マンション管理の法律

 マンションとは、ここでは、中高層共同住宅のうち賃貸住宅は含まず、中高層の分譲共同住宅をさしています。そのマンションを所有し、その管理を行っていくうえでの基本的な権利関係や形式を定めた法律が「建物の区分所有等に関する法律」(昭和37年法律第六元号)です。
 この第一条では、「建物の区分所有」と題して、「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる」と述べています。つまり、分譲の共同住宅(店舗や事務所がある場合も倉みます)のように、構造上からみて個々の区画が他の部分と独立しており、それぞれの区画が個々に住居としての機能を持っている場合には、その各々の区画が所有権の目的となる、ということです。
 ここで、「構造上区分された」というのは、他の者の居住部分を通らずに外へ出られることなどをさしており、例えば、普通の一戸建ての住宅の中を仕切ったからといって区分所有をすることはできない、といったことを意味しています。
 また、「所有権の目的とすることができる」という表現は、後の項で述べる「共用部分」と対比して、共用には供されない部分といった意味合いでとらえられているものです。区分所有権の目的となっている部分(これを「専有部分」といいます)は、持ち主(これを「区分所有者」といいます)が法令の制限している範囲内で自由に使ったり、処分したりできるのに比べて、共用部分は、区分所有者であっても専有部分と切り賂して売ったり贈与したりすることはできません。
 専有部分も共用部分もともに所有権の対象とはなっているわけですが、専有部分の所有が一般の戸建て住宅とほぼ同様な意味合いでとらえられるのに対し、共用部分の方は、区分所有者全員の共有に属する(一一条)のに加え、その使用や管理についても、独特な規定がなされています。
 こうしたマンション特有の形態について、法では、専有部分だけが区分所有権の目的となるものとし、共用部分に関しては、法の中で詳細な規定を設けて、その使用や管理の在り方を明らかにしようとしているわけです。

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 マンションは所有関係のうえでは、専有部分と共用部分に分けられますが、この両者をどこで区別するかについては、法律上では必ずしも明確な規定はありません。
 法の第四条では、「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする」とされていますが、さらに続けて第四条の第二項で「第一条に規定する建物の部分及び付属の建物は、規約により共用部分とすることができる」と規定し、区分所有の目的となるどの部分でも、規約により共用部分とすることができる旨を定めています。
 すなわち、マンションのどの部分を共用部分とするかは、そのマンションの区分所有者の合意により成立する規約次第であり、ただし廊下とか階段あるいは建物全体を支える鉄骨とかは必ず共用部分である、というのが法の内容なのです。
 さて、それでは実際にマンション生活でどのような部分が共用部分とされるかといいますと、マンションの玄関やエレベーターホール、階段、屋上などを初めとして、管理組合のための集会所や管理入室は当然に共用部分と見なされます。ただし、管理入室のようなものについては、特別にマンションの「管理者」の所有とすることも可能です。
 その他に、外壁やバルコニー、テラスなどについても、現在では共用部分と見なされることが一般的です。
 これは、専有部分とすると、どうしても個々の区分所有者が無制限にその使用を行いがちになるため(実際には専有部分であっても法律上は無制限の権利を認められているわけではありませんが)、共用部分ととらえるできである、という配慮に基づいています。
 例えば、自分の住居(専有部分)に付属しているバルコニーやベランダを別の色に塗り変えてしまったら、建物全体の外観の統一性が失われてしまうおそれがあります。このような場合には、あくまで他の区分所有者の同意が得られて初めてバルコニーなどの塗り替えに着手すべきであり、バルコニーなどを専有部分だとしてしまうと、どうしてもトラブルが生じがちになるため、それらはむしろ共用部分としてしまった方が円滑なマンション生活を送りやすい、と考えられるからです。
 ただし、外壁の塗装部分とかバルコニーとかが法定共用部分であるかどうかについては異論もあるため、規約で共用部分であることを明記しておく必要があります。
 また、駐車場や一階に面する庭などについても、同様に規約で共用部分であることを明記しておくことが、マンションの円滑な管理を行っていくためには必要です。
 専有部分の用法や管理については、基本的には、一般の所有物と同様、各区分所有者の自由な裁量によって、使用や管理を行うことができます。ただし、第六条第一項には、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」とあり、マンションという独特な生活空間の中で暮らす限りは、普通の一戸建などと比較すれば、所有権に対する制約も相対的に強いと言うべきでしょう。
 「どこまでが共用部分か」の項でも述べましたように、現在では専有部分の範囲をできるだけ限定的に解釈することによって、専有部分を勝手に使用することから生じるトラブルをできるだけ避けようという考え方が強まっています。
 しかし、だからといって専有部分の使用は、あくまで区分所有者の勝手ということではありません。専有部分の使用については、あくまで区分所有者の共同の利益という枠がはまっているのであって、それに反する使用は、専有部分であってもできません。これは、区分所有者だけでなく賃借人などの区分所有者以外の専有部分の占有者についても同様で、法は第六条第三項で、「第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下占有者という)に準用する」として、共同の利益という枠をはめています。
 また、マンションでは、同じ建物の壁一つを隔てて他人が生活しているわけですから、そのような生活の中で他人と協調しつつ生活していくことは、そもそも法律関係以前の社会人としての健全な常識に立脚するものというべきでしょう。
 なお、法第六条第二項では、「区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない」とあって、修理などに必要なときは、他の区分所有者に専有部分の使用を認めなければならないとされています。
 法では、区分所有者や賃借人などの占有者が共同の利益に反する行為をした場合等の対応策を段階的に定めています。
 区分所有者が共同の利益に反する行為をしたり、その恐れがある場合には、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、その行為の停止や予防のための必要な措置をとることを請求することができます。この請求権に基づき訴訟を提起するには集会の決議が必要とされています(法第五七条)。
 次に、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前記の方法では区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合には、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、集会の決議により、訴えをもって、その区分所有者による専有部分の使用を禁止するよう請求できます(法第五八条)。
 さらに、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法では区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合には、他の区分所有者の全員または管理組合法人は、集会の決議により、訴えをもってその区分所有者の区分所有権等の競売を請求できます(法第五九条)。使用の禁止や競売の請求の決議は、区分所有者および議決権の各四分の三以上の多数で、対象となる区分所有者に弁明の機会を与えた上で、決しなければなりません。
 また、賃借人などの占有者に対しても、共同の利益に反する行為の停止や予防のための必要な措置をとることの請求や、訴えによる賃貸借契約の解除や引渡しの請求ができることになっています(法第五七条、第六〇条)。
 ベランダやバルコニー、あるいは駐車場のように、管理規約上は共用部分とされていても、実際にはもっぱら特定の区分所有者が使用している場合、その区分所有者はそれらの共用部分について専用使用権を有しているといいます。
 専用使用権は、ベランダやバルコニーのようにある特定の専有部分に付属しており、その専有部分が譲渡あるいは賃貸されると自動的にその専用部分について使用権が移動してしまうものと、駐車場のように専有部分に付属しているというより、むしろ区分所有者に対してその専用使用権が認められているものと、二つの種類があります。
 前者のように専有部分に付属している共用部分の専用使用権については、専有部分の所有者が当然に専用使用するものであり、実際の生活のうえでは、専有部分とほとんど同様な扱いがなされています。マンションによっては、専有部分として取扱っているところもないわけではありません。
 一方、駐車場のような共用部分については、基本的には、区分所有者間の取り決めに基づいて、ある特定の区分所有者の専用使用が行われているものですが、マンションの分譲に際して分譲業者との間で駐車場の割り当てを受けている例も多く、その管理や使用については、トラブルを生じやすいものです。

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