工事紛争の解決法

 請負契約を締結するに際しては、相当注意しても、予期せぬ事情から紛争に巻き込まれることがあります。請負契約書の内容もよく読まないで契約を結ぶというのが、日本人の平均的な姿だとすれば、一般に紛争発生の可能性はかなり高いといってもいいでしょう。
 この紛争を発生の時期によって分ければ、工事の着手前に発生するもの、工事の施工中に発生するもの、工事が完成し、引越し後に発生するものとに分類することができます。紛争の態様も、この発生時期に応じて、実にさまざまなものがあります。

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 工事の着手前に発生するものとしては、契約の解除及び工事の未着工をめぐるトラブルが典型的なものです。工事の途中で発生する紛争としては、使用した材料が粗悪であるとか、施工方法が入念でない、施工図と工事内容とにくい違いがあるといったことが問題となります。また、工事の完成後は、雨漏りや内外壁のひび割れなどを典型例とする瑕疵(欠陥)の補修や建物の安全性をめぐる紛争、工事中に施主が依頼した追加・変更工事に伴う請負代金の増額をめぐる紛争、予定工期を大幅に上回ったことによる遅延損害金をめぐる紛争といったものが多くなります。
 いずれにしても、これらに関する双方の意見のくい違いは、紛争というレベルに高まる前に、契約当事者間で十分話合いの機会をもつことが必要です。単なる紛争の相談として、第三者に相談することも結構ですが、最初から第三者の力を借りて解決しようという態度を示すことは、余り得策とは言えません。建設業者は一般に広い顧客を対象とする関係上、信用を重んじるため、第三者に業者の非を訴えられるのをマイナスの企業イメージとして嫌う傾向があり、このため感情的反発を招き、紛争の解決を一層困難にする場合もあるからです。しかし、これも時と場合によります。当事者だけで解決しようとの努力が、結果的に施主が不利な解決を強いられ、あるいは泣寝入りを余儀なくさせられるような場合もあります。
 このように、当事者だけでは納得のいく解決が困難であると判断されたときは、思い切って公正な第三者に相談する機会をもつことが必要です。ただこのような面倒な問題に相談にのってくれる機関は、決して多くありません。また、その相談機関も、無料で相談にのってくれる公的機関もあれば、行政が手の届かない部門について、有料で技術的な判定を行っているというようなところもあります。
  次に、請負契約をめぐるトラブル全般について、広く相談に応ずる代表的機関として、建設工事紛争審査会がありますのでぐその概要について若干説明しましょう。
 (1)建設工事紛争審査会とは
 建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争を処理する機関として、建設業法の規定に基づき国(国土交通省)とすべての都道府県に設置されています。国に置かれているものを「中央建設工事紛争審査会」といい、各都道府県に置かれているものを、それぞれの都道府県名をつけて「○○県建設工事紛争審査公」といいます。
 (2)取扱う紛争の範囲
 紛争審査会では、すでに述べましたように、建設工事の請負契約に関する紛争を取扱っています。建設工事全般が対象ですから、土木、建築の別を問いません。大工工事、左官工事、電気工事といった建設業のすべての専門工事をも含んでいます。ただし、建売り住宅の売主と買主との紛争や、日照、騒音、振動のように建築中あるいは建築後に第三者との間で発生する紛争については、請負契約に関する紛争ではないという理由から取扱っていません。
 (3)公平で迅速な解決が目的
 一般にと実際の工事とのくい違いや、建築後の雨漏りやひび割れに代表されるように、早急な解決が是非とも必要とされるケースが多いものです。このような紛争を裁判で解決することになれば、自ら主張することについて立証責任をともなうことが裁判の基本原則ですから、そのために多くの手続きを費やし、紛争が長期化することも覚悟しなければなりません。これは、建設工事紛争のほとんどが、技術的な争いが中心となり、技術的な専門家でない裁判官によって裁判が行われる以上、ある程度止むを得ないといってよいでしょう。
 紛争審査会では、このような事情を踏まえて担当委員に法律委員のほか、土木又は建築の専門家を加えることによって、具体的な事業に則した迅速な解決が図れるようにしているわけです。とはいっても、もともと双方利害の対立する問題ですから、解決までにある程度の期間を要することは覚悟する必要がありましょう。
 紛争審査会の手続きは、原則として公開されません。あっせん、調停も、本来両当事者間の紛争を、両者の互譲を前提として解決するものですから、公開を必要としません。仲裁も、両当事者がともに信頼する仲蔵人に、判断を委ねるという考え方に基づく制度であるため、法的にも公開されないのが原則となっています。
 一般に、建設工事紛争、なかでも建築に関する紛争は、いわば家庭内の問題として、あまり外部には知られたくないのが普通です。そのような意味で、審査会の非公公開性はこれを利用する人にとって、遂にメリットであるといってもよいでしょう。ですから、もし不良建設業者の非を広く社会に訴えたいという人は、むしろ公開の裁判によって紛争の解決を図るのが本筋です。
 紛争を解決する方法にあっせん、調停、仲裁があります。あっせんも調停も、紛争が解決した場合は民法上の和解になるという点で同じです。ただ、解決方法には若干の違いがあります。
 その第一は、あっせんは一人の委員(紛争の内容により法律または技術の委員)が行いますが、調停は法律と技術委員の合議制によって行われます。
 第二の違いは、あっせんは当事者に話合いの機会を提供するというに留まりますが、調停の場合は、さらに進んで調停委員が双方に具体的な解決案を示すというのが原則になっています。
 次に仲裁ですが、仲裁は裁判に代え、仲介人の仲裁判断によって当事者の紛争を解決しようというもので、民事訴訟法でも認められている制度です。仲裁はあっせん、調停に比べかなりの違いがあります。例えば、仲裁は裁判に代えて紛争の解決を図る制度であることから、仲裁の申請をする場合は、仲裁によって紛争を解決する旨の双方の合意(仲裁合意)が必要となります。この仲裁合意は、一般には「紛争の解決(方法)といった条項により、契約当初から請負契約書の中に入っています。」
 また、仲裁人の最終結論である仲裁判断には、法律上確定判決と同一の効果が認められています。したがって、仲裁判断がなされますと、仲裁手続の瑕疵(違法)といった手続的なことを理由としてその取消しを求めることはできますが、紛争の中味については裁判所でも争うことができなくなります。
 紛争審査会が行うべき職務の範囲は、建設業法で定められています。審査会の事務局で行われている紛争相談業務はこの中に入っているというわけではありません。しかし、建設工事紛争の窓口として対応していますと、とてもそそのような形式論でさばけるものではありません。実に多くの、しかもさまざまの請負契約紛争があり、かつこの相談に応じているというのが実情です。
 この中には、裁判所等に正式に申請する前の予備行為として相談がなされる場合もあります。
 多くは、自分の直面している紛争をどのような方法で解決したらよいか、自分の主張は正当な要求と思うが、第三者である役所はどのように判断するか、粗雑な工事をした相手の業者を私道、監督あるいは処分してくれないか、といた形で提訴されます。
 しかし、役所とてオールマイティではありません。単なるアドバイスに留まるような場合は、あまり問題がありませんが、当事者の一方に余り干渉がましいことをいうことは、民事紛争への行政庁の介入との問題とも関達して、自己規制と節度が必要です。したがって、許可行政庁であるからといって過大な期待をもって相談することは、むしろマイナスです、あくまでも双方の自らの努力によって解決すべき民事的な紛争であることを認識したうえで、必要なアドバイスを求めるといった姿勢が大切です。

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