契約書の作成

 契約書を作成するためには、その前提として契約内容を確定しなければなりません。この場合の契約とは売買契約ですから、最小限売買代金およびその支払方法、所有権移転登記の時期およびその方法、物件引渡しの時期およびその方法を確定しておかなければなりません。
 しかし、以上は最小限必要な事項であって十分とは到底いえませんので、これ以外にも物件の所有権移転の時期、危険負担、担保責任、契約解除の可否およびその方法、公租公課などの負担の割合、契約書作成費用その他の費用の負担者などを定めておかなければなりません。そこで以下において、これらの条項につき簡単に説明することにします。

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(1)表題
 表題を見ればこの契約書が何を目的とするものであるかが明確にわかるものであることが必要です。ただし、諸々の要素が混在している契約においては、簡潔な標題をつけることは困難ですので、契約書の表題が絶対的なものだと考えることはできません。
(2)印紙の貼付
 売買契約書も印紙税法にいう課税文書ですので印紙税を納付することが必要です。
(3)契約書の前文
契約書の各条文の前にくる部分を普通前文といいますが、前文という形式を用いるか否かは当事者の任意に任されております。通常はこの部分に当事貴名を記載し。これを甲、乙などに略記することが多いようです。
(4)売買の合意
 本条項により、建物についての売買の合意があったことが確定され、売買契約の基本的な意思表示の合致があったことになります。
 本来ならば、この売買契約の成立日が重大な問題になります。それは、日本の民法が物権(売買では所有権)変動について形式主義をとらず意思主義を採用しているからです。簡単にいえば売買契約を締結した日に、所有権が売主から買主に移転してしまうものですから、いつ売買契約が締結されたかが重要な意味があるわけです。
(5)代金とその支払方法
 まず代金の決め方ですが、これは当事者間での合意によるほかはなく、その場合に前述の不動産鑑定評価制度などが利用可能になります。なお代金を決める場合に、単位面積あたりの価格を決め、それを基にして全体の価格を決めていく場合には、物件の正確な面積の測量が条件となります。
 次にこのようにして決まった代金の支払い方法については、一回払いでない限りその時期が問題になります。売買のような双務契約にあっては、原則としては代金の支払いと登記の移転、物件の引接しが引換えになされることになります(民法五三三条)が、支払いが数回に分けられる場合には、第一回の支払いの時に登記の移転、第二回の支払いの時に物件の引渡しというように、段階的に売主の債務が履行されるのが通常です。
 このような場合、代金は一部すでに支払ってあるが登記はまだ移転していないという事態が当然に起こり得ます。したがって買主としては、このような場合に事前に仮登記をその物件につけるなどして、取引の安全の確保を図ることが必要になります。
 なおこれらの代金の支払い場所については、民法が代金支払いと物件の引渡しを同時にする場合には物件引渡場所で行わなければならない旨の規定をしています(民法五七四条)が、分割払いの掛合には、買主が単に代金を支払うだけの場合もあるでしょうし、また民法の規定も合意により変更可能ですので、当事者間でこの点について十分に合意しておくことが得策と思われます。
 また移転登記を行うに際して代金を支払う場合には、登記所もしくは最寄りの司法書士事務所において支払いがなされることが多いようです。
(6)売買物件の引渡時期
 引渡しとは、占有(事実上の支配)を移転することを意味します。引渡し時期をいつにするかは、後述のとおり買主がいつから売買物件に関する危険を負担することになるかを決める際の一つのポイントになりますし、また買主の今後の居住計画にも関わりますので明確に定めることが必要です。
(7)所有権移転登記時期
 所有権移転登記時期を明確にすることも引渡時期を明確にすることと同様に大切なことです。というのも、不動産においては所有権移転登記を得ることが、第三者に対して自己の所有権取得を主張するための要件であり、特に係争が生じた場合(二重売買等の場合)にはこの点が決定的ポイントにもなるからです。通常は代金支払い時期と関連しながら決められることになるでしょう。
(8)所有権の移転時期
 所有権の移転時期をいつにするかについては日本の民法はドイツのそれと異なり物権変動について意思主義を採用しています(民法一七六条)。
 この意思主義というのは、物権変動を生じる法律行為の成立には、その旨の当事者の意思表示だけでたり、別に格別の形式を必要としないものであって、物権変動を生ずる法律行為に当事者の意思表示のほか、登記、引渡しのような一定の形式を必要とする形式主義に対比させられる言葉です。そしてこの意思主義の適用の効果として、売買契約があれば契約とともに建物の所有権が売主から買主に移転するというのが通説、判例の態度といえます。
 しかし、登記も引渡しも受けていないのに、契約を締結したという一事のみで、何ら実質のともなわない所有権を取得したところで、買主にどこまで利益となるかは疑問ですし、また具体的な管理もできないうちから危険負担だけを負わされ、滅失にでもなった湯合は代金支払債務だけが残る場合さえ考えられます。
 そこで、このようなリスクを回避するため、実際上の取引においては、売主と買主の特約を以って所有権の移転時期を登記、引渡し、代金完済の日などとしている例が多いわけです。このような特約がないときは、原則に従って契約が解釈されることになり、建物の所有権は契約締結日に売主から買主に移輯することになってしまいます。
(9)租税等の負担
 次に、固定資産税、都市計画税、電気・水道ガス代などの売買物件に関する諧負担についても、契約によりどの時点から誰が負担するかを具体的に決めておくことが必要です。
 この点については、所有権移転登記時、物件引渡し時、代金完済時などを境として、それ以前は売主、それ以後は買主の負担とするという具合に規定していることが多いようです。
(10)危険負担
 危険負担というのは、当事者に責任のない事故により契約の目的物件が滅失したり、毀損したりしたときに、この滅失、毀損というリスクを誰が負担するかということです。建物の売買契約のように特定の建物を契約の目的としている場合は、原則として買主が危険を負担することになります(民法五三四条一項)。
 ですから、買主は、建物が滅失によって結局自分のものにならなかったときでも、売主に対して建物の売買代金を支払わなければなりません。このような取扱いがなされているのは、民法が物権変動について意思主義を採用して所有権が契約とともに移転していることを前提にしていることによるものと考えられます。
 しかしながら、引渡し、移転発記等が終了する以前、すなわち不動産に対する実質的支配が買主に移転する以前から、危険負担については買主が負わされるとすることは実質的に不公平であると考えられます。
 よって、このような実質的不公平を是正するために、当事者間の特約によって買主が、どの時期から危険を負担するのかを(例・引渡時、所有権移転登記時等)具体的に定めておくことが得策といえます。
(11)担保責任
 次にかし担保責任とは、売買物件が契約書に定められた品質、性能、面積などを有していなかった場合に、買主はその点につき売主にどのような責任追及が可能であるかという問題です。欠陥住宅、造成工事の手ぬきなどの場合には、この条項がどのように定められているかによって買主保護の程度が大きく異なってきます。したがってここで重要なことは、どのような場合に、どのような内容の責任追及が可能であるかを十分に確認することです。
 まず、いかなる場合に責任追及ができるかにつていは、民法五六〇条ないし三七二条が具体的に規定しておりますのでこれを基準にして考えてください。またどのような内容の責任追及が可能かについては、民法は代金減額請求権、損害賠償請求権、契約解除権の一部もしくは全部を認めています。
 しかし実際には、もっとも必要になる補修請求権、代替物の引渡し請求権などは規定していませんので、この点については協議により契約条項中に加えていくことが必要になります。
 なお、これらの責任追及が可能な期間は、契約時より一年間、契約後に瑕疵を知った時はその時から一年間とされています(民法五六四条)。
(12)契約の解除
 次に契約解除については、民法は一方当事者に債務不履行(民法四一五条)、すなわち契約違反があった場合には、相手方当事者は相当の期間をおいて債務の履行を催告した後その契約自体を解除できる旨規定しています(民法五四一条)。
 ところで、法律に規定があるにもかかわらず解除に関する規定をわざわざ契約中に入れることは不要なようにも思われますが、一般論として契約が終了させられる場合を契的中で明記することは望ましいことでありますし、また解除権行使の前提要件である催告手続を不要にすることも当事者間の合意により可能ですので、やはり独立条件として加えるべきと思われます。なおその際には、解除にともなう損害賠償の問題も、あわせて規定しておくとよいでしょう。
(13)費用に関する約定
 売買契約に関する費用は民法の原則においては当事者の折半です(民法五五八条)。
 以上、契約内容にどのような事項を盛り込むべきかを簡単に検対して含ましたが、それではこのように内容が確定した後、契約書は具体的にどのような形式で作成すべきでしょうか。
 これは、当然文書化することになりますが、まず標題は不動産売買契約書とでもしておいて、第一条以下順に条項を入れていくことになります。この場合当事者名を甲、乙などと略記すると簡便になります。そのうえで契約書末尾に目付および当事者の住所、氏名を記載します。売買物権の特定は、不動産登記簿謄本の記載にしたがうのが得策です。
 売買契約書の形式はごく簡単に述べれば以上のとおりですか、このような形式の文書を作成したうえで(手書きでもかまいませんが、できればタイプぐらいはしたいものです)、各当事者名下に押印し、各頁間に割印をし、訂正箇所に訂正印を押印すれば契約書は出来あがりです。通常は当事者の数だけ作成し、各当事者が一通ずつ所持することになります。

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