死後の人格権

 最近、死者の名誉をめぐる問題がよく報道されています。おもに、著作物の内容が問題になるようですが、現実問題として、死者の人格を保護する必要はあるのでしょうか。

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 死者の人格価値としての名誉は、第三者からの侵害に対して法的に保護されるものでしょうか。この問題を考える前に、まず死者に対する名誉毀損が遺族近親者の名誉をも毀損する場合と、死者の名誉そのものが毀損される場合とをはっきりわけて考えてみる必要があります。
 前者の場合は、遺族近親者に対する名誉毀損と考え、民事及び刑事上の処理をすればよいのですが、後者の場合はかなり難しい問題となります。人格権としての名誉はその人固有の利益であり、その人の死によって消滅するものと考えるならば、その法的保護の可能性も必要性もないはずです。
 しかし、社会生活において死者に対する悪しざまな言動が他人から強い非難を受けることはしばしば見聞されるところで、死者の人格的価値に対し社会が一定の価値評価を行っていることは事実です。
 このような見地から、刑法二三〇条二項は、死者の名誉そのものを保護するために、死者に対する名誉毀損が成立することを認めています。
 死者の名誉に対する侵害を保護する規定は、民事上ではわずかに著作権法六〇条がみられるのみです。これは著作者の死亡後もその作品を保護しようというものですが、近時の人格権思想の発展により、前記のような社会意識は法的な確信にまで高めれられており、人格的価値の一側面である著作者人格権のみならず、人格的価値のあらゆる側面が法的保護に値するものといえましょう。
 死者の名誉が民事上も保護に値するとしても、誰によって民事上の諸権利は行使されるべきでしょうか。著作権法一一六条のように、法律により近親者の順位を指定することも考えられます。ただ、近親者により名誉が毀損されることも考えられますので、それだけでは十分でないようです。この点は、今後検討されなければなりません。
 また、死者の名誉は永久に保護されるべきものではなく、一定の時間的制約が必要ではないかとも考えられています(著作権法では五〇年)。
 死者の名誉が現実に毀損されるおそれがあるとき、またされたとき、救済の方法として差止請求や名誉回復のための適当な処分(民法七二三条後段)を求めることができることはもちろんですが、近親者が慰籍料の請求をできるかどうかは疑問です。
 死者に対する名誉毀損罪は、通常の名誉毀損罪と同様に親告罪とされています。つまり、告訴がなければ犯罪となりません。刑事訴訟法二三三条一項は、死者に対する名誉毀損罪の告訴権者を「死者の親族又は子孫」としています。親族の範囲は民法の規定(七二五条から七二九条)によります。また、子孫とは親等のいかんを問わず、血族である直系卑属のすべてがそれに含まれます。

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