも、前提として必ずしなければならないものです。
 添付書類の「建物図面」「各階平面図」は、専門的な技術を要し、かつ、登記所で登記簿の附属書類として永年保存される重要な図面ですから、一般的には、申諸手続を土地家屋調査士に委任する場合が多いようです。「所有権証明書」の具体的な例としては、建築基準法による確認済及び検査済証、建築請負人または敷地所有者の証明書(印鑑証明書も必要)、分譲住宅などの場合には業者の譲渡証明書などがあります。登録免許税は不要です。
 なお、マンションを新築した場合の登記手続きは、まず、原始取得者である分譲業者が、一棟の建物に属する全部の専有部分について、一括して区分建物の表示の登記の申請をしなければなりません(不登法九三条三項但書、同九三条の二の一項)。そして、マンションの譲受人のための登記はその後に後述のような所有権保存又は移転の登記手続きによってされることになります。区分建物の表示の登記の申請書には、敷地権(マンションの登記簿の見方参照)があるときはその表示をも記載しなければならないし、また、添付書類としては、前述した図面、所有権証明書のほか敷地及び敷地権の内容に関する規約をも添付しなければなりません(不登法九三条の三各項参照)
 土地の一部を他人に譲り渡す場合などには、所有者はその前提として、その土地を分筆しておかなければなりません。「分筆」の登記とは、土地の登記簿上一筆の土地とされているものを二以上の土地に分割する登記です。分筆の登記は、原則として土地所有者の自由な意思でされるものですから申請義務はありません(不登法ハー条ノニの一項)。共有の土地の場合には、共有者全員で申請しなければなりません。
 添付書類の「地積測量図」は、分割された土地を実際に測量した上、作図しなければなりません。求積方法はもちろん、縮尺・方位など作成方法も厳格に規定されており、後日の土地の境界争いなどの粉争を避ける意味でも、専門家である土地家屋調査士に依頼すべきでしょう。その他、その土地に抵当権の登記がある場合には、「共同担保目録」などの添付を必要とすることがありますので、注意すべきです。
 土地または建物について、所有者が自己の所有権を第三者に主張できるようにするため、はじめてされる登記を所有権の保存登記という。この登記の申請人は、自己名義で表示の登記をして登記簿の表題部に所有者として記載されている者、またはその者の相続人が原則とされています(不登決一〇〇条一項一号)。
 したがって、その意味でも所有権の登記をするためにはまず不動産の表示の登記を申請する必要があるわけです。
 添付書類としては、「申請書副本」と「住所証明書」(住氏票の写し・会社の登記簿謄本など)であり、特に説明を要するほどのものはありませんが、相続人から申請する場合には、相続を証する書面の添付が必要です。
 登録免許税は、課税価格の一〇〇〇分の六ですが、課税価格とすべき固定資産評価額が新築後間もないため未定であるものについては、登記所の認定によることになるので、その基準を登記所に問合せて下さい。
 なお、自己の住宅として新築した場合には、税率が軽減される場合があります(租税特別措既決七二条)。
 次に、マンションの所有権保存登記の手続きについては、大きな特則があります。すなわち、所有権保存の登記は、表題部に記載された所有者からの申請によってなされるのが原則であるが、昭和59年1月1日施行の改正法は、その特則として、区分建物に限って表題部に記載された所有者(通常は分譲会社)から直接買受けた者も保存の登記をすることができることとした(不登法一〇〇条二項)。その場合には、申請人が表題部に記載された所有者から直接所有権を取得したことを証する書面をも添付する必要があり、さらに、その区分建物の表題部に敷地権の登記がある場合には、敷地権(持分)を区分建物と一体的に譲受けたものであることを証する敷地の登記名義人(通常は分譲会社)の承諸寄をも添付する必要があります(不登法一〇一条五項)。その場合には、もちろん敷地の持分の移転登記を別途する必要がなく、区分建物の保存登記は敷地の持分の移転の効力も合せて有することになります(不登法一一〇条の一五)。
 登記上の名義人(被相続人)が死亡したため、相続が開始したときは、相続人から相続による所有権の移転登記をすることになります(不登法二七条)相続人が一人の場合は問題がありませんが、数人の場合には、1.相続人全員が法定の相続分に応じて相続した場合には、全員の名義で(申請手続きは、相続人の一人から全員のためにすることもできます)2.遺産分割した場合、または相続の放棄をした者、特別受益者(民法九〇三条二項)などがある場合には、その結果、当該不動産を取得することとなった相続人のみで登記の申請をすることになります。
 添付書類中「相続証明書」とは、被相続人の死亡(相続開始)の事実、及びその相続人は誰か(相続分はいくらか)を証明する書面をいいます(不登法四一条)。
 1.の法定相続の場合には、被相続人の過去から死亡時までの身分事項が記載されている戸籍、除籍謄本および相続人の戸籍謄本等を添付し、法定相続人(相続分)によります。
 2.の場合には、さらに、遺産分割協議書相続分不存在証明書(いずれも印鑑証明書も添付する)または相続放棄受理証明書(家庭裁判所発行)等を加えたものになります。
