贈与・遺贈

 私の伯父はなかなかの資産家ですが、妻子との折り合いが悪く、一時期などは家を出て、妹である私の母を頼り、生活の面倒をみてもらっていました。
 そのせいか、伯父はめいである私に「自分が死んだときは、田舎にある土地六〇〇平方メートルをお前に遺贈する」とロぐせのようにいい、事実、遺言書にもそのような内容を記載していたとのことでした。
 しかし、伯父よりも早く母は事故で死亡してしまい、後を追うように伯父もそれより一カ月後に病死してしまいました。
 この場合、母の娘である私には、伯父の不動産六〇〇平方メートルを受継ぐ資格があるのでしょうか。

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 贈与と遺贈はいずれも無償で財産を与えるものですが、法律的な取扱いでは両者に差異が生じます。この両者についての差異は以下で説明するとおりです。
 贈与とは、無償(つまりただ)で財産を他人にやる約束をすることです。贈与の約束は口頭の約束で成立しますが、書面によらない贈与はいつでも取消すことができます。
 なお、贈与者が死亡することによって効力を生ずる贈与を「死因贈与」といいます。通常の贈与は死後において相続人の財産から受贈者になされるものですから、実質的には遺贈に近い性質を持つものといえます。
 したがって、死因贈与の効力については遺贈に関する規定が準用されています。しかし、遺言の能力、遺言の方式に関する規定などはこの限りではありません。
 遺贈とは、遺言による財産の無償譲与です。贈与が贈与者の生前における受贈者との契約であるのに対し、遺贈は遺言によるものですから、単独の行為であり、死後の行為であるという点に差異がみられます。
 贈与の具体的ケース
 (1)家族名義預金は贈与として取扱う
 預金者が自己名義でなく家族の者の名義で預金する場合、その目的としては次の二つが考えられます。つまり、親が子に財産を与える目的で、子名義の預金をする場合、債権者の追及をのがれるため、家族名義で預金する場合、がそれです。
 預金の所有者はその名義人ですから、預金名義人が預金のための資金を獲得した方法により法律的な評価を受けるのは当然です。親が子に財産を与える目的で預金したのであれば、当然贈与となります。また、債権者の追及をのがれるため家族名義で預金する場合には、宗族に贈与する意思はないと思われます。しかし、無償で預金名義人に預金がなされている以上、そこにはやはり贈与があったものと推定されます。
 真実贈与する意思がないのならば、事実関係を明らかにして、その者は贈与を否定しなければなりません。
 (2)営業資金の贈与は相続財産の前渡し
 営業資金の贈与は、生計の資本となり得るものです。民法九〇三条は、共同相続人中の誰かが被相続人から生計の資本として贈与を受けたときには、この者を特別受益者と認めています。このため、贈与を受けた額を相続財産に加算したものを相続財産とみなすという規定により、営業資金の贈与が相続財産の前渡しであるということは明らかです。
 (3)農地・山林の贈与と相続
 相続・贈与があれば、その者は相続税、贈与税をそれぞれ負担しなければなりません。ただし、農地、山林の贈与・相続については税法上優遇措置がなされています(担税特別措置法七〇条の四〜六)。
 すなわち、三年間以上農業・林業に従事する者に対して農地・山林を贈与した場合には、贈与税額に相当する担保を提供すれば、贈与者が死亡するまでの間、贈与税の納税が猶予されます。
 なお贈与者が死亡し、贈与を受けた者が相続人となったときは、この者は贈与者から相続により生前受けた贈与物を取得したものとみなされ、それについての相続税が課されることになります。
 しかし、相続税の納付についても、相当な担保の提供により、この者箆相続人の死亡、または二〇年間は、相続税の納税が猶予されることになります。これらの制度の目的は、農地などの散逸を防止しようというところにあります。
 (4)生命保険金と贈与
 生命保険金と贈与の問題は、保険金受取人として誰が指定されているかによって異なります。
 受取人が被保険者である場合には、被保険者の死亡により、その者の相続人が受取人たる地位を承継し、それが相続財産を構成するわけですから、贈与の問題は生じません。
 受取人が相続人とされている場合、例えば受取人が妻とされている鳩合には、実質的贈与または遺贈があったものとみて、それを取得した妻は特別受益者とみなされます。そして、保険金請求権の取得は妻の固有の権利(この場合、妻の有する保険金受領権は保険契約に基づいて初めから定められている)として取得したものですから、遺留分減殺請求権の対象とはならないものと考えます。
 なお、特別受益分として算定される額は、保険金として受取った金額そのものではなく、被相続人が支払った保険料が基準となます。そして、被相続人の死亡時における解約価格に相当する金額と考える見解が有力です。
 遺言が効力を生ずるのは、遺言者の死亡時です。したがって、遺贈も停止されていない限り、遺言者の死亡が生じると考えられます(民法九八五条)。
 遺言者より先に受選者が死亡したときは、遺贈は効力を生じない’とされています(民法九九四条)。遺贈は受遺者本人に財産を与えるのが通常なので、受選者の相続人に与える必要はないと考えられるからです。ただし、遺言で別段の意思が表示されているときは、それにしたがうとされています。
 また、遺贈の目的とされた財産を遺言者が死亡前に処分したときは、遺贈は効力を生じません。なぜなら、目的物たる財産を処分した以上、そこには遺贈の取消しがあったと認められるからです。

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