死の判定

 人の死は民事上は権利義務の終期として相続の開始時期となり、刑法上は攻撃の客体が生体か死体かにより殺人罪か死体損壊罪か決まることになり、その死を判定することは医学上のみならず法的にも重要となります。
 医師が死の宣告を下すのは、通常「呼吸の停止」「心得動の停止」及び「瞳孔反射の消失」の三徴候の確認によります。
 そして法律学上も、この三徴候をもって死と判定するのが有力とされています。

スポンサーリンク

 最近の医学のいちじるしい発展は、心臓移植など臓器移植をも可能にするに至りました。このため、死体から臓器をできるだけ新鮮な状態で取り出して移植するために、前述の三徴候を確認するよりも前に、早く確実に死を判定することはできないか研究されてきました。そして、人体全体の機能とは無関係に人工的に呼吸や心臓の動きを統制する技術が開発されるようになり、三徴候説によって死を判定することは無意味ではないかと考えられるようになりました。
 そこで「脳死」という新しい死の判定基準が提唱されるようになりました。つまり、脳幹という脳の中枢の死をもって死を判定しようというのです。しかし、脳幹が死んだか否か直接認識する技術は未開発で、脳波や前述の三徴候などを調べることで間接的にこれを判定せざるを得ないのが実情のようです。
 ただ、法律上は、このような医学の発達をふまえて脳死論を死の概念として、またその判定基準として肯定する考えが有力となってきています。
 人の死亡時期がいつかということは、相続上深刻な問題です。例えば、父と子が同一の船で遭難し、両方とも死亡した場合を考えてみましょう。家族は父の母と妾だけとします。子が父よりも一瞬でも早く死亡すると、父の相続人は妻と母です。父が先に死亡すると父の相続人は妻だけです(正確には、いったん妻と子が相続人となり、さらに子の相続分を妻が母として相続する)。このように、どちらが先に死亡するかで相続分が大きく異なるわけですが、実際問題として、船舶の遭難や飛行機事故などの場合、どちらが先に死亡したかを証明することは不可能といえます。
 このため民法は「死亡シタル数人中其一人ガ他ノ者ノ死亡後生存シタルコト分明ナラザルトキ」これらの者に同時に死亡したものと推定する(民法三二条ノニ)としました。その結果、この父と子は同時に死亡したものと推定され、父子の間に相続は起こらず、父の相続人は母と妻となります。
 同時死亡の推定は、以上の例のような同一の危難による死亡の場合に限られず、まったく異なる危難によって死亡したときで死亡の前後がはっきりしないという場合にも、広く適用されます。

冠婚葬祭
婚約の成立と解消/ 結婚の成立/ 夫婦間の法律関係/ 内縁の夫婦/ 離婚状況とその歴史/ 離婚の方法/ どのような場合に裁判で離婚が認められるか/ 協議離婚の無効と取消/ 離婚と財産関係/ 離婚と子供/ 財産分与、慰謝料は課税されるか/ 親族の範囲/ 実子とは/ 養子とは/ 親権とは/ 後見とは/ 扶養とは/ 死の判定/ 認定死亡と失踪宣言/ 位牌や遺骸などの承継/ 死後の人格権/ 相続の基本/ 相続人/ 相続分/ 遺産の分割/ 遺留分/ 寄与分制度/ 贈与・遺贈/ 遺言の方式と執行/ 戸籍の知識/ 戸籍のしくみ/ 氏と名の知識/ 国籍の取得と帰化/ 国籍の喪失/ 戸籍の訂正/ 住民登録/

        copyrght(c).冠婚葬祭専科.all rights reserved

スポンサーリンク