位牌や遺骸などの承継

 三ヵ月前に祖父が死んで以来、親戚内がうまくいっていません。というのは、長男である父が承継すると思われていた位牌・遺骨を、次男である叔父が承継したからです。次男であるものの、叔父は三代続いた家屋敷を受継いでおり、祖父の面倒もよくみてきました。このような場合、父の権利はどのようになっているのでしょうか。

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 民法は「系譜、祭具および墳墓」については、一般の相続財産から除外して、相続とは別の方法でその承継者を定める旨の規定を置いています(民法八九七条)。
 系譜とは祖先以来の系統を表示する家系図などをさし、また祭具とは祖先の礼拝に用い供される位牌・仏壇をさし、そして墳墓とは墓石・墓碑などの墓標をさします。いわゆる墓地、またはその使用権については、墳墓そのものではありませんが、これに準じたものとして取り扱うべきであるとされています。
 これらを承継する者について民法の旧規定は「系譜、祭具及ビ墓ノ所有権ハ家督相続ノ特権二属ス」としていました。現行民法においては「家」制度の下にあった家督相続は廃止されましたが、祭具などの承継は共同相続に親しまないこと、国民の伝統的感情・行事を尊重するという見地から、相続財産とは異なった承継の方法を定めました。
 第一順位の承継者は「被相続人の指定にしたがって祖先の祭祀を主宰すべき者があるとき」は、その者が承継すると定めています。指定の方法は口頭、文書のいかんを問いません。
 第二に「慣習にしたがって祖先の祭祀を主宰すべき者」が承継します。
 第三に、この慣習が明らかでないときは家庭裁判所がこれを定めることになります。具体的には調停または審判の手続により行います(家事審判決一一条、一七条、九条乙類六)。
 なお、このようにして祭具などを承継したとしても、承継者はこれらを処分し得ないものではなく、公序良俗に反しない限り、自由に処分できるものと考えられます。したがって、墓地または、その使用権の承継者が、これを勝手に処分したとしても、ほかの相続人がその返還を求めることはできないとされています。
 遺骸・遺骨は、有体物(民法八五条)として所有権の目的となるものでしょうか。仮にこれを肯定すれば、遺骸・遺骨は相続の対象となり、その所有者は死者の相続人となります。
 しかし、遺骸・遺骨が物に対する自由な使用、収益、処分を内容とする所有権の支配に服すると考えるのは妥当ではありません。なぜなら、遺骸・遺骨はもっぱら埋葬、祭祀、供養の対象となり得るのみで、これを使用、収益するという事態は考えられませんし、処分としての放棄も許されないからです。
 また、遺骸・遺骨が相続の対象となるとすれば、相続法上遺産分割の手続(図法九〇六条以下)に服し、また相続放棄(同法九三八条、九三九条)により埋葬等の権利義務を放棄しうるということになり、妥当とは思われません。
 このような考え方からすると、遺骨・遺骸は、埋葬、祭祀、供養のための管理を問題にすれば足りると考えられます。
 民法八九七条は「系譜、祭具及び墳墓」について、相続財産として一般の相続法の適用は妥当でないとして、これらの承継者は、まず、被相続人の指定により、この指定がない場合は慣習にしたがうものと規定しています。遺骸・遺骨も前述の系譜、祭具及び墳墓の承継に準じて、その承継者を決すべきであるとするのが一般で妥当な見解と思われます。
 遺骨などの引き取りをめぐる紛争は、民法の規定に準じ解決されることになります。

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