売買契約を結ぶ前に

 不動産売買を行うにあたっては、事前調査を行うことがきわめて重要であることが明らかになりました。そこでここでは、その具体的内容および方法について検討していくことにします。

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 売主の確認をするにあたって、まず重要なことは、売買物件の所有者が誰であるかを調査することです。売買物件の所有者が誰であるかの調査は、売買物件の売主が誰であるかの調査と直接には結びつかないようにも思われますが、通常売主と所有者が一致することが多いですし、またかりに一致しない場合にはなぶ二致しないのか、所有者と売主の関係は具体的にどのようなものなのかを調査する糸口にもなりますので、まず所有者の調査をするべきでしょう。
 ところで前述のとおり、登記事項は常に真実に合致しているとは限りません。真実に合致していない場合には、それを信頼して取引をしても、例外の場合を除いては買主は物件の所有権取得について法律の保護を受けることができなくなってしまいます。
 したがって、物件の所有者が誰であるかを調査するにあたっては、登記簿の調査は不可欠ではありますが、その調査結果を鵜呑みにすることは危険です。物件所有者の調査に際しての有力資料程度と考えておいた方がよさそうです。
 登記簿の調査だけでは不十分、ということになれば、次にはなにを調査すべきでしょうか。登記簿と同様に完全ではありませんが、一つの有力な対象としては当該物件の固定資産税を誰が実際に支払っているかという点があります。この点に関しては、関係官庁が発行する固定資産税課税評価証明書という文書があり、この文吉上で納税義務者と記載されている者、すなわち誰が納税義務を負っているかを確認することができます。もっとも証明書は誰でも入手できるものではありませんので、この点に一つ問題はあります。
 以上のほかに、物件が建物である場合には、建築確認申請が誰の名義でなされているのかも所有者を判断する一つの資料となるでしょう。また、所有者と主張する者が当該物件を前所有者から譲り受けている場合には、その前所有者に会って本当にその者に浪浪したのか否かを確認することや、当該物件の近所の住人に物件の所有者が誰と考えられているのか確認することも一つの方法でしょう。
 以上のような調査により、当該物件の所有者が誰であるかについての確実性は次第に高まっていくことになりますが、これだけやっても一〇〇%確実ということは困難です。したがってこのような場合に大切なことは、当然のこととはいえ、やはり信用できる相手を取引先に選択するということです。売却を特に急いでいるとか、価格が不相当に安いというような場合には、一応なにか問題があると考えた方がよいと思われます。
 ところで、このような調査により、一応所有者と考えてよいと思われる者が特定された場合において、その者と売主が一致する場合には特に問題はありませんが、両者が一致しない場合には、両者の関係について特に調査をする必要が生じてきます。なぜなら、売主は他人の不動産を売るわけですから、売主と所有者との間で事前に話がついていない限り、後になって問題が生ずることは避けられないと思われるからです。このような場合には、信頼に値する売主であれば所有者との間でこの点についてなんらかの話し合いを事前に行い、多くの場合その結果を書面にしていると思われますので、ぜひともその内容を確認することが必要です。
 ところで、物件の所有者と売主が一致する場合、あるいは一致しなくとも両者の関係について十分に確認がとれた場合には、売買の直接の相手方である売主との間で次項の調査ないし確認をとることが必要になります。すなわち、売主のタイプ別に応じた調査が必要になります。
 売主が未成年者の場合、未成年者とは満二〇歳未満の者をいいます(民法三条)が、このような者が単独で法律行為(ここでは売買)を行っても、親権者ないし後見人などの法定代理人の同意を得ていない限りは、後になって売買の意思表示そのものを未成年者本人もしくはその法定代理人に取消されることがあります(民法四条二項・一二〇条)
 また、未成年者が事理弁識能力もないほど未熟である場合には、そもそも意思表示自体が無効、すなわち取引を直接本人がすることができないと考えられておりますので、あわせて注意が必要です。
 そこでこのような事態を避けるためには、特に相手が若年者である場合には身分証明書などによって年齢を確認し、未成年者であることが判明すれば、その法定代理人に会うことが必要になります。そのうえで、当該取引を行うことに同意するか否かを尋ねてみる必要があります(なお、法定代理人がすでに当該物件の随意処分を未成年者に許可している場合(民法五条)、同じく未成年者が営業行為を行うことを許可している場合(民法六条)には、その旨の確認をすれば十分ですが、このようなことは一般論としていえば稀なことでしょう)。
 そして、かりに同意する旨の回答を得た場合には、それを書面でもらっておくことが得策です。
 なお、未成年者に両親がいる場合には、原則として両親が共に法定代理人となります(民法八ー八条)ので、両親双方から同意をもらっておくことが必要になります。
 また未成年者が事理弁識能力もないほど未熟である場合には、前述のとおり直接本人が法律行為、すなわち契約をすることができませんので法定代理人に本人の代理をしてもらうことが必要になります。この場合、本人に両親がいる場合には、前述の場合と同様に両親双方に代理人になってもらわなければなりません。
 法人が売主である場合には、法人の意思を確認することが必要になります。法人の意思を外部に表明する者とは当該法人の代表者ということになりますから、まず誰が法人の代表権限を有する者であるのかを確認しなければなりません。法人は法務局に法人登記がしてありますので、その登記簿謄本をとってみることが得策でしょう。
 このようにして法人の代表者が誰であるかが判明しても、はたして代表者の意思が法人内部の適正な意思決定手続きを経たものであるのか否かは明らかではありません。そこで、このような手続きが法人内部でとられているのか否かを確認してみなければなりません。
 このように法人と取引をする場合には、個人と取引する場合以上に細心の注意が必要となってきます。
 ところで、法人とはいってもその設立ないし存立目的からいって内容は一様ではありません。公益を目的とする公益法人、営利を目的とする株式会社などの営利法人、その他の中間法人などさまざまです。この内容の相違に応じてその代表者も公益法人ならば理事(民法五三条)、営利法人中、例えば株式会社ならば代表取締役(商法二六一条)などとなります。これに応じて法人の内部意思決定機関も、公益法人ならば理事会ないし総会(定款の規定の確認が必要です)、営利法人中、株式会社ならば取締役会(商法二五九条・二六〇条ノ四)ということになります。
 したがって法人を相手に取引を行う場合には、これらの事項を十分に調査し、必要に応じて法人内部の議事録の閲覧を求めることなどが必要となります。
 相続財産である不動産が売買の対象となった場合には、まず相続人が誰であるかを調査しなければなりません。相続財産が遺産分割前である場合には、その相続財産を処分するこついて相続人全員の同意が必要となりますので、その前提として相続人が誰であるかを具体的に確定しなければなりません。そのうえで当該相続財産を処分するに関して相続人全員の同意を得なければならないのです。
 なお遺産分割がすでに終了している不動産については、以上のような問題は生じません。なぜならば、遺産分割が終了している以上、当該不動産は特定の誰かの所有に確定的に帰属していますから、相続人全員の同意を得る必要など生じないわけです。
 なお、以上の例外として注意を要するのは、被相続人が遺言により当該不動産を相続人以外の第三者に遺贈をしている場合です。この場合には、遺言者の死亡により当該不動産は受選者である第三者に移転しますので、相続人の同意を得ること自体無意味になってしまいます。
 したがって相続財産を購入しようとする場合には、遺言の有無およびその内容を十分に調査することが重要になってきます。

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