マンションの売買契約の締結

 未完成物件の場合の、広告の開始時期の制限については前にのべましたが、分譲マンション青田売りの場合には、購入者などを保護するために、その他にも分譲業者に対して規制が行われています。

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 第一に、契約締結時期が制限されています。これは、広告開始時期の制限と同様、売買契約の目的物件について、実際に完成して引渡される物件が契約時に示された内容と著しくくい違うことを防止するための制限です。すなわち、未完成物件に関する売買契約は、都市計画法に定められている開発許可や建築基準法に定められている建築確認などの一定の法令に基づく許可などの処分があった後でないと締結することができません。(宅建業法三六条)売買、交換の媒介を行おうとする場合も同様です。
 青田売りにおいては、目的物件が買主に引渡される前に、売買代金の全部または一部が前金、内金などの名目で授受されるのが通常です。ところが、目的物件の引渡し前に宅地建物取引業者が経営不振に陥ったり、倒産したりした場合に、前金の返還請求をめぐって紛争が生じがちです。このため、宅建築法では、工事完了前の物件の売買においては、宅建業者に銀行などによる保証または保険会社の保証保険を内容とする前金の保金措置を講ずることを義務づけています。宅建業者がその措置を講じないときには、買主は、契約の定めにかかわらず前金を支払うことを要しないこととして、買主の保護を図ることとしています(宅建業法四一条)。
 この前金保全措置を行う義務は、所有権移転の登記がされたり、買主が所有権の登記(表示の登記および所有権保存登記)をした場合、あるいは宅建業者が受け取るうとする前金の額が代金の額の五%以下であるときは免除されますが、そうでない場合は、前金保全の保証書や保証証券と引換に前金を支払うこととなります。
 宅地建物の取引の当事者は、取引の対象となる物件に関する私法上、公法上の権利関係や取引の条件などの取引上の重要な事項について十分に調査を行い、確認する必要があります。しかし、一般消費者はこのような事項について十分に調査を行い、確認する知識も経験も有していないのが通例です。このため宅建業法では、宅地建物取引業者に対し、契約の成立までの間に一定の重要事項について相手方に説明をすること、また、その説明は取引に関する知識を有する取引主任者に行わせることを義務づけています(宅建業法五三条)。
 なお、この重要事項は、すべて書面に記載して説明しなければなりません。また、取引主壮者が重要事項の説明をする際には、相手方に対し、都道府県知事の発行する取引主狂者証という身分証明書を提示しなければなりません。
 宅地建物取引業者が、取引主任者に説明させなければならないのは次の事項です。
 (1)取引物件の概要
 ・ 登記された権利の種類、内容、登記名義人など
 ・ 都市計画法その他の法令に基づく制限の概要
 ・ 私道の負担に関する事項
 ・ 水道、電気、ガスの供給施設、排水施設の整備状況
 ・ 青田売りの場合は、完了時における形状構造など
 (2)マンションの場合に説明すべき事項
 ・ 一棟の建物の敷地に関する権利の種類、内容
 ・ 共用部分に関する規約定めの内容
 ・ 専用使用権が設定されているときは、その内容
 ・ 計画修繕積立金に関する規約の定めの内容とすでに積み立てられている額
 ・ 通常の管理費用の額
 ・ 管理が委託されているときは、その委託先
 (3)取引条件に関する事項
 ・ 代金、借賃等以外に授受される金銭の額とその授受の目的
 ・ 契約の解除に関する事項
 ・ 損害賠償の予定や違約金に関する事項
 ・ 青田売りの場合は、前金保全措置の概要
 ・ 支払金または預り金を受領する場合のその保全措置に関する事項
 ・ 代金等に関する金銭の貸借のあっせんの内容とその貸借が成立しないときの措置
 (4)割賦販売の場合に説明すべき事項
 ・ 現金販売価格
 ・ 割賦販売価格
 ・ 引渡しまでに支払う金銭の額、賦払金の額、その支払いの時期、方法
 とくにマンションの売買では、管理規約またはその案の条項のうち、重要なものが説明されることになっており、入居してからのトラブルを防止することが期待されています。また、実際の重要事項説明の際には、説明しなければならない項目に関連する管理規約の条項が重要事項説明書に記載されるか、管理規約自体が重要事項説明書に添付されることになります。
