養子とは

 私たち夫婦は三〇年という長い期間、平凡ですが幸せな結婚生活を送ってきました。しかし、私が生来病弱な体質のため子供に恵まれず、夫には可哀そうな思いをさせてきたことが唯一の気がかりとたっています。最近になって、養子を迎えてはという話がまわりから持ち上り、夫も乗り気になっているようです。
 養子を迎えるに際してどのような問題があるのか、またどのような手続が必要なのでしょうか

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 養子制度は、自然血縁による親子関係のない者の間に、人為的に親子関係を創設する目的でつくられた制度です。この制度は古来より、家長や祖先の祭祀承継者を得るため(家のための養子)、あるいは労働力の補充や老後の扶養のため(親のための養子)に利用されてきました。しかし近代養子法は、主に来成熟の子の哺育・監護・教育を目的とした子の利益のための制度(子のための養子)へと進化し、現行民法は、主に子のための養子制度の実施を志向しています。
 養子縁組は、養親と養子になろうとする者との間に以下に説明する障害事由がないこと(実質的要件)、及び縁組の届出がなされること(形式的要件)により成立します(民法七九九条、七三九条)。
 実質的要件は養親と養子になる者との間に縁組をする意思の合致があること (民法八〇二条一号)。
 縁組は私法上の契約であるため、真に親子関係を成立させるという意思(縁組意思)の合致が必要で、この意思を沢くときは無効とされます(民法八〇二条一号)。
 例えば、単に芸娼妓とする方便としてされる養子や、労働基準法の適用をまぬがれる手段としてされる養子(労基法八条但書参照)のように、他の目的達成のために縁組の形式を利用するに過ぎない場合には、縁組意思がないと解されています。
 養親となる者が成年者であること(民法七九二条)。
 婚姻によって成年とみなされた者は、養親としての資格を有しているとみなされ、養子縁組の成立に際しては、何ら障害がありません(民法七五三条)。
 養子となる者が養親となる者の尊属または年長者でないこと(民法七九三条)。
 社会倫理観念にしたがい、養親子間に親子らしい年齢の差のあることが望ましいとすることにより、このような規定が設けられているわけです。しかし、養親がかなり高い年齢に達していても問題はなく、養親子間に自然の親子に近い年齢差が実際に要求されているわけではありません。
 したがって、孫や弟妹などを養子にすることもできます。
 後見人が披後見人を養子にするには、家庭裁判所の許可が必要(民法七九四条)。
 これは、後見人の不正・不当な財産管理を隠ぺいする手段となることを防ぐためです。
 配偶者のある者は、その配偶者と共同で縁組を行う(民法七九五条本文、七九六条)。
 この夫婦共同縁組は、すでに夫婦にある一方とだけ親子関係を創設するのは家庭の秩序保持、あるいは配偶者間の平和維持の妨げとなり、親子間の情誼からみて妥当でないことを理由とするものです。このため、養親となる者も養子乏なる者も夫婦の場合は、夫婦の一方のみが双方の名義で縁組をしても原則として無効とされます。
 ただ、縁組をした当事者間に単独でも親子関係を成立させる縁組意思があり、しかも他方の配偶者の利益を書することがないなどの特別の事情がある場合には、この縁組は有効とされます(最高裁判決・昭和48・4・12)。
 また、夫婦の一方が他方の子(連れ子)を養子とする場合、あるいは夫婦の一方が行方不明などで縁組できない場合は、その他方が双方の名義でそれぞれ縁組することはかまいません(民法七九五条但書、七九六条)。
 なお、縁組後に養親(または養子)が婚姻しても、その相手方と養子(または養現)との関心は、姻族一親等関係が生ずるだけで親子関係は生じません。
 未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を必要とします。またその養子が一五歳未満のときは、その法定代理人が代わって縁組の承諾(代諾)をしなければなりません(民法七九八条、七九七条)。
 養子縁組は、戸籍法の定める様式にしたがって届出ることが必要です(民法七九九条、七三九条一項)。
 縁組はその届出がなければ、たとえ事実上の養親子関係があり、養親子としての生活を継続していても法的には成立しません。反面、届出があれば事実上の養親子関係がなくても縁組が成立します。
 この届出に関連して、次の虚偽出生届と縁組の成否及び無効な代諾養子縁組の届出とその追認が問題となります。
 虚偽の出生届と縁組の成否、世上しばしば生まれたばかりの他人の子を養子にするため貰い受け、養子であることを隠す目的でいきなり養親の嫡出子として虚偽の出生届をしている場合があります。