 共同相続の場合は、必ず申請書にその持分の記載をしなければなりませんので、注意を要します。
 登録免許税は、課税価格(固定資産評価額の一〇〇〇分の六です。)
 不動産登記制度の中でもっとも重要でかつ一般的なものが売買による所有権の移転登記です。売主である登記義務者と買主である登記権利者の共同申請により登記をしますが、売主が登記手続きに協力しない場合には、買主が原告となって訴を提起し、「被告(売主)は何市何町何番の土地につき、原告に対して平成何年何月何日売買を原因として所有逢移転登記手続きをせよ」との判決を得て、その判決正本を添付して買主が単独で申請することもできます(不登法二七条)。
 添付書類中「登記済証」「印鑑証明書」は、共同申請の場合に売主の意思を確認する意味でもっとも重要なものであり、登記済証が滅失して添付できない場合には、「保証書」を必ず添付しなければなりません。保証書を添付した場合には、直ちに登記されず、登記所からいったん売主あてに当該申請が間違いないか通知し、これに対して売主から一定期間内に登記所に間違いない旨の申出があったときに改めて受理、登記されることになっています(不登法四四条ノニ)。
 したがって、その間に売主が他人に二重譲渡し、本来の登記済証を添付して、その者の登記が完了してしまうと、保証書で申請した登記は却下となりますので、登記済証を持っていないという売主との取引きは、十分注意する必要があります。
 これらの注意点は、贈与などによる所有権の移転登記の場合でも共通することです。
 登録免許税は、課税価額(固定資産評価価額)の一〇〇〇分の五〇(贈与は一〇〇〇分の二五)ですが、自己の住宅とするための建物の所有権移転登記については、租税特別措脱法七三条等の規定により税率が軽減される場合がありますので注意を要します。
 所有権の登記名義人が住所移転した場合の例ですが、法人の場合には本店移転を登記の原因とします。婚姻、離婚などによって氏名が変更した場合にも、このような方法で登記名義人の表示変更登記をします。このように、登記名義人の表示(住所・氏名または本店、商号)が変更したにもかかわらず、その登記をしないと、その後に当該不動産を売り渡す場合や、抵当権の設定登記をする場合のように、その者が登記義務者として登記手続きをする際は、その同一人の認定がつきませんから却下されることになります(不登法四九条六号)。
 添付書類の「変更証明書」としては、住所変更の場合には、住民票の写しなど、会社の本店移転の場合には会社の登記簿謄本、氏名の変更については戸籍謄本、住民票の写しなどです。
 金銭消費貸借などによる債権を担保するために、不動産を目的として抵当権を設定した場合には、抵当権者(債権者)と設定者(不動産の所有者または物上保証人=例えば子の債務のために親の所有する土地を担保に供する場合には、親が抵当権設定者である)との共同申請により登記手続きをすることになります。
 添付書類の「原因証書」とは、もちろん抵当権設定契約書のことですが、申請書に記載すべき不動産及び設定当事者の表示、債権額のほか、利息、損害金の定めがある場合は、その記載も含めてすべての事項が一致していなければなりません(不登法四九条七号)。
 原因証書がないときは、申請書副本を添付することについては、他の事例と同様です。抵当権設定の場合にも、所有権登記名義人の登記済証、印鑑証明書が重要な添付書類です。
 登録免許税は、債権額の一〇〇〇分の四です(抵当権者によっては、非課税となる場合があるので注意を要します。登録免許税法四条)。
 次に、同一の債権を担保するために、二以上の不動産上に抵当権を設定した場合には、いわゆる共同抵当の関係が生じ、民法三九二条の適用を受けることになりますが、個々の不動産登記簿で、その法律関係が明らかになるように、登記簿上は「共同担保目録第何号」と記載し、別に全部の担保物件を記載した目録を登記簿の一部とみなして公開しています。
 この目録は、はじめて共同抵当権の設定登記をする場合はもちろん、担保物件を追加して設定登記をする場合にも、申請人が作皮し、設定登記の申請書に添付して登記所に提出することとされています(不登法一二二条、一二三条、一二五条)。
 なお、マンションに関する抵当権設定登記についても敷地権の表示がある場合には原則としてこれを申請書に記載しなければならないことはいうまでもありません(不登法一四〇条の三)。
 抵当権の被担保債権が、弁済などによって消滅すると、担保権の付従性から抵当権も消滅します。また契約解除、抵当権の放棄などによっても消滅します。この場合、抹消登記の中請人は、抵当権者が登記義務者、抵当権設定者(所有権登記名義人)が登記権利者となります。
 添付書面中「登記済証」とは、抵当権の抹消ですから、抵当権者が設定登記をした際の登記済証です。
 なお、一般に金融機関では、弁済などによって抵当権が消滅したときは、設定者に「弁済証書」(抹消の登記原因証書となるものが多い)と委任状・資格証明書のほか設定登記の登記済証を手渡し、抹消登記手続きは、設定者(または債務者)に委ねる場合が多いようです。その場合は、本例により設定者が本人の立場と金融機関の代理人の立場で手続きできます(代理人としても署名・押印します。)。

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