 宅建業法では、宅建業者は、契約が成立したときは、遅滞なくその契約の内容のうち一定の事項を記載した書面を、契約の各当事者に交付しなければならないことになっています(同法三七条)。これによって、取引条件などを明確にし、それらをめぐる紛争を防止しようとする意図があるわけです。そして、マンション分譲のように売買契約書が作成される場合には、この契約書に必要事項が記載されていれば、その契約書をもってこの書面に代えることができます。なお、この書面には、交付にあたって取引業者が記名押印しなければなりません。
 書面に記載しなければならない事項は、売買や交換の場合と賃借の場合で異なりますが、売買の場合は次の事項です。
 〔売買の場合の記載事項〕
 1. 当事者の氏名(法人の場合は、その名称)、住所
 2. 目的物件を特定するために必要な表示
 3. 代金や交換差金の額、支払時期、支払方法
 4. 目的物件の引渡しの時期
 5. 移転登記の申請時期
 6. 代金や交換差金以外に授受される金銭の額、授受の時斯、授受の目的
 7. 契約の解除に関する定めの内容
 8. 損害賠償額の予定や違約金に関する定めの内容
 9. ローンなどのあっせんに関する定めがある場合は、そのあっせんにかかる金銭の賃借が成立しないときの措置
 10. 危険負担に関する定めの内容
 11. 瑕疵担保責任に関する定めの内容
 12. 公租公課の負担に関する定めの内容
 マンション分譲にかかる売買契約において、買主の中枢的な義務である売買代金の支払いは普通、手付金、中間金、残金というように段階的に行われます。
 手付は通常、契約締結の際に買主から売主に対して交付され、最終的には代金に充当されます。手付は、その性質によって種々のものがありますが、大別すると、証約手付、違約手付、解約手付の三種類があることは、すでに述べたとおりです。
 なお、宅建業者自らが売主となる宅地建物の売買契約にあたっては、手付を受領したときは、その手付がどのような性質の手付であっても、解約手付の性質を持つものとしています。また、受領できる手付の額についても、代金の額の二〇%を超えてはならないとしています(宅建業法三九条)。
 さらに、宅建業者は、例えば手付金の一部を立替えるなど、手付について貸付、その他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為をすることを禁止されています(宅建業法四七条三号)。
 代金としては、他に中間金、残金などと称して段階的に支払われるのが通常ですが、これらの支払時期については、当事者の合意に基づいて契約書に記載するとともに、売主の義務である引渡しや、登記申請の時期ともバランスをとるようにする必要があるでしょう。
 分譲マンションの売買では、青田売りが一般的ですので、売買契約書に本登記と所有権の移転を行う時期とともに、目的物件の引渡しの時期を、具体的に○年○月○日と規定しておく必要があります。引渡しの時期は、目的物件が完成して、その引渡しが可能となる時期になるわけですが、現実の引渡しの方法は、鍵の受渡しなどによって行われるのが通常です。
 これに対して、契約成立後引渡し前に目的物件が、当事者の責に帰さない天災などの不可抗力によって滅失・毀損した場合に、売主と買主のいずれがその危険を負担するかが問題となります。
 民法の原則によると、マンションなどの特定物の売買においては、買主が危険を負担する(売主は売買の目的物が滅失して引渡せないのに買主は代金を支払わなければならない)ことになりますが、これでは青田売りの場合などはきわめて不合理な結果を招きかねません。そこで、引渡し時までは売主の負担(引渡時までに目的物が滅失してしまえば買主は代金の支払いを免れる)とする旨を特約するのが一般的です。ただし、この場合に買主は、支払い済の売買代金の返還以外に、売主に対して損害賠償は請求できないとするのが通常です。
 最後に、マンションの所有権の移転時期についてですが、一般に不動産の売買では所有権の移転時期は不明確であり、特定物を目的とする売買では、売買契約の締結と同時に代金の支払いを待たずに所有権は移転するとする最高裁の判例もあります。
 しかし、金銭の授受もなく所有権の移転を認めるのは当事者の意思に添っているとはいいがたく、とくに未完成物件について契約を結ぶ青田売りの場合、契約時には移転すべ老所有権自体が存在しません。このため、判例や学説は、所有権の移転について当事者の特約があるときにはそれに従うことを認めています。したがって、所有権の移転時期は、契約締結時に売主と買主の間で明確に定めて、契約書に記載しておくべきでしょう。
 なお、所有権の移転時期とともに、固定資産税その他の公租公課や水道、ガス、電気などの使用料金についても、売主と買主との間の負担区分を明確にして契約書に定めておくことが必要です。

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