 この場合、出生届は事実に反するので、戸籍上に表示されている親子間に親子関係が生じないことはもちろんですが、養子縁組として成立するかどうかについては実質的な当事者の縁組意思と生活事実を重視すべきか、それとも身分行為の様式性を重視すべきかで説が二分されます。このようなケースでは、裁判所は一貫して様式性を重視し、縁組の成立を認めていません(最高裁判決・昭和49・12・23)。
 無効な代諾養子縁組と追認、嫡出でない子を生んだ母が、その子をいったん他人夫婦の嫡出子として出生届をした上、戸籍上の親による代諾縁組の届出がなされた場合、その縁組は適法(真正)な代諾権のない父母の代諾によるため、裁判所は縁組の意思を欠くものとして無効と判断していました(大審院判決・昭和13・7・27)。
 しかし、その結果の不当なことを強く批判されたため、最高裁は従来の態度を改め、無権代理追認の理論を用い、正当な法定代理人の代諾(七九七条)を欠く無効な縁組も、養子が一五歳に達した後に追認すれば当初から有効な縁組となり、もはや無効を主張できなくなると判示しました(最高裁判決・昭和27・10・3)。
 縁組の届出がなされていても、本人がこれを知らず、または意識不明の間に第三者が勝手に届出たり、夫婦の一方が他方の同意を得ないで届出るような場合は、縁組意思を欠くものとして無効とされるのが原則です(民法八〇二条一号)。
 また民法は、届出がない場合も無効としています(民法八〇二条二号)。
 しかし、この場合は無効というより、むしろ縁組不存在または不成立というべきでしょう。
 縁組の成立に際し、次の取消し事由がある場合はその取消しを裁判所に求めることができます(民法八〇三条)。
 養親が未成年者であるとき(民法八〇四条)養子が養親の尊属または年長者であるとき(民法八〇五条)後見人が披後見人を家庭裁判所の許可を得ないで養子にしたとき(民法八〇六条)未成年者を家庭裁判所の許可を得ないで養子にしたとき(民法八〇七条)縁組が詐欺または強迫によって行われたとき(民法八〇ハ条一項)。
 なお縁組が取消されても、法定の親子関係は将来に向ってのみ消滅し、取消されるまでの間の身分関係に影響しません(民法八〇八条一項)。しかし縁組で財産を得た者は、不当利得の原則にしたがい、善意のときは現存利益の限度で、また悪意のときは全部の利益をそれぞれ返還しなければならないことはいうまでもありません(民法七〇三条、七〇四条)。
 民法は、養親子関係を解消する方法を離縁だけに限定し、これについては協議離縁と裁判離縁(調停・審判も含む)の二種を認めています(民法八ーー条、八ー四条)。
 (1)協議離縁
 一五歳以上の者で意思能力のある縁組当事者は、養親子関係を解消させる離縁意思の合致(協議)により、戸籍法の定める様式の届出をすれば離縁することができます(民法八ー一条)。
 この協議は、当事者本人が行うことを原則としますが(民法八ー一条一項、八一二条)、養子が一五歳未満のときに限り、その法定代理人となるべき者が養親と協議することになります(民法八一一条二項)。
 通常は養子の実父母が法定代理人となりますが、父母が離婚しているときは、そのうちどちらか一方が親権者となり(同条三項、四項)、父母が死亡し法定代理人となる者がいないときは、家庭裁判所が後見人を選任します(同条五項)。
 なお、協議離縁の無効・取清しは協議離婚の場合と同じく、離縁意思を欠くとき、あるいは離縁届を欠くときにはいずれも無効になります。また離縁が詐欺・強迫によると年は、裁判所に離縁の取消しを請求することができます(民法一二条、八〇八条一項但書)。
 (2)裁判上の離縁
 養親または養子は、次の場合に限り離縁の訴を提起することができます。他の一方から悪意で遺棄されたとき、養子の生死が三年以上明らかでないとき、その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき(民法八一四条)。
 しかし、縁組が破綻するに至った責任が主として請求者側にある場合には、裁判離婚と同じく、無責な相手方に対する離縁請求は不当であると考えられるところから許されていません(最高裁判決・昭和39・8・4)。
 訴は縁組当事者本人の一方が他方を相手方としますが、養子が一五歳に達しない場合には、協議離縁と同様に離縁後の法定代理人が当事者となります(民法八一五条)。
 なお、裁判離縁の場合も離縁届出が必要なことはいうまでもありません(戸籍法七三条)。
 民法は養親または養子の一方が死亡(失踪宣言を合む)した場合、親権・扶養などの身分関係は終了するとしていますが、養親子関係は婚姻の場合と異なり解消しないと定めています。ただし養親が死亡した場合には、養子は養親子関係を終了させるため、家庭裁判所の許可を得て離縁することができるとしています。なお、養子が死亡した場合には、養親の偏から離縁をすることは認められていません。

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