扶養とは

 私は五人兄弟の長男のため、七年前より母を引取り、ともに生活しています。しかし他の四人は、私と大差ない経済力を有していながら、私が母を扶養して以来、一銭のお金も送ってきません。
 何とかして、月々いくらかでも弟や妹たちに負担させたいと思っているのですが、それは可能なのでしょうか。

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 いつの時代いかかる社会でも、乳幼児・児童などの来成熟の子や老人、身体障害者、あるいは働く意欲と能力があっても失業などの社会的原囚によって自分の資産や労働力だけで独立して生計を立てることのできない人がいます。これらの生活不能者の生活を援助し、最小限度の生活を保障するのが扶養の制度です。
 このため憲法は、国民の基本的人権の一つとして生存権を保障しています(二五条)。これを具体化するため、生活保護法をはじめとする各種の社会保障制度が整備され、国家扶養を中心とする公的扶助が拡充されています。しかし、憲法は同時に私有財産性を基本原理としているため(二九条)、国民の生存権保障の責に任ずる国家の資力にも限界を設けています。そこで、親子夫婦とそれ以外の親族間の私的扶養は、国家の公的扶助に優先して行われ、公的扶助は補完的なものとされています(生活保護法一条)。
 夫婦は、同居し、たがいに協力扶助しなければなりません(民法七五二条)。このため、たがいに扶養義務があることはいうまでもありません。これは、正当な理由で別居している場合も同じです。
 親子はたがいに扶養義務があります。とくに、親は未成熟の子に対しては自己と同程度の生活を保障すべき義務(これを「生活保持の義務」といいます)があります。また、成人した子に対しては、自己の社会的地位相応の生活をしてなお余裕がある場合に最小限度の生活援助をする義務(これを「生活扶助の義務」といいます)があります。そして、子は老いた父母に対し生活扶助の義務があります(民法八七七条一項)。
 祖父母と孫の問にも、直系血族としてたがいに扶養義務があります(民法八七七条一項)。
 兄弟姉妹間においても、たがいに扶養義務があり(民法八七七条一項)、相互に生活扶助することが要請されています。
 その他の三親等内の親族の直系血族や兄弟姉妹を除いた三親等内の親族、例えば伯父叔母と甥姪、配偶者の父母とか連れ子などは「特別の事情」がある場合にだけ家庭裁判所の審判によって扶養義務を負わされることがあります(民法八七七条二項)。
 いかなる場合に扶養当事者間で現実の扶養義務が発生するかは、扶養当事者の種類によって多少違っています。それについて、以下で説明していくことにしましょう。
 夫婦の間はもちろん、親の未成熟の子に対する扶養義務は、とくに相手方が生活に困っているという事情がなくても当然に発生し、生活を保持しなければなりません。
 ただし、この生活保持義務の内容も乳幼児と大学生、あるいは同居の有無などにより具体的・現実的な差異を許容する幅のあるものといえます。
 その他の直系血族・兄弟姉妹、祖父母と孫ないしは成人した兄弟姉妹は、通常独立の生計を営んでいるので、当事者間に一定の事情が存在するときに限り扶養の権利・義務が発生することになります。
 実際上の生活扶養の義務(これも具体的内容には幅があります)は、要扶養者から扶養義務者に対して扶養の請求をしてはじめて発生するものです。
 特別事情による三親等内の親族、この間でなされる扶養義務は、扶養の必要と扶養の能力があり、家庭裁判所が特別の事情があると認めたときに発生する例外的なものといえます。
 一人の要扶養者に対して扶養能力のある義務者が散人いる場合、反対に一人の扶養義務者に散人の要扶養者があり、しかもその全員を扶養するほどの資力が扶養義務者にない場合、誰がどのような順序で扶養すべきかというのは問題です。
 民法は、まず当事者間で協議し、協議がととのわないか、または協議することができないときは家庭裁判所がこれを定めるとしています(民法八七八条)。
 旧法では配偶者、直系卑属(子は孫より先の順位)、直系尊属(父母は祖父母より先の順位)、戸主、の順序で扶養義務者を定めていました。しかし、このように決定順位で一律に定めてしまうと、実際の生活関係に即さない扶養関係が成立してしまうため、現行法は、前述したように当事者間の協議によって扶養義務者を定める、としているわけです。
 協議がととのわないときは家庭裁判所の審判によって決定されるわけですが、一定の順位を認める傾向があるようです。つまり、未成年老の扶養についてはまず父母が、そして順に祖父母、成年の兄姉が扶養義務者として考えられます。また、成年者の扶養については、配頃者、収去の子、父母、兄弟姉妹の順序で扶養義務が決定される傾向にあるようです。ただし、扶養の負担は一人に限定される必要はなく、数人で分担してもかまいません。
 なお、養子の扶養については、養親が実説に優先して扶養すべき義務があるといえます。そして親の扶養については子の共同責任とされており、数人の子がそれぞれの資力に応じて親を扶養しなければなりません。
 旧法は直系尊属を最優先し、順に直系卑属、配偶者を要扶養者として定めていました。これが改められた経緯は前述の場合と同様です。また裁判所が法理上、一定の順位を認める傾向にあるのも同様で、一般的には、未成年者、配偶者、直系尊属、兄弟姉妹の順序で要扶養者が定められる傾向にあります。
 判例も、生活保持の義務と生活扶養の義務との関係は、原則として前者が優先するとしています。例えば、妻子と扶養を必要とする親がいる場合、その者はまず妻子の扶養を優先し、なお自己の社会的地位にふさわしい生活をしながら余裕が生じた場合は、その余裕の限度で親を扶助する義務を負うということになります。
 なお、直系血族や兄弟姉妹問では、より血縁の近い者が扶養すべきものと考えられています。
 第一次的には、当事者の協議により扶養の程度が決められます。協議がととのわないか、協議不能のときは家庭裁判所が要扶貧者の必要、扶養義務者の能力(資力)、当事者の生活状態その他の事情を総合的に考慮してこれを決めます(民法八七八条)。
 扶養の程度ですが、生活保持義務者は自己の生活と同程度のものを基準とされ、生活扶助義務者は社会的地位・身分にふさわしい生活をして、なお余裕のある範囲の程度が基準とされているといえます。
 父母が離婚し、母が未成熟の子を監護している場合の扶養の程度は難しい問題といえますが、一応生活水準の高い親(通常父親)の生活程度を基準とするのが妥当と思われます。
 扶養には、扶養義務者が要扶養者に対し生活費などを送付する金銭扶養、要扶貧者を引取って扶養する方法。あるいは一人が引取って他の者が生活費を分担する組合せの方法、その他病院・施設への収容、などの方法があります。
 扶養の程度・方法については、要扶養者の気持ちを尊重しながら、当事者間で十分に話し合うことがもっとも大切なことです。

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