不動産取引業者の知識

 土地や建物は、店頭で購入できるという商品ではありません。また非常に高価でもあり、大多数の人にとっては、その取引は一生に何度も経験するというものではありません。したがって、宅地建物については、どうしても不動産業者から買うか、不動産業者に仲介を依頼することになるのが通常です。業者と取引を行う前に、業者について十分な予備知識を持つことは必要欠くべからざることといえます。

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 土地建物等の不動産は非常に高価であり、顧客にとってはまさに一生の買物なわけですから、まず、宅地建物の取引を業として行う者は、高い道義心と宅地建物の取引に関する専門的な知識をもった者である必要があります。宅地建物取引業法(昭和27年法律第一七六号。以下「宅建業法」)では、こうした見地から、宅地建物取引業を営もうとする者について免許制度をとり、宅地建物取引業者に一定の資質を確保し、さらにその事業に対して必要な規制を加えることとしています。
 なお、宅建築法で規制の対象とされている宅地建物取引業とは、宅地建物の売買または交換、売買・交換または貸借の代理、売買、交換または貸借の媒介を業として行うこと、をいいます。国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けて、この宅地建物取引業を営む者が宅地建物取引業者(以下「宅建業者」)です。
 宅地建物取引業を営もうとする者は、次にあげる要件を満たさなければなりません。つまり、二つ以上の都道府県の区域内に事務所を設置する者は国土交通大臣の免許を、また一つの都道府県の区域内にのみ事務所を設置する者は、その事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければなりません。免許の申請が行われた場合には、国土交通大臣または都道府県知事は、免許申請者が一定の欠格要件に当該せず、また、免許申請書やその添付書類中の重要な事項について記載が欠けたり虚偽の記載があったりしないときには、免許をすることになります。
 免許を取得した者は、さらに一定額の営業保証金を供託し、その旨の届出を免許権者にした後でなければ、営業を開始することができません。営業保証金の制度は、宅建業者の取引上の債務の支払を担保するために設けられた制度であり、これを供託することによって取引の相手方である一般消費者を保護し、宅建業者の社会的信用を高めることを目的としています。
 宅建業者は、その事務所ごとに、業務に従事する者の十分の一以上となる数の専任の取引主任者を設置しなければなりません。取引主任者とは、都道府県知事が行う宅地建物取引主任者資格試験に合格し、さらにその都道府県知事の登録を受け、登録をしている都道府県知事から宅地建物取引主任者証の交付を受けた者をいいます。
 宅地建物の取引にあたっては、一般消費者は、宅地建物取引業者の有している知識、情報などに依存せざるを得ないのが現状です。このため、宅建築法では、取引物件や取引条件に関する重要な事項の説明を広く専門的知識を有している取引主任者に行わせることとするとともに、その責任を明確にする意味から、重要事項を記載した書面や、契約締結時に宅建業者が交付しなければならない書面に、取引主任者が記名押印することを義務づけています。
 このように、宅建業者の業務が適正に運営されるように、事務所ごとに専任の取引主任者を設置させ、専任の取引主任者に一定の義務を行わせることとしているわけです。
 宅建業者が不動産広告をする場合には、その取引態様を明示することが義務づけられています。広告に「代理」「媒介」などとなっているのがその表示ですが、このいずれかにより、宅建業者の仕事の内容、責任のとり方、受け取ることのできる手数料の額などに違いが生じてきます。
 このうち「代理」の場合は、宅建業者が売主または買主の代理人となって契約を行います。代理関係があるときは、代理人が行った契約などの行為は、すべて本人に効力が生じ、本人が行ったのと同じ結果になります。この場合に、宅建業者は、委任契約によって代理人となります。法律上の「委任」は、必ずしも代理権をともなうものではありませんが、委任により代理権を授与されたことを証する委任状の交付を受けると、宅建業者は委任された権限の範囲内で、代理人として契約を締結することになります。
 これに対して、「媒介」の場合は、宅建業者は、売却物件または買受物件を探し、売主と買主の仲立ちをします。この場合、宅建業者は、売主と買主の間の契約締結の助けはしますが、契約を行うのはあくまで本人です。
 なお、このような取引態様の別は、取引に関する注文を受けたときにも、注文者に対して明示すべきこととされています。
 媒介と代理とは法的形式は異なっているが、いずれも物件の売買契約等の成立を援助する行為で、社会的・経済的機能は類似しており、この両者をあわせて仲介といったりすることもあり、宅建業者のうちこの業務を行う者を一般的に仲介業者と呼んでいます。
 土地建物の売却や購入のあっせんを宅建業者に依頼して、その宅建業者の労によって目的物件の売買契約が成立したときには、報酬(仲介手数料)の支払が問題となります。
 かつては、宅地建物の売買の媒介を行うときに、その契約を口頭で行ったり、仲介依頼書のような書面を交付しても、報酬に関して明確な定めをしなかったりした場合に、媒介を行った宅建業者が当然に報酬を請求できるかどうかが問題となりました。判例では、手数料を支払う約束をしてなくても、商人たる仲介業者に商法五一二条を適用して、報酬請求権を認めています。なお仲介業者は、目的たる売買契約が成立しなければ、いくら努力しても報酬を請求できないのが原則です(成功報酬主義)。
 宅建業者では、とかく不明確であった仲介業者と依頼者の間の権利義務関係を明確にするため、媒介の契約を締結したとき(代理契約の場合も同様)に、一定の事項を記載した書面を依頼者に交付することを仲介業者に義務づけています。
 この書面には、報酬に関する事項を記載することになっていますので、依頼者は、媒介を依頼する段階で、成約に至ったときにどれくらい報酬を支払うのかを確かめることができます。
 以上のように、宅建業者は仲介に成功したときに報酬を請求できるわけですが、この報酬の額は依頼者と仲介業者の合意によって決めることになります。しかし、宅建業法では、宅地や建物を求める消費者に対して適正な費用でその仲介が行われるように、仲介業者が受けることができる報酬額の最高限について規刻が設けられています。
 具体的な最高限度は、国土交通省の告示によって決まっています。
 宅地建物取引業者には、宅地建物の売主や買主となったり、その仲介を行ったりする場合に、宅建築法上のいくつかの義務が課せられます。まだ宅建業者は、行政法規上の義務以外の民事上の義務も負うことになります。民事上の義務としては、例えば宅建業者が自ら当事者となって売買契約を行うときは、契約当事者としての義務を負いますが、他人の取引を仲介する場合に仲介業者がどのような義務を負うかなど問題も多いといえます。
 宅地建物の取引の仲介を依頼した者と仲介業者との間の仲介委託契約は、委任に準ずべき関係(民法上の準委任)であると考えられています。したがって、仲介業者には、委託された仲介事務を「善良なる管理者の注意」をもって遂行する義務があるわけです。この善管注意義務とは、取引において一般的に要求される注意義務を指しますが、不動産の取引においては一般の消費者は知識も経験も少ないことが多いので、仲介業者は不動産取引の専門家として、通常人以上の高度な注意義務が要求されると解されます。
 仲介業者はこの善管注意義務に基づいて、売買当事者間の契約が支障なく履行され、さらに当事者双方がその契約の目的を達することができるように配慮して仲介事務を行わなければなりません。
 例えば、売主や貸主が正当な権利者であるかどうか、目的物件に瑕疵がないかどうかなどについて調査して、依頼者が損害を被らないように配慮する義務があることになります。
 仲介業者の注意義務の関連で、多くの判例が出ているのが「取引の相手方が真の権利者であるかどうかについての調査義務」についてです。つまり、売主が地面師といわれるような詐欺師であって、自分の所有地でもないのに地主であると偽って売却を中し出る、あるいは売却や賃貸について代理権を与えられてもいないのに代理人を装って売却や賃貸を行う。以上のような事態を防ぐため、その取引を仲介する宅建業者は、その真偽を調査して判断する注意義務があるとされています。
 したがって、仲介業者が最低限行うべき取引当事者の同一性の調査・確認ないしは当事者の代理人と称する者の代理権の有無の調査・確認などを怠ったことによって損害を被ったときには、依頼者は仲介業者に対してその損害の賠償を請求することができます。
 売買や賃貸借の目的である宅地建物が当事者の考えていた物件と別のものであったとか、目的物件の上に対抗力がある第三者の権利が設定されていた、あるいは仮差押仮処分などがなされていたり競売申立がなされていたような場合における仲介業者の責任についても、多くの判例が出されています。
 このような場合にも、仲介業者が最低限行うべき目的物件の権利関係についての調査・確認を怠っているわけですから、これによって依頼者が損害を披ったときは、その損害の賠償を請求できることになります。とくに、登記簿や権利書などを調べることは、仲介業者として全く初歩的な注意義務であるといえます。
 しかし、売買価額の妥当性、目的物件の物的情況、目的物権の穏れた瑕疵の有無などについては、仲介業者は、通常以上の調査義務はないと考えられます。また、契約の相手方の弁済資力を担保する義務もないと考えられます。
 ただし、知っている事項については告知義務があり、とくに、故意に重要な事がらを告知しなかった場合には、宅建業法上も、宅建業者に対して監督処分や罰則が課せられることになっていますので注意を要します。

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