親権とは

 五年前に結婚しましたが、お互いの性格的な問題や義母との不和などが原因で、今年の六月に正式に離婚しました。その際、長男の親権は夫に譲り、私は従来どおりA社において働いています。
 ところが最近、元の夫がギャンブルに熱を上げ、莫大な借金をつくってしまったという話をきき、長男のことが心配で仕事も手につかない状態です。
 私は長男を養っていく自信があるのですが、この際、親権者を変更することは許されないでしょうか。
 また、変更の手続はどうすればよいのでしょうか。

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 人が親子という身分関係にあることにより、親と子の間には相互に相続人となる、あるいは相互に扶養の権利義務を負うなど、さまざまな法的効果が発生します。しかし、親子関係から生ずるもっとも重要な効果は、親が未成熟な子に対してこれを哺育・監護・教育することで、民法はこれを親権として規定し、子の利益保護を中心とした父母平等の親権制度を確立するに至っています。
 そして国は、教育基本法、児童福祉法、優生保護法、生活保護法、少年法などにより、親の責務を直接間接に監督、保護、助成しています。
 親権者の指定
 (1)父母の共同親権
 父母が婚姻中であれば、未成年の子については父母が共同して親権を行使します(民法八ー八条一項。三項)。嫡出でない子が準正されたときは、準正と同時にその子は父母の共同親権に服します。
 また未成年の子が養子の場合には、従来の実親の親権が消滅して、その子は養親の親権に服します(民法八一八条二項)。そして養親が夫婦の場合には、実親と同じく養父母が共同親権者となります。
 なお、養子縁組が離縁されると実親の親権が復活しますが、養父母がともに死亡した場合には後述の後見が開始され、実親の親権は復活しません。
 (2)単独親権
 父母が共同で親権を行使できない、あるいは行使できても不適正な場合には、父または母の一方が親権を行使することになります。このようなケースについて、以下で説明していくことにしましょう。
 共同親権者たる父母の一方が死亡したとき、禁治産宣告や親権喪失宣告を受けて法律上親権を行使できないとき、あるいは行方不明や重病・別居などのため事実上親権を行使できないときは、他の一方が親権を行います(民法八ー八条三項但書)。
 共同親権者たる父母が離婚する場合には、父母は、その未成年者の親権者を父または母のいずれにするかを決めなければなりません。これについては協議、調停、審判または裁判で決められた者が親権を行います。
 ただし、子の出生前に父母が離婚した場合には、母の単独親権となり、父は子の出生後、協議または審判で定められた場合に限り親権者となることができます。
 嫡出でない子は、母の親権に服します。ただ父が認知した後、父母の協議または審判で父を親権者と定めたときに限り、父が親権者となります(民法八ー九条四項、五項)。
 なお、嫡出でない子の母が未成年者のときは、その母の親権者または後見人が親権を代行することになります(民法八三三条、八六七条)。
 (3)親権者の変更
 単独親権者となった父または母が、行方不明ないしは養育を怠るなど、子の福祉のため親権者であるのが不適当な場合、あるいはその他の事情の変更により親権者を交替するのが適当な場合には、子の利益のため必要があると認められるときに限り、子の親族は家庭裁判所に対して親権者を他の一方に変更することを求めることができます(民法八一九条六項、家事審判法九条一項乙類七号)。
 なお、単独親権者が死亡した場合に、他の一方の親(認知した父も合む)が当然に親権者となるのか、あるいは親権を行う者がいない状態として後見が開始するかについては学説もいくつかに分れています。
 後見開始説は、いったん親権者でないと決まった以上、一方の親は単独親権者が死亡したとしても、当然に親権となる資格が復活するわけではない、と主張します。しかし家庭裁判所の見解は、後見人が定められる以前であれば、生存中の一方の親から親権者変更審判の申立てがあり、さらに申立て人に親権者としての適格性が認められれば、この者を親権者として認定する傾向にあります。
 親権の具体的内容(効力)としては、一般に子の身上監護と財産管理とに分けられます。
 身上監護としては、監護教育、居所指定権、懲戒権、職業許可権、があり、財産管理としては、子の財産の管理、財産的行為の代理及び同意、があります。
 これらについて、以下で述べていくことにしましょう。
 (1)監護教育
 親権者は、子の監護(哺育を合む)及び教育をする権利を有し、同時に義務も負います(民法八二〇条)。これは、未成熟の子に対する責務の全般にわたる内容を宣言したもので、子を心身ともに健全な社会人に育成するのに必要で適切な措置をとる、ということを意味しています。
 子に対しいかかる方法・程度の監護教育するかは、親権者の自由にまかされています。しかし、未成熟の子の健全な育成は国家の重大な関心事であるため、法律はこれらについて公法上の規制をいくつか加えております。
 規制の主なものは、子の義務教育(学校教育法二二条)、児童福祉法による児章の里親もしくは保護受託者への委託または施設への収容(二七条一項)、非行少年に対する保護処分または刑事処分(少年法二四条、四〇条、四五条)などです。監護教育に要する費用の負担 監護教育には当然その費用を必要とし、通常婚姻費用の一種として処理されますが(民法七六〇条)、費用の負担者と親権者とが必ずしも同一とは限りません。父母が離婚してもそれぞれの資産、職業、収入、同居家族の状況その他の諸事情を考慮して分担割合が決められます。
 子の引渡し請求、離婚した父母のうち親権を持たない親、あるいはその他の第三者が子を連れ去り手許において離さない場合、この者は親権者の監護教育を妨害することになります。このため、親権者は子の引渡を請求することができます。
 しかし、子に意思能力があり、その自由意思で第三者のもとに居住している場合には、第三者が親権の行使を妨害しているとはいえませんので、第三者に子の引渡しを求めることはできません(大審院判決・大正12・11・29)。
 この場合には、親権者は子に対し居所指定権を行使し、あるいは説得したり扶養を停止することがでぎるにとどまり、居所指定に応じない子を強制的に居住させる方法はありません。なお子の自由意思の有無は、一〇歳から一五歳ぐらいまでの間で判断されております。
 子に意思能力がない場合にも、親権者の引渡請求が当然に認められるものではなく、父母の生活環境や養育に対する熱意など、すべての事情を考慮し、父母のどちらに監護させるのが子の幸福に適するかを主眼に引渡請求の当否が決められています。
 なお、子が不当に拘束されている場合には、人身保護法によって子の釈放と引渡しを求めることができます(最高裁判決・昭和24・1・18)。
 (2)居所指定権・懲戒権
 親権者は、監護教育のため必要なときは、子の居所を定め、また必要な範囲内で自らその子を懲戒することができます(民法八二一条、八二二条)。
 しかし、子が居所指定にしたがわない場合、これを強制的に実現する法はなく、また別段の制裁もなく、わずかに懲戒権を行使できるにとどまります。しかも社会通念を超える過度の肉体的・精神的な懲戒権の行使は親権の濫用として親権喪失の原因となるほか、暴行・傷害などの刑事責任を生ずることもあります。
 (3)職業許可権
 子は、親権者の許可を得なければ独立の職業を営んだり、継続的に他人の一定の業務に従事することができません(民法八二三条一項、労働基準法五七条二項)。しかし、親権者が子に代わって労働契約を締結する、あるいは賃金を受け取ることは許されていません(労働基準法五八条、五九条)。
 この職業許可権は、未成年老保護のために認められたものですが、親権者がたとえ一度許可を与えても、のちに子がその職業に堪えられない事柄があるときは、いつでもその許可を取消したり、制限することができます(民法八二二条二項、六条二項)。
 また、労働契約が未成年の子に不利と認められるときは、親権者は将来に向ってこれを解除することもできます(労働基準法五八条二項)。
 (4)身分行為の代理
 親権者は、子のなすべき身分行為については財産上の行為と異なり、明文の規定がない限り代理権はもとより、同意権の行使も認められません。
 明文で認めているものとしては、認知請求(民法七八七条)、子の氏の変更(民法七九一条)、縁組・離婚の代諾(民法七九七条、八一一条二項)相続の承認・放棄(民法九一七条)などがあります。
 (1)財産管理権と代理・同意権
 親権者は未成年の子の財産を管理し、その財産に関する法律行為を代理する包括的な権限をもっています(民法八二四条)。財産管理の中には、保存・利用・改良を目的とする行為(民法一〇三条)のほか、目的の範囲内での処分行為も含まれます。
 親権者は、意思能力のある子に同意を与えて安全な法律行為をさせることができますが(民法四条)、子の行為を目的とする債務を生ずべき場合は、本人の同意が必要です(民法八二四条但書)。しかし、親権者が労働契約を締結することは禁止されていますので (労働基準法五八条一項)、子の行為を目的とする債務の例はきわめて少ないといえます。
 (2)財産管理上の注意義務
 親権者は「自己のためにすると同一の注意」をもって子の財産を管理しなければなりません(民法八二七条)。しかし、親子であることを考慮して、一般の財産管理義務者や後見人が要求されている「善良ナル管理者ノ注意」(民法四〇〇条、六四四条、八六九条)にくらべれば、その注意義務の程度はいくらか緩和されているともいえます。
 ただ、この軽減された注意義務を欠いて子に損害を与えたときは、損害賠償責任を負うほか、管理失当として管理権喪失の原因にもなるので注意が必要です(民法八三五条)。
 (3)財産管理の計算
 子が成年に達したとき、親権者は子の財産管理の計算をし、管理中の収支を明らかにしなければなりません。ただし、子の養育及び財産管理に要した費用と子の財産の収益とは相殺したものとみなされます(民法八二八条)ので、親権者は通常、現存財産全部を子に返還すれば詳細な清算までは要求されないことになります。
 (4)第三者が子に与えた財産の管理
 子に無償で財産を与える者は、親権者にその財産の管理をさせないようにすることができます(民法八三〇条)。この場合には、財産を与えた第三者が指定した者、または家庭裁判所が選任した者によってこの財産は管理されます。
 親権者と子の間で利益が相反する行為については、親権の公正な行使が期待できないので、親権者の代理権も同意権も制限されます。
 この場合には、家庭裁判所が選任した特別代理人が、その子を代理しまたは子の行為に同意します(民法八二六条一項、家事審判決九条一項甲類一〇号)。
 父母が共同親権者で、その一方とだけ利益が相反する場合には、他方の親権者と特別代理人とが共同で子を代理することになります(最高裁判決・昭和35・2・25)。
 また、親権者が散人の子に対して親権を行う場合も考えられます。その中の一人と他の子の利益が相反するケースでは、その一方のために特別代理人を選任しなければなりません。
 以上のように、利益相反行為とは、親の利益になるが子に不利益をもたらす行為、子の一方のための利益によって他方の子に不利益をもたらす行為、契約などの際、親子ともに一方の当事者となったが、これによって子が不利益をこうむる。の三つを一般にいいます。
 具体的には、親子間での売買や遺産分割、親子がともに連帯債務者となる、あるいは親の債務の担保として子を保証人にたてる、子の財産に抵当権を設定する、たどの行為が考えられます。
 その判断基準ですが、取引の安全をはかるため、もっぱら行為自体もしくは行為の外形のみから判断されます。しかし、行為の動機や実質的効果がかえりみられないため(最高裁判決・昭和42・4・18)、このような判断基準は子の利益保護という面から考えれば疑問がないわけではありません。
 このため「利益相反行為」であるか否かの判断基準は一律に決定するのではなく、具体的に諸般の事情を考慮して妥当な判断を行うべきだ、とする批判が昨今加えられています。
 特別代理人を選任しないでなされた親権者の利益相反行為は、どのような効力を持つのでしょうか。結論をいいますと、このような行為は「無権代理行為」と判断され、まったく無効です。
 このため、特別代理人ないしは本人が成年に達したのも追認しない限り、その行為が子に対し効力を持つことはありません。
 親権は、親権者の死亡、子の死亡、子の成年到達、あるいは子が他人の養子になることによって当然に消滅します。また、親権の喪失宣告・辞退によっても終了します(民法八三五条、八三七条)。
 ここでは、親権の喪失宣告及び辞退について述べていくことにします。
 (1)親権喪失の宣告
 親権者が親権者としての義務を怠る、あるいは履行しない、また親権者としてふさわしくないような非行があるときは、親権に服している者の親族ないしは検察官の請求によって、家庭裁判所はその者の親権をはく奪することができます(民法八三四条)。これを「親権喪失の宣告」といっています。
 親権喪失の原因には親権の濫用と、親権者のいちじるしい不行跡の二つが考えられます。これらについて以下で説明していくことにします。
 親権の濫用とは、財産状態や社会的地位に相応する監護教育をすることを故意に怠り、不適当な居所を指定し、過度な懲戒を加えたりなどして、子の保護の目的に反した行使がなされる場合がこれにあたります。親権者が自らの借財のため、未成年者の財産に抵当権を設定した場合、親権の濫用にあたるとした判例があります(広島家裁呉支部審判・昭和33・12・15)。
 このような親権者の財産管理や代理行為のほかにも、前述した居所指定、懲戒、職業許可などが適切に行われない場合、親権の濫用として親権をはく奪されることがあります。
 親権者のいちじるしい不行跡、いちじるしい不行跡とは、主に性的不品行のことですが、必ずしもこれに限られません。例えば破廉恥罪の反復、暴行など、それにより子の監護教育を行うのが適当でないとみられる事情にある場合もこれに含まれます。この場合、もっぱら性的不品行が問題となります。例えば、夫の生存中から他の男と関係をもち、夫の死後もこの関係を絶たないような場合は、いちじるしい不行跡があると認められ、親権の喪失の原因となります。
 また、親権者の悪質な飲酒癖、ギャンブルに常軌を逸した熱中を示す者なども親権者としては不適当と考えられ、親権の喪失という結果を招くことになります。
 親権喪失宣告がなされた場合、この者は将来に向って親権を全面的に失います。ただ、子の婚姻に対する同意権、相続関係、扶養関係など、親権の内容と異なる問題については何ら影響を受けることかありません。
 民法八三四条、八三五条で定めるような親権喪失の原因があった場合、家庭裁判所によって親権の喪失あるいは管理権の喪失の宣告が行われるということは以上でも述べてきたとおりです。ただし、それらの原因がなくなり、親権及び管理権を復活させても差し支えないと判断されたときは、子またはその親族の請求によって家庭裁判所は宣告の取消しをすることができます。
 やむをえない事由があるとき、親権を行う父または母は、家庭裁判所の許可を得て親権及び管理権を辞任することができます(民法八三七条一項)
 やむをえない事由とは、例えば重病のため親権を充分な配慮をもって行えない、あるいは再婚するにおいて子をつれて生活に入ることができない事情がある、などの場合です。
 なお現行法では、いったん親権・管理権を辞任しても、やむをえない事由が消滅したときは家庭裁判所の許可を受けたうえで、再びこれをらの権限を回復させることができると定めています(民法八三七条二項)。

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