寄与分制度

 長い間病床にあった父が、先日死去いたしました。父は生前、三つの喫茶店を経営するらつ腕家でしたが、病気になってからは私が経営にあたり、今では父以上の実績をあげたと自負しています。
 そこで相続についての質問なのですが、これらの店はすべて父名義のため、一般的に考えれば、母や二人の弟妹とともに私の相続分も法律で定められた内容により決めるられわけですが、彼らは喫茶店の経営にはまったく関与していないわけですから、このような相続の方法は公平を欠くのではないかと思います。聞くところによりますと、寄与分制度が新設されたということですが、これは、どういう内容のものでしょうか。

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 寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加につき特別に寄与した者に寄与の方法、程度、その他の事情に応じて、遺産の分割の協議または審判において特別に財産を取得させようとするものです。
 すなわち、被相続人の家業である農業や個人商店に従事するなどの方法により、被相続人の財産の維持増加に特別の寄与をしていながら、その寄与に相当する報酬を受けていない者があるとき、その者に相続財産から相当額の財産を寄与分として与えようとするものです。
 特別受益者制度が、被相続人の財産から特定の相続人が贈与を受け相続財産を減少させた場合であるのに対し、寄与分制度は、特定の相続人の関与により相続財産を維持増加させた場合の問題です。昭和55年の民法改正によって、法律上も寄与分制度が新設されるに至りました(民法九〇四条の二)。
 昭和55年の民法改正による寄与分制度の新設では、寄与分を受ける資格は相続人だけに限られるとなっています。
 したがって、相続人でない寄与者、例えば内縁の妻、夫が死亡した後に婚家にとどまり、婚家の家業に従事し婚家の財産を増加させた嫁などについては、寄与分を受ける資格がありません。
 寄与分が認められるには、被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与がある場合に限られます。
 「特別の寄与」の内容を具体的に示すことはきわめて困難です。夫婦の場合においては、相互に同居協力扶助の義務を負っています(民法七五二条)ので、夫婦間の共同生活を送っただけでは特別の寄与と認めることができません。ただし、夫が寝たきりの状態のため生活費用をすべて妻が負担したようなときは、特別の寄与と当然に認めることができるでしょう。
 これは親族の関係においても同様です。つまり、被相続人と相続人は相互に扶養する関係にあります(民法八七七条)ので、扶養義務を尽しただけでは特別の寄与があったとはいえません。ただし、相続人間において公平を期す上で無視できないような財産の維持・増加に特別の貢献があったと判新しうるときは、そはり特別の寄与をその者に対して認めるべきだといえるでしょう。
 寄与分の算定方法については、民法は具体的に定めておりません。このため寄与の時期、程度、方法などを考慮し、平均賃金、生活費の統計を活用して具体的に特別寄与者の相続分を定める必要があります。この場合、特別受益者に対する受益の評価方法が参考になると思われます。
 寄与分の認められる限度は、相続財産の価格から遺贈の価格を控除した額を超えることはできないとされています。すなわち、遺贈の額が寄与分として受けるべき価格を超えている場合でも、遺贈から取戻しはできないということになります。この点は、遺留分減殺請求権と異なるところです。
 また解釈上、寄与分は相続財産全額になることはありません。どの範囲まで認められるかについては争われていますが、遺留分を侵害しない範囲で寄与分を評価すべきだといえるでしょう。
 なお寄与分を定める手続は、基本的には遺産分割協議でなされます。遺産分割協議において寄与分について合意ができれば、寄与分か定められます。
 遺産分割協議において寄与分がととのわないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所の審判によって定められます。また寄与分を定める審判を申し立てる場合には、必ず遺産分割の審判を中立てる必要があります。なぜなら、寄与分は遺産分割手続の中で定められるからです。
 なお、寄与分の審判を申し立てた場合、調停に付される場合があります。調停手続において寄与分についての合意が成立すれば、それによって寄与分が定められます。

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