売買物件の調査及びその価格評価

 売買物件の調査とは、物件の現況ならびに各種の権利関係の設定の有無の確認、各種法令上の規制の有無およびその内容の確認などの点をいいます。
 まず現況の確認についてですが、これは実際に現地へ行き物件の現状を調査することによって行います。
 具体的な調査項目としては、土地であれば周囲の環境はもとより、最寄り駅との距離、交通施設の状態、上下水道、ガスなどの供給状態の確認などの点があります。その土地が造成地であれば、造成工事の完成状態も十分に吟味する必要があります。
 次に建物としては、土地と同様の項目のほか、建物の使用資材の質および量の点検、間取りの確認、日照の有無などの点が調査項目になります。これらの調査を行うにあたっては、専門的な見地から調査を行うことが必要な箇所も少なくないと思われますので、専門家の同行を頼むのが得策かと思われます。

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 前述のとおり不動産には種々の権利を設定することが可能ですので、不動産購入にあたってはその認定の有無を確認することがぜひとも必要になります。
 その具体的調査方法としては、まずその物件の登記簿謄本をとり、どのような内容の権利が設定されているかを調べてみる必要があります。すなわち、地上権、賃借権などの使用権が設定されていないか、また抵当権、仮登記担保権等の担保権が設定されてはいないかを十分に調査しなければなりません。
 またそれ以外にも、現地へ直接行って調べなければならないいくつかの事項があります。まず土地については、借地権が設定されていないかを調べてみなければなりません。この点については登記簿上の調査だけでは必ずしも十分ではなく、現地に建物が建てられていないか、建てられていれば誰の名義で登記されているのかまでを調査して(土地の所有者とは異な右名義で登記がなされていれば、むしろ借地権が設定されていると考えることが自然でしょう)、後々の紛争の可能性の有無をチェックしておく必要があります。
 なおこの場合、土地上に建物が第三者名義で建てられていても未登記の場合には、借地人は借地権を土地の新しい買主に主張することはできません(建物保護法第一条)が、いずれにしても後日紛争が生ずることが予想される物件を購入することは十分に慎重であることが得策と思われます。
 また土地であればその境界を確認する必要があります。土地の境界などについては登記所備付けの地図や公図などでその内容を確認することができます。しかし必ずしも十分に正確でない場合もあり、また実際に境界として区分されている個所が公図などの記載と一致しない場合もあります。土地の境界の確認という問題は、今日のように土地価格の値上がりの激しい時代においては特に深刻な紛争の火種にもなりかねません。隣地所有者の立会のもとで十分に確認をしておく必要があります。そしてその確認の内容は文言にしておいたほうがよいでしょう。
 なお必要とあれば測量士、土地家屋調査士などに依頼することも一つの方法です。
 土地については以上のほかに面積を確認する必要があります。土地の面積は登記事項ですので登記簿を調べれば一応の数値はわかりますが、残念なことに現実の面積と一致しないことが現実に起こり得ます。したがって、特に売買代金を実際の面積に応じて決める場合には、その正確な面積を測量士などに依頼して計測してもらう必要が生じることになります。
 土地の現地調査を行うにあたっては、隣地道行権の有無など、いわゆる相隣関係も調査しておかなければなりません。すなわち、ある土地が袋地、他人の土地を通らなければ道路へ出られない土地である場合には、民法は他人の同意が得られない場合にも、袋地所有者はその他人の土地を通行できる旨を規定しています(民法二〇九条)。したがって売買物件が袋地である場合にも、またそうでなく隣地が袋地である場合にも、このような問題があることを事前に十分に認識しておかなければなりません。
 なおこの場合、袋地所有者は隣地に与える迷惑が最小限になる限度でしかその通行を認められませんので注意が必要です(反対論もありますが、一般には幅約一メートル程度です)。
 なお、隣地通行権については、以上のほかに当事者間の合意によりこれを設定することも可能です。隣地所有者と十分に協議することが望ましいと思われます。
 土地の現地調査に際して十分に調査すべき主要事項は以上のとおりですが、この他にも日照の程度、騒音などその実情に応じて程々の角度からの調査が必要になると思われます。
 なお、土地を借地権付で購入し、以後賃貸土地として運営していこうという意思がある場合には、原則として買主にもそれまでの借地契約がそのまま承継されますので、従前の借地契約の内容を十分に吟味し検討することが必要になります。
 次に建物を購入するに際しての権利関係の調査についてですが、この場合には以下の二つの場合に分けて考えていく必要があります。
 まず第一は、その建物と敷地の所有者が同一人の場合です。この場合には、建物に別の第三者が住んでいないかという点、すなわち借家権の有無という問題が調査の主要事項になります。
 その具体的方法としては、まず登記簿の内容を調査して賃借権の登記がなされているのか否かを調査してみることです(もちろんその際に、借家権に限らずその他の権利の設定の有無を調査すべきことはいうまでもありません)。
 次に現地へ行き、その建物に誰か第三者が住んでいないかを調べることになります。借家の場合には、借地の場合とは異なり、現に借家人がその建物の引渡しを受けている限り、その借家権を建物の新所有者に対しても対抗していくことができます(借家法一条)ので、現地調査は特に重要になるのです。この場合、調査の結果その建物に借家権が設定されている。すなわち借家人が存在することが判明した場合には、その点につき売主に対して十分に説明を求めることが必要になります。
 居住目的で建物を購入するような場合には、建物買い取り以前に、もしくは買い取り後一定時期までに借家人に建物から退去してもらうことが必要になりますので、その点について十分に話合いをおこなわなければなりません。かりに退去してもらうことが出来る事になった場合にも、単に口約束で終らせずに、それを文書化すると共に、できれば簡易裁判所で即決和解の手続きをとるとよいでしょう(このような手続きを行っておくと、かりに相手方が約束の期限までに退去しない場合にも、訴訟を行わずに相手方に強制執行を行うことができます)。
 なおかりに、建物は賃貸用に買い受けるのであって、借家権付きでもかまわないという場合には、従来の借家契約の内容を十分に吟味検討することが必要になります。いずれの場合も、建物だけの購入で敷地を購入しない場合には、買主は売主との間で借地契約を結ばなければなりませんので、この点についても売主との間で協議しなければなりません。
 次に第二には、建物の所有者とその敷地の所有者が一致しない場合です。この場合には、購入する建物そのものについての調査は第一の場合と特に異なりませんが、それに加えて建物を借地権付きで購入することになりますから、その借地権の残存期間、地代などの具体的内容および借地権譲渡に関する地主の承諾を得られるかなどの点を事前に十分に調査し確認しなければなりません。もちろん地主の承諾が得られない場合にも、それに代わる許可を裁判所に求めることは可能ですが、いずれにしてもその前提としてこのような調査をすることが重要なポイントです。
 不動産、特に土地に対しては、全体としての土地の効率的利用の確保などのために、各種法令によりその売買、利用などに対してさまざまな規制が行われています。
 不動産を購入しようとする場合、売主・買主双方にとって最も大きな関心事は、その物件の価格でしょう。しかしながら、不動産にはスーパーマーケットに並んでいる商品のような定価は残念ながら存在しません。もちろん土地でいえば一定の相場価格というものは存在しますが、これも一定の価格恚いうことではなく一定の上下幅があるもので、いくらと決まっているわけではありません。またこの価格に関しては国土庁から発表される土地価格の公示制度も存在しますが、実勢価格からは相当はなれているのが実情でしょう。
 このようなことから、取引に際しての土地の価格は、一定の相場価格をにらみながら売主・買主の土地売買の具体的必要度に応じて具体的売買価格が決まっていくというのが実情といってよいでしょう。
 ところで、一定の相場といういい方をしましたが、これはそもそもどのようにして決まるものなのでしょうか。
 その土地の近隣の不動産業者の評価する価格が相場であるということもいえましょう。しかしながら、もう少し経済的根拠に基づいた相当な価格ということになりますと、一定の評価方法の存在が必要になります。
 ここで登場するのが不動産鑑定評価制度です。この制度は国から資格を認められた不動産鑑定士という専門家が、専門的知識に基づいて不動産の価格を評価する制度のことですが、現在ではこのような方法により土地の適正な価格を評価することが可能であると考えられています。土地価格の相場の科学的評価といい換えてもよいでしょう。したがって、価格の点についてお互いに疑義のある場合あるいは当該不動産の価値が十分に明らかでないという場合には、この制度を利用することも得策の一つといえるでしょう。

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