不動産取引の基礎知識

 私達が不動産ということばを使う場合には、それは通常、土地および建物のことを指しています。ところで民法は、不動産について「土地およびその定着物」(民法八六条一項)と定義しています。
 ここでいう土地とは、土地だけでなく、それに一体として付着している石垣、排水溝(ただし、その土地の範囲内の部分に限ります)をも含んでいます。しかし、地中にあるとはいえ、鉱物や温泉は土地との一体物としては扱われていません(鉱業法二、三条、温泉法二条)。
 次に、土地の定着物についてですが、まずあげられるのは建物です。建物以外のものとしては、土地上の立木、立木上の果実などがあげられます。これらのうち建物は常に独立の不動産として扱われます。しかし、立木、立木上の果実などは、土地に対する独立性が弱いために、特に土地と別個のものとして扱われないかぎり、土地と一体として扱われることが通常です。
 以上のように、民法上においても不動産といえば例外を除けば土地および建物ということになります。ただし前述のように、土地および建物は互いにまったく独立した不動産ですから、それぞれを互いに個別に処分できることはいうまでもありません。

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 ところで、以上のような内容の不動産を売買する場合に、通常の物の売買の場合と比べてどのような相違が生ずるでしょうか。この点について以下簡単に説明します。
 まず第一点は、通常の物の売買の場合には、代金を支払って物の引渡しを受ければそれで売買は終了しますが、不動産売買の場合にはこれ以外に登記手続きが必要になります。不動産上の権利を第三者に主張するためには、その権利について登記をして公示をしておくことが必要だからです。
 第二点は、通常の物の売買の場合には、相手が所持(占有)している物がかりにその者の所有物でなかったとしても、買主が過失なくこれを相手の所有物と信頼して購入すれば、買主の所有権取得は法律上も保護されますが(民法一九二条)、不動産売買の場合には、登記を信頼して不動産を購入しても、登記が真実に合致しない場合には、買主の所有権取得は例外を除いて法律上保護されません。すなわち、通常の物の売買の場合には、売主の所持(占有)に対する信頼は法律上も保護されますが、不動産売買の場合は、登記を信頼しても法律上保護されないことがあるのです。
 第三点は、通常の物の売買も不動産の売買も、共に法律上の契約を通じて行われるものですから、民法などにより規制がなされることは共通していますが、不動産売買については後述のとおり、民法以外にもさまざまの法令により規制がなされています。したがって、取引を行うにあたっては、これらの規制について種々の角度から多くの調査を行うことが必要になります。すなわち、十分な事前準備が必要になるのです。
 以上のとおり、不動産売買を行うにあたっては、同じ売買とはいっても不動産売買に特有のいくつかの特質があることが理解していただけたと思います。取引にあたっては、これらの点を注意して局到な計画、準備が必要です。
 不動産にはさまざまな権利が複雑に絡みあっていますので、実物を見ただけでは到底理解できない場合が多いかと思われます。
 このような意味からも、その不動産に所有権も含めてどのような権利関係が生じているかを公示する制度として不動産登記制度が存在しています。もちろん前述のとおり、登記内容には虚偽のものもありえるわけです。
 登記を信頼しても買主が法律上保護されないこともあり得ますが、登記制度をめぐる権利関係の公示制度として重要な役割を果たしていることはいまさらいうまでもないことでしょう。
 不動産取引は、それ自体きわめて高価な不動産を対象としているうえに、前述のとおり不動産をめぐっては複雑に権利関係が絡みあい、かつさまざまな法的規制がなされています。他万で権利関係を公示する制度としての登記が完全に信頼できないことなどの事情もあり、不動産を売買するにあたっては、さまざまな事前調査が不可欠となってきます。事前調査として最小限必要な事項は以下のとおりです。
 1. 所有者は誰であるかを含めた売主および買主の確認
 2. 物件に対する各種権利関係およびその内容の調査
 3. 物件に対する各種法令上の規制の有無および内容の調査
 4. 物件の現状および価格の調査

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