遺産の分割

 父の死亡によって、遺産相続の問題が起こっています。遺産といっても、相続の対象となるものは父が今まで住んでいた家屋敷しかありません。そしてこの家屋敷については、遺産分割の協議が終るまで、近くに住んでいる長男の管理にまかせるということでひとまず話合いがつきました。
 しかし長男は、これを自分一人の単独名義として相続登記し、第三者に売却してしまいました。このような行為について、他の相続人である私と妹はどのように対処していけばいいのでしょうか。

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 遺産分割とは、相続人が複数ある場合に、各相続人間で相続した財産を分配することをいいます。すなわち、各相続人の相続分が遺言または法律で決っていたとしても、各相続人がすべての相続財産を共有し、共同管理・運用することはできません。そこで、相続人間で財産を分配する必要があり、その手続を遺産分割というわけです。
 民法は遺産分割の基準として、「遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態、あるいは生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定めています(民法九〇六条)。
 遺産の中には、種々雑多な物が含まれています。現金ならばそのまま分割できますが、土地については分割することにより使用価値が下がってしまうことも考えられ、家屋や、一家具、自動車においてはこれを分けるこもかないません。また相続人についても、妻と子では必要なものも異なります。
 そこで法律は「一切の事情を考慮してこれをする」と抽象的な規定を置いているわけです。この規定によって、各相続人は必要とする財産を取得でき、しかもその取得する財産の額が相続分に相当するよう公平妥当な分割がなされるよう配慮されているのです。
 相続財産は、被相続人の死亡により当然に相続人に承継されるものです。しかし、どの相続人がどの財産を承認するかは、遺産分割によってはじめて決ることになります。そこで、遺産分割が終るまで相続財産の管理をしなければならないわけですが、遺産分割までの相続財産の管理については、共同相続人全員で管理しなければなりません。このため、実際上は相続人の一人が相続財産の管理をしていたとしても、理論的には相続人全員が遺産の管理をする関係にあるということになります。
 相続人は、自分の財産と同一の注意をもって相続財産を管理しなければなりません。相続財産を管理する相続人は、将来遺産分割により他人の物になってしまう物であっても、自己所有物と同一の注意義務をもってそれを管理しなければなりません。
 保存行為とは、財産の現状を変えることなくそのまま維持する行為をいいます。保存行為については、各相続人が、単独ですることができ、具体的な例としては家屋の修理や、土地や家屋を不法占拠している者に対する明渡し請求などがこれにあたります。
 相続財産は、遺産分割が行われるまでは共同相続人が共同管理しなければならないものです。このため、相続人の一人が相続財産を勝手に処分することはできません。
 例えば、共同相続人の一人が(遺産分割協請書を偽造したりして)相続不動産に自分の単独名義で相続登記をし、それを第三者に売却した場合を考えてみましょう。
 判例は、このような登記があっても、本件不動産が登記した相続人の単独所有になることはないと結論しています。
 このため、売却した相続人を除いた他の共同相続人は、不動産を売却された第三者とともに、本件不動産について共有名義に登記を変更するよう請求することができます(最高裁判決・昭和38・2・22)。
 また、相続財産である家屋などを第三者に新たに賃貸することも、処分にあたり単独ではできません。これに対して、従来から賃貸していた家屋を第三者に貸すことは本項でいう処分には該当しません。なぜなら、この場合には、権利の性質が従来と何ら変わることがないからです。
 相続した債権・債務は、分割手続をとらなくとも相続分に応じた権利を取得し、義務を負うとされています。
 この項では、相続によって債務(公人の借金)を負担する場合についても考えてみましょう。すでに遺産分割がなされているようなとき、債務を相続しているそれぞれの相続人が債務を無視してプラスの相続分だけを取得してしまう可能性があります。そこで銀行などでは、遺産分割手続終了前には相続人全員の承諾による依頼書の提出を求めているのが実情です。この手続によって、めいめいの相続人は相続人全員の同意のない限り預金の解約、引き出しはできなくなります。
 また、相続財産における債務が連帯債務の場合には、債権者に対し相続人全員が各自全額支払の責任を負うか、相続分の限度において連帯責任を負うか、争われています。
 相続税の申告は、相続開始後六ヵ月以内に申告書を税務署に提出しなければなりません。この期間内に遺産分割協議ができないときは、遺産を実際に受領したかどうかを問わず、相続分に応じて相続したものとして相続税の申告をしなければなりなりません。遺産分割により相続税を過納している場合には、還付を受けることになります。
 また、遺産分割前に相続財産から生じた収益については、実際に受けとらなくとも収入があったものとして、相続分に応じて所得の申告をしなければなりません。
 遺産分割の方法は、被相続人が遺言で遺産の分割方法を定めたときはそれにしたがって行われ(指定分割)、指定がないときは相続人全員の協議によって定められます(協議分割)。
 また、協議がまとまらなかったり、事実上協議することができない場合には、家庭裁判所の審判により(審判分割)分割手続がなされます。
 指定分割とは、被相続人が遺言によって分割方法を定めるものです。例えば、長男には現在住んでいる家屋敷を、二男には株券を、長女には預金を与える、と遺言してある場合をいいます。
 指定分割がなされるときには、各相続人の取得分は法定相続分と異なるのが通常です。したがって、この場合には、分割方法の指定とともに相続分の指定があったものと解されています。なお、指定が一部分に止まる場合には、残部については協議分割がなされなければなりません。
 協議分割は、相続人全員の合同協議により遺産分割する方法です。遺言の一般化していないわが国においては、もっとも一般的な分割方法といえます。協議分割は相続人全員の合同協議ですから、一部の相続人を参加させなかったり、一部の反対者を無視して多数決で決めることはできません。あくまで全員の一致が必要です。
 協議分割においては、全員の合意があればどのように相純財産を分割してもかまいません。極端な場合には、財産を欲しない相続人に対しては財産を分け与えなくともよいということになります。また、遺産分割の指定がなされていても、相続人全員の合意があれば、それを変更して自已に分割することも許されることになります。
 しかし、資力のない相続人の一人が全負債(マイナスの相続)を相続し、他の相続人が資産(プラスの相続)を相続するということは債権者の保護という面からも許されていません。被相続人の債務については、各相続人とも相続分の範囲で責任を負わなければなりません。この点で、協議分割にも一定の限度があるといえます。
 遺産分割の協議が成立した場合、遺産分割協議書が作成されるのが通常です。しかし、遺産分割協議書の作成は遺産分割の効力要件ではありませんから、協議書のない遺産分割も有効ということになります。ただ、協議書がなければ不動産の相続登記、預金の名義変更ができませんので、協議書の作成はするにこしたことはありません。
 協議分割がまとまらないとき、あるいは協議分割ができないときに、家庭裁判所の審判により分割を決定する方法を「審判分割」といいます。審判の申立てができるのは各相続人であり、申立てをなすについては、利害関係人を表示し、財産目録を添付して行います。
 審判の申立てがあると裁判所は、遺産分割の調停を試み、調停が成立すると調停分割をなし、調停が成立しない場合には、相続人と相続財産を確定させた上で、各相続人の相続分と一致するように相続財産を分配します。
 審判分割においては、相続分と一致するように財産の分配がなされますが、具体的に、どの相続人がどの財産を取得するかは、裁判所の自由な裁量に委ねられています。
 遺産分割が行われると、その効力は相続開始のときにさかのぼります。
 すなわち、遺産分割によって取得した財産は、被相続人から直接受継いだ形となります。このため、不動産を取得した相続人は、遺産分割を理由に被相続人名義から直接自己名義に移すことができます。
 しかし、共同相続人の一人が第三者に相続財産を(不当か否かにかかわらず)売却しているときはこの限りではありません。
 つまり、この第三者が共同相続人の持分を差押えているときには、別の共同相続人が不動産を取得しても、差押債権者の権利を排除することはできません。

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