欠陥マンションの問題

 従来、マンションをめぐる法的紛争といえば、マンション建物の過程における日照権紛争や、分譲業者の倒産による購入者の救済問題などが論じられてきました。
 しかし、マンションの販売戸数が増大し、都市における居住の形態としてマンションで生活することが定着していくにつれて、欠陥マンションをめぐる売主の担保責任や、マンションの管理にまつわる問題が社会問題として注目を浴びるようになってきました。
 欠陥マンションの問題としては、購入したマンションに雨漏りがするとか、給排水施設の不備が発見されたとか、ひどい場合には、ベランダがくずれ落ちたとかいったことがあげられます。こうなると、せっかくマンションを購入しても、そこでの生活が脅かされることになります。最近建設されているマンションについては、このような欠陥マンションに関するトラブルは減ってきているようですが、石油ショックによって建築資材が高騰したために行われた、いわゆる手抜き工事による欠陥マンションは大問題となりました。
 この項では、欠陥マンションのような不完全な分譲マンションの購入者に対する法的な救済について扱います。

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 売買の目的物であるマンションに、契約によって移転されるべき権利が完全に備わっていなかったり、物質的な欠陥があったりして、契約で定めたとおりの内容を満たしていなかった場合には、当事者間で紛争になりがちです。このように売買の目的物に権利または物の瑕疵があった場合は、売主がその責任を負わなければならず、これを売主の担保責任といいます。
 売買の場合には、目的物に瑕疵がないものとして代金が決められるわけですから、瑕疵があった場合には、両当事者間の不公平を是正するために、売主は無過失でも一定の責任を負うとするものです。
 売主の担保責任としては、まず、権利に関する担保責任があります。マンションの床面積が不足しているとき、敷地面積が不足しているとき、マンションに他人の権利がついているときなどは、購入者は、損害賠償請求や契約の解除などによって救済されることになっています。これに対して、購入したマンションに物的な欠陥があったときに売主が買主に対して負うのが瑕疵担保責任です。
 分譲マンションを導入したが、給排水管が不良である、壁から水漏れがする、あるいは壁に亀裂がある、床がきしむなどの欠陥がある場合に、その欠陥が民法五七〇条の「隠れた瑕疵」といえるかどうかまず問題となります。ここで「隠れた」というのは、通常の人が一般に要求される程度の注意をもってしても発見できないような場合をいい、「瑕疵」とは、住居などの用途に供するマンションとして、当然有すべき品質や性能を欠く場合をいいます。したがって、買主の管理・使用上のミスによる故障などは、ここにいう瑕疵にあたりません。
 さて、購入したマンションの欠陥がここにいう瑕疵にあたるかどうかの判断ですが、マンションの最低性能基準のようなものは現状では確立されていません。また、欠陥の程度によっては居住するに耐えないかどうかの判断が居住者の主観に左右される場合もありますので、具体的な瑕疵の認定はむずかしい場合があります。一般的にいえば、売買価格に見合った品質のもの、取引における社会通念が前提とする程度の品質・性能のものというような抽象的基準に照らして、個々の判断をしていくことになります。
 分譲マンションの欠陥について、売主が瑕疵担保責任を負うべき瑕疵にあたる場合、買主は売主に対してどのような請求ができるかが問題となります。
 住宅公団の分譲マンションのように、売買契約で補修工事をする旨を明らかにしている場合は問題はでてきません。しかし、民間の分譲社会による分譲マンションで、このような定めを売買契約でしていない場合は、補修工事の請求ができるかどうかが問題になります。というのは、民法の瑕疵担保責任では補修請求権は規定されておらず、従来の支配的な見解によると、マンションなどの特定物の売買では売主はその特定物を給付すれば義務を果たしたことになり、瑕疵があっても、補修請求などの債務不履行の責任は追及できないとされていたからです。しかし、分譲マンションの買主が補修工事を求めることができないというのは、どう考えても不合理な話といえます。そこで最近は、特定物売買の売主も、特別の事情がない限り代金に見合う程度の特定物を給付する義務を負うとする考え方や、請負契約における瑕疵補修請求権の規定(民法六三四条一項)を類推するとかによって、補修請求を認める考え方が強く主張されています。
 ただ、売主に補修義務がないとしても、買主は損害賠償の形で修理費の賠償を求めることはできますので、現実にはさほど変わりがないことになります。
 損害賠償の請求としては、買い受けたマンションを代金に見合ったものにするために必要な修繕費用を賠償させる、あるいは代金から瑕疵ある物件としての価額を引いた差額を賠償させるの以上二つの方法のいずれかが考えられます。後者は、実質的には瑕疵に応じた代金の減額請求になります。
 なお、マンションの瑕疵が補修不可能な場合には、契約の目的を達しえないものとして売買契約を解除することができます。補修が技術的に可能であっても、過分の費用や目数を要するような場合には、補修不能とされます。解除した場合には当然、代金債務は免れ、支払済の代金の返還を求めうるほか、損害賠償も請求できます。
 民法では、売主に対して瑕疵担保責任を追及しうる問題を、買主が目的物の瑕疵を発見したときから一年以内としています。しかし実際には、特約によって引渡しのときを基準にしてその期間を定めているのが普通です。ただ宅建業者が自ら売主となる場合には、引渡しのときから二年より短い期間を定めても、その特約は無効となります(宅建業法四〇条)。このため、多くのマンションの分譲契約においては、瑕疵担保保責任は引渡し後二年間とされています。
 引渡後二年間という期間は、マンションの場合のように鉄筋の躯体から生ずる瑕疵に関しては短かすぎるという意見が強く、現在、その延長についての検討がなされています。
 購入したマンションに欠陥があった場合に、買主がそれを発見して売主に通告しても、売主側でその欠陥が「瑕疵」であると承認しなければ訴訟で争うほかになく、欠陥に対する対応が迅速にとられないことになりまけ。また、先に述べましたように、瑕疵担保責任としては補修工事の請求ができない場合もあります。
 これに対してアフターサービスは、売主が営業政策や消費者サービスのために自主的に大節部分の補修を無償で行うものです。この場合、売主が約束したサービス期間内は、買主の使用責任や経年変化などの原因が著しく明らかな場合以外は、分譲業者は迅速に補修を行うことになります。
 注意を要するのは、アフターサービスは、瑕疵担保責任と追って法律上の責任ではありませんので、その旨を契約の一項目としなければ、売主に補修義務は生じないということです。
 昭和52年、建設省の指導のもとに、マンション分譲業者などの業界団体によって、アフターサービスの保証内容や保証期間について一定の基準が設けられ、この基準に基づいて補修などのアフターサービスが実施されることになりました。この基準には、建物の各部位・設備の欠陥ごとに保証期間が詳しく定められています。保証期間は、五年(屋上・屋根の雨漏り)から一年(壁塗装のはがれなど)までとなっています。なお、業界団体加盟業者でも、このアフターサービス基準による補修をする旨の契約をしないこともできますので、買主としては、よく確かめることが必要でしょう。